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狂愛へのカウントダウン

11話 危険を感じて

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 魔法に関わる全ての事に恐怖を感じるようになってしまった。ホウキには乗りたくない。杖を握りたくない。魔法学はあんなに好きだったのに、ハヤトと一緒にいる必要の無い、一般科目の授業じゃないと安心していられなくなった。

 ハヤトはあれ以来、私への執着を隠そうともしなくなった。誰かと話そうとすると、割り込んで杖を振り、私から相手を遠ざけた。私の部屋の前にはプレゼントなのか綺麗な包装紙に包まれた何かが置かれていた事もあった。でも、私はやはり無視をしてしまう。こちらの意思を伝え続けなければいけない。ここで応じたら、ハヤトの思うツボだと思ったから。でもその選択は最悪なものだったと、後に知る事になる。

***

 朝、疲れの取れない体でベッドから抜け出す。だけど今日はいくらか気持ちが軽い。魔法学の授業が無いからだ。普通の高校生のように、数学とか物理とか、普通の授業をこなせば良いから。選択授業が無ければ違うクラスのハヤトに会う可能性も低い。

 彼の魔法のせいとは言え、友達に嫌われてしまったのもこたえる。彼が落ち着きを取り戻すまでは、1日1日を確実に乗り越えよう。そう思って、クラスに入った時だった。

 教室前方にあるボードに見える今日の時間割に私は目を疑った。1時間目は国語であるはずなのに、選択授業と書いてある。それだけじゃない。2時間目も3時間目も、最後の時間まで全て、選択授業という文字が並んでいる。

 全身が凍り付くような感覚になる。こんなデタラメな時間割、見た事無い。驚きのあまり、カバンを落としてしまう。丁度やってきた先生に、すがりつくように問いただす。

「せ、先生!!今日、どうして全部選択授業なんですか!?」
「はい?元々そうでしたよ。あなたは魔法学を選択していましたね。早く移動なさい」

 先生はどうかしているのが私であるかのように返した。周りを見ても、おかしいと思う人がいないのか、すでに大勢の生徒がそれぞれの場所に移動を始めてしまっている。

「そんなはず、そんなはずないです!!」

 私は取り乱して叫ぶが、誰も私の訴えに耳を貸さない。
 まさか、これもハヤト?そんな事が可能なの?もしこれも魔法のせいだとすると、先生までも操っている事になる。そこまでの事、彼に出来るはずがない。いくら天才とは言え、そこまでの力は無いでしょう?でも、今のみんなはあまりに不自然だ。

 動けない私は一人教室に残される。友達には避けられてしまって、確認する事も出来ない。友達どころか、私と話してくれる人はただの一人もいなくなってしまっていた。全員が私に背を向け、去っていく。どうしよう。行きたくない。行ったら私はどうなるの?だけど万が一、本当にそうだとしたら?昨日先生が言っていた事を、聞き逃していたとしたら?早く行かないと、無断欠席とみなされてしまう。

 決断が出来ず立ち尽くす私の元へ、彼はやってきた。ガラリとドアの開く音が、恐怖の幕開けのように感じる。

「オリビア…………行こう」

 不敵な笑みを浮かべながら手をこちらへ差し出すハヤトに、私の精神は限界を迎え───────彼の手を取るフリをして、突き飛ばした。


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