[R-18]ドSな天才魔法使いの狂愛─魔女の執着はいつしか逆転する─

執着の逆転

９話 颯爽と現れる"ヒーロー"

　私の輝き始めた青春物語は突然終わった。休み時間に誰も話し掛けてくれなくなってしまった。私がいつものように友達の輪に混ざろうとしても、みんな示し合わせたかのようにどこかへ行ってしまう。思い当たる事が全く無い。謝ろうにもこう避けられては、機会すら得られない。

　教室移動も、放課後も以前のように再び一人で行動するようになる。今までのあれが夢だったかのように、楽しかった日々は音を立てて崩れ落ちた。そんな私の前に、ハヤトはよく現れた。僕がいるよと訳の分からない事を言うが、ハヤトに私の心の隙間を埋められるとは思えない。この人と一緒にいるよりはマシだと相手にせず、私は一人になる道を選び続けた。

　ある日の魔法学の時間だった。魔法を使って少しずつ制作してきたオリジナルの魔道具が、完成間近で壊れている事に気付いた。しかもこれは固定魔法がかかっていたはずだから、例え落としたところでそう簡単に割れるとは思えない。かつての友人たちが、教室の端っこで固まり、落ち込む私を見てくすくす笑っている。

　何でここまでの事をするのだろう。何が目的なんだろう。ここまで細かく砕かれていたら、修復の魔法も効果は出ない。呆然としている私の横に、いつの間にかハヤトが立っていた。

「オリビア、大丈夫？ちょっと見せて。僕なら直せるかもしれない」

　そう言って、私が反応する前に彼は杖を振った。見るも無残な魔道具だったものの残骸が優しい光に包まれ、次の一瞬で時間が戻ったかのように綺麗に復活する。

　それを見ていた一部のクラスメイトは、彼を拍手で称え、賞賛した。さすが天才、学校のヒーローだと大騒ぎする。

「良かったね、全部元通りだ。君の友達は酷いね……これからも困った事があったら、何でも言ってね。僕だけは君の味方だから」

　私にだけ聞こえる声でハヤトは囁く。私は彼を一瞥すると、何事も無かったかのようにそこに存在する魔道具に目を伏せた。

「どうもありがとう。そうね、本当にあの子たちがやったのならね」
「ははは。どうだろうね」

　声が震えているのに気付かれないように必死で冷静に振舞う。ハヤトにしか直せない魔法。凄いと思う。だけど保護された魔道具を壊すのも、相当な魔力が無いと出来ないはずだ。ねぇ、ハヤト。どうして私たちのトラブルを知っているの？