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狂愛へのカウントダウン
12話 逃げ場などなく
しおりを挟む思い切り押して、彼が一歩後ろに下がった隙に、廊下に飛び出す。そして、宿舎を目指して走り出した。
成績なんてどうでもいい。一旦学校から離れよう。まずは宿舎に帰って態勢を整え、どうするのか本気で考えないと。あの人をなんとかしないと、学校全体が彼に脅かされる。
振り返るとハヤトは追ってきていない。でもほっとしたのもつかの間、違和感に気付く。さっきまで大勢いたはずの生徒がいない。走りながら通り過ぎる教室を見ても誰もいない。階段を降りて、廊下を進んでも、誰ともすれ違わない。
嫌な予感がするけど、進むしかない。中庭に出てちょっと行けば、宿舎までもうすぐだ。でも、目的の女子棟についても、自分の部屋のドアが開かない。鍵は合っているのに、石にでもなったみたいにドアノブが回らない。
「なんで!どうしてよ!!」
パニックになった私は手あたり次第に部屋のドアを叩いた。誰か、助けて。叫んでも、人の姿はいつまでも見えない。誰からの返事もなく途方に暮れて、窓の方へ寄りかかる。
ハヤトは?これは絶対あの人の仕業よね?私の事を追いかけてくるかと思ったのに、しばらく座っていても気配がしない。
呼吸を整えていると、外の風の音が強くなった。もしかして───────下から少し顔を出して外を見ると、思った通り空を飛んでいるハヤトの姿が見えた。そして、上空からキョロキョロと顔を動かしている。何かを探しているのだろう。そしてそれはおそらく、私。
怖い─────私はその場から動けなくなった。窓を背にして、彼から見えないように座る。心臓がバクバクと激しく動いている。見つかるのが怖い。ハヤトの行動が理解出来ない。どうしてここまでの事をされないといけないの?
部屋に帰れないなら、どこに逃げよう。今外に出てホウキに乗ったら、見つかる……。いつまで隠れていればいいんだろう。知ってる魔法で何か出来ることは?ダメだ。混乱して何も思いつかない。
私はいつもそうだ。いざという時に動けない。頭の中は知識で詰まっていても、ここぞという時に真っ白になる。そんな自分を責めていた時、今いる宿舎の廊下に突然異変が起きた。
「え……きゃあああっ!!」
廊下が波打ち始めたかと思うと、足元がいきなり動き出す。私はバランスを失い、倒れこむ。廊下が意思を持ったかのように、私をどこかへ運び始めた。
「嫌だってば!ハヤト!お願い、やめて!!」
床から窓を見てもハヤトの姿は見えなくなっている。私は動く廊下からの脱出を試みた。なんとか体を起こして立ち上がり、ポケットから杖を取り出す。しかし魔法でホウキを出現させて飛び乗ろうとしても、体が異常に重く足が上がらない。空気が丸ごと私を押さえつけているようだ。成す術なく私はホウキから転がり落ちてしまい、また引きずられていく。
階段を滑るように下り、そのまま中庭に宿舎から放り出される。校舎と宿舎に挟まれた、生徒の憩いの場でもある手入れの行き届いた庭園のような中庭の、芝生の上に転がる。
「いっ………た……………」
体を思わぬ方向に動かされたため、酔ってしまう。目を閉じてめまいが治るのを待っていると、芝生を踏みしめてこちらへ近付く音が聞こえた。
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