偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される

プリオネ

文字の大きさ
上 下
55 / 66
おまけ 天才魔法使いの恋愛遍歴

④短期間の恋愛もどき

しおりを挟む

ある日、1人の女子生徒が告白をしてきた。同じ特別進学科のクラスの、そばかすの可愛いサリーという子だ。彼女は僕の出来る事に誰よりも食いついてきた子で、勉強を教えていても、いつも教科書ではなく僕を見ていた。

その日もいつも通り皆に勉強を教えた帰り、サリーだけなかなか離れないと思ったら、案の定胸の内を明かされた。来る者を拒まない性格がここでも出てきてしまい、ついOKしてしまった。何かと僕に突っかかる割には成功すると笑顔を見せてくれるオリビアが気にならない訳でも無かったが、からかうのが楽しいだけで、まだ好きという程では無かった。

サリーは、僕が他の女子に勉強を教えるのを嫌がった。自分だけに向き合って欲しいとねだる。それもそうかと言われた通りにしたら、だんだん、ノートを写させて欲しいだの、宿題を代わりにやってくれ、等と要求が増えてきた。しまいには、ホウキの2人乗りが出来る僕を移動の足にした。この子はきっと僕の能力に惚れていたのだろう。
僕は疲れてしまい、1週間で別れを告げた。

別れた直後、待ってましたと言わんばかりに、また言い寄ってくる女の子が現れた。今度は専門学科のアンナだ。かなりの美女だ。ちょうど彼女も前の相手と別れたところで、今度は僕に目をつけたという訳だ。今度も僕はOKした。我ながら節操が無いと思う。

アンナは、僕の成績や魔法の腕には興味が無いようだった。ただ、僕の見た目を自分好みにしようとした。坊主頭の僕に髪を伸ばせと言ってきたり、デートの度に服装に文句をつけてきた。僕のどこを好きになったのだろうか。そして僕と付き合う傍ら、他の男をちょくちょく誘っては思わせぶりな態度を見せているみたいだった。

段々面倒臭くなってきて、1ヶ月くらい経った頃に別れを告げた。すると彼女は怒り、本心をさらけ出した。やたらと目立つ僕を彼氏にしたら友達に自慢出来ると思っていたらしい。それに他にも自分の彼氏に立候補する男はいくらでもいると自慢する。僕も文句を言えた立場では無いが、これにはさすがに呆れた。まぁ、おかげで後腐れなく別れる事は出来た。

その後も色んな人と気軽に交際する日々が続いた。付き合ってもすぐに別れるから、周囲には今彼女がいるのか、いないのかもよく分からなかったみたいだった。でも、前の学校でやっていたみたいに、付き合っている途中での乗り換えはしないようにした。当たり前のルールをようやく自分に課す。

こんな子もいた。控えめだけど笑顔を絶やさない、メガネをかけた小柄な女の子、マリィだ。僕と目が合った時にニコッと笑ってくれたのが嬉しかった。誰にでも優しく出来る所もいいなと思った。だから、これが本当の好きという気持ちだと思い込んだ僕は、授業のグループ活動で一緒になった時、恋愛話になった流れで「付き合う?」と声をかけてみた。彼女は黙って頷いて、交際が始まった。

しかし、相性が良くなかった。彼女がドジを踏んだ時にからかってみたら、笑顔で受け流されてしまい、拍子抜けする。なんだか、思っていた反応と違う。彼女は僕の茶化し方が本気で嫌だったようで、懲りずに何回か繰り返しているとある時泣かれた。僕は慌てて謝ったが、それをきっかけにだんだんと気まずくなった。結局彼女の方から別れを切り出されたのを、すんなりと受け入れた。

合わない所があるならば合わせてみるのも長続きするコツというのは分かっている。少し話し合えば上手くいく事もあったと思う。でも、僕は誰に対してもそれをしようとしなかった。合わせたいと思う程の気持ちでは無かったのだろう。

僕は自分が恋人に何を求めているのか分からなかった。見た目が可愛い子か?性格が良い子?マリィには特にそう思う。彼女に冗談を言ってみた時、僕は何を期待していたのだろう。どんな反応が欲しかったんだ?怒って言い返そうとするが失敗し、悔しいと憤る姿だろうか。



しおりを挟む
↓作者へ絵文字で感想が送れます↓
表立って伝えられないコメントなども!
♡絵文字で感想を送る♡

感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

最愛の旦那様に先立たれて~もう誰も愛せない~

岡暁舟
恋愛
私が愛した旦那様は病に倒れてしまいました。お父様は家の面子を保つため、新しい婚約者探しに明け暮れているのですが、もう誰も愛せません……。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...