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執着の逆転

7話 執拗な誘い

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 私はその後も幾度となく一緒のグループになった。さすがにおかしい。こんなに人数がいるのに、何度も同じ人と当たるなんてありえない。考えたくないけど、もしかしてハヤト、何かした?いいえ、だとしても関係無い。私は彼をとことん無視した。同じグループの中にいる話しやすい人と楽しく課題をこなす。

 それでも諦めない彼は、放課後になると必ず私のいる教室まで来るようになった。ホウキレースしよう、魔法対決しよう、テストの点数教えて……かつて私がやっていた事と同じ事を言う。

「ねぇ、しつこいわよ!私から解放されてせいせいしたんじゃないの!?友達と遊んだらどうなの!?」
「先約があるって全部断ったよ。オリビアがレースしたがっていると思って」
「もうしたくないって言ってるじゃない!」
「強がらなくていいんだよ。やせ我慢しなくていいから、また勝負しようよ」
「私を負かして嘲笑いたいだけでしょう?もう私はあなたと戦わない!」

 その時、遠くから声を掛けられた。

「オリビアー、どうしたの?早く買い物行こうよぉ。噴水の所にみんないるって」
「あっ、うん!ごめんね、すぐ行くから………」

 我に返り、すぐに笑顔を作る。ハヤトを無視して彼女を追いかけようとすると、手首を掴まれた。

「みんなって誰?オリビアって、他の人にはよく笑うようになったよね……いいなぁ」
「っ!ねぇ、離してよ…………」

 苛立って、睨みつけてやろうとハヤトの顔を見た時だった。ハヤトは窓から下を眺めていた。そこからは噴水が見えるはずだ。その顔があまりにも冷たくて、ぞっとする。

「……ハヤト?」
「1,2,3………ん?あ、約束してるんじゃしょうがないね。行っておいでよ」

 ハヤトは笑って、あっさりと私の手首を離した。

「…………じゃ、じゃあね」

 なんとなく、ひらひらと手を振るハヤトから目を逸らしたらダメな気がして、後ずさりするように教室を出る。そしてさっきの恐怖を頭から振り払うように、私は数人の友達と一緒にショッピングを楽しんだ。

 駅前に出来た新しいスイーツショップに寄って、女子トークで盛り上がる。心から没頭した。明日はみんなで帰りに、ホウキで海まで空の旅をしようって約束した。競争なんかじゃない。お喋りしながら、柔らかな風を感じてのんびり飛ぶのだ。帰る頃にはハヤトとの出来事を忘れられたぐらい、私は友達とのかけがえのない時間を満喫した。

 でもそれが、私の最後の楽しいひとときになった。



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