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[才能の乱用編]
17話 もう何でもいいから
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次の日、オリビアは寝不足で授業に出席していた。色んなことがありすぎて、ゆうべは眠れなかったのだ。
オリビアを疑った生徒は、自分たちのしたことも忘れ、すっかり元の雰囲気に戻っている。オリビアは気持ちが落ち込みそうになったが、自分の非を認め、一からやり直そうと誓った。
普通科のクラスにはハヤトがいないからまだ集中出来たものの、選択科目の魔法学では特別進学科の彼もいるため、意識せずにはいられない。
先生が背中を見せたタイミングで、オリビアはハヤトの顔を盗み見た。至って普通の顔つきである。何を考えているのか分からない。
(ハヤトの思考が理解出来ないわ。普通、告白して断られたら、そこで諦めるのではないの?)
──昨日のハヤトはおかしかった。あんな風に迫られたのは初めてだった。思い出すと、頬が熱くなる。出会った頃ほど嫌いじゃなくなってきたけど、今、好きと言うのも違う。
そんな迷いがあるから、もう少し時間をかけてハヤトを知りたいと思っていたところのこれである。
オリビアとしては一応きっぱり断ったつもりだが、ハヤトが聞いてくれないので困ったものだった。
(結局、他の人も来てうやむやになってしまったけど、どうしよう…ああ、でもOKしたくない。悔しい。だって、ハヤトよ?私がどんなに努力しても届かない、平気で私を置いてく憎らしい人。まぁ、羽根ペンは嬉しかったけど…)
オリビアの理想の相手は、自分に憧れを持ってくれて、こちらが主導権を握れるような人なのだ。素直でおだやかで、一緒に勉強して……。
(それにしても、あの人は私のどこがいいのだろう。遊び人って聞くし、誰でもいいのかな…うん、それならあの強引なやり方にも納得がいくわ…)
「…さん!ポットさん!」
ハッとして顔を上げる。
「はっ!はい!!」
まずい。ありえない。ボーッとしてしまった。先生は教科書のページを示した。
「この薬草の特徴を言ってください」
「えっと……」
しまった、とオリビアは口に手を当てる。考え事をしていて全く内容を聞いていなかった。
周りの生徒がクスリと笑う。オリビアは恥ずかしくて顔が赤くなった。オリビアにとって、これほど屈辱的な事はない。授業で当てられて、答えられないなんて。
「すみません、分かりません」
「ポットさん。あなたが分からないのは珍しいですね。集中するように。代わりに誰か、答えてください」
先程まで笑っていた生徒たちが、先生から目を逸らした。
ただ1人、ハヤトが手を上げた。
「はい。この植物の特徴は、葉の形が丸い事で、その丸さは1日に2回変化する。朝には葉先が上を向き、夜になると下に向く。また、朝の時間帯は青みがかった色をしている、です」
「正解。完璧です。さすが、期待を裏切りませんね、ヤーノルドさん」
オリビアは唖然とした。周りからも感嘆の声が上がる。まるで模範解答だ。なぜハヤトはここまで頭が良いのだ。オリビアはこの場にいる事が嫌になった。感情がよく分からなくなっている。睨みつけたかったが、クラスメイトたちに態度が悪いと指摘された翌日だ。さすがに昨日の今日でそれは出来ない。
──それなら、絶対に断ってやる。
オリビアはそう決意し、拳を握りしめた。何でもいいから優位に立ってみたかった。
授業はまだ続く。今度は、生徒それぞれに与えられた薬品棚の管理方法を学ぶ。オリビアは反省して、集中した。薬品はさすがにボーッとしていると危険だ。今度はなんなく出来ると、オリビアはホッとした。
「次、魔法薬の精製を行います。薬品棚から好きな物を選んで、自由に作ってみてください。評価が終わったら、飲んでも構いませんよ。ただし、自己責任で」
いよいよ実践の時間。オリビアは、得意な魔法薬を作る事にする。
「では、始めて」教師がそう言うと、みんなが一斉に作り始めた。オリビアは自分の作業に没入する。作るのは何でも良いとの事だったので、少しレベルの高い回復魔法をかけたハーブティーにした。
「上出来だわ」
隣の席の生徒にも凄いねと言われ、オリビアはようやく気持ちが落ち着いてきた。こうやって自分の力を褒めて貰えると、オリビアはいつも元気になれた。
「ねぇ、見て。凄くない?」
近くの女子グループが騒いでいる。
オリビアは自分の事かと嬉しくなって、振り返った。
「え?これのこ…………あ」
女子たちはオリビアではなく、ハヤトを見ていた。
「こんなの初めて見たかも……」
「すごいね……」
他の生徒たちからもハヤトに注目が集まっているようだ。ハヤトは次々と調合をこなしていく。薬草の組み合わせが絶妙で、他の人がやっているのとは全く違う。ハヤトはどんどん材料を混ぜ合わせていく。
「はい、3つ目」
あまりの速さと完成度の高さから、歓声が湧く。オリビアは、肩を落とした。もういい。ヤケになって、今しがた作ったばかりのハーブティーを飲み干す。回復魔法がかかり、疲れが癒されるはずだが、効いている気がしない。その上先生に提出するのを忘れていたため、もう一度作り直すことになった。
オリビアを疑った生徒は、自分たちのしたことも忘れ、すっかり元の雰囲気に戻っている。オリビアは気持ちが落ち込みそうになったが、自分の非を認め、一からやり直そうと誓った。
普通科のクラスにはハヤトがいないからまだ集中出来たものの、選択科目の魔法学では特別進学科の彼もいるため、意識せずにはいられない。
先生が背中を見せたタイミングで、オリビアはハヤトの顔を盗み見た。至って普通の顔つきである。何を考えているのか分からない。
(ハヤトの思考が理解出来ないわ。普通、告白して断られたら、そこで諦めるのではないの?)
──昨日のハヤトはおかしかった。あんな風に迫られたのは初めてだった。思い出すと、頬が熱くなる。出会った頃ほど嫌いじゃなくなってきたけど、今、好きと言うのも違う。
そんな迷いがあるから、もう少し時間をかけてハヤトを知りたいと思っていたところのこれである。
オリビアとしては一応きっぱり断ったつもりだが、ハヤトが聞いてくれないので困ったものだった。
(結局、他の人も来てうやむやになってしまったけど、どうしよう…ああ、でもOKしたくない。悔しい。だって、ハヤトよ?私がどんなに努力しても届かない、平気で私を置いてく憎らしい人。まぁ、羽根ペンは嬉しかったけど…)
オリビアの理想の相手は、自分に憧れを持ってくれて、こちらが主導権を握れるような人なのだ。素直でおだやかで、一緒に勉強して……。
(それにしても、あの人は私のどこがいいのだろう。遊び人って聞くし、誰でもいいのかな…うん、それならあの強引なやり方にも納得がいくわ…)
「…さん!ポットさん!」
ハッとして顔を上げる。
「はっ!はい!!」
まずい。ありえない。ボーッとしてしまった。先生は教科書のページを示した。
「この薬草の特徴を言ってください」
「えっと……」
しまった、とオリビアは口に手を当てる。考え事をしていて全く内容を聞いていなかった。
周りの生徒がクスリと笑う。オリビアは恥ずかしくて顔が赤くなった。オリビアにとって、これほど屈辱的な事はない。授業で当てられて、答えられないなんて。
「すみません、分かりません」
「ポットさん。あなたが分からないのは珍しいですね。集中するように。代わりに誰か、答えてください」
先程まで笑っていた生徒たちが、先生から目を逸らした。
ただ1人、ハヤトが手を上げた。
「はい。この植物の特徴は、葉の形が丸い事で、その丸さは1日に2回変化する。朝には葉先が上を向き、夜になると下に向く。また、朝の時間帯は青みがかった色をしている、です」
「正解。完璧です。さすが、期待を裏切りませんね、ヤーノルドさん」
オリビアは唖然とした。周りからも感嘆の声が上がる。まるで模範解答だ。なぜハヤトはここまで頭が良いのだ。オリビアはこの場にいる事が嫌になった。感情がよく分からなくなっている。睨みつけたかったが、クラスメイトたちに態度が悪いと指摘された翌日だ。さすがに昨日の今日でそれは出来ない。
──それなら、絶対に断ってやる。
オリビアはそう決意し、拳を握りしめた。何でもいいから優位に立ってみたかった。
授業はまだ続く。今度は、生徒それぞれに与えられた薬品棚の管理方法を学ぶ。オリビアは反省して、集中した。薬品はさすがにボーッとしていると危険だ。今度はなんなく出来ると、オリビアはホッとした。
「次、魔法薬の精製を行います。薬品棚から好きな物を選んで、自由に作ってみてください。評価が終わったら、飲んでも構いませんよ。ただし、自己責任で」
いよいよ実践の時間。オリビアは、得意な魔法薬を作る事にする。
「では、始めて」教師がそう言うと、みんなが一斉に作り始めた。オリビアは自分の作業に没入する。作るのは何でも良いとの事だったので、少しレベルの高い回復魔法をかけたハーブティーにした。
「上出来だわ」
隣の席の生徒にも凄いねと言われ、オリビアはようやく気持ちが落ち着いてきた。こうやって自分の力を褒めて貰えると、オリビアはいつも元気になれた。
「ねぇ、見て。凄くない?」
近くの女子グループが騒いでいる。
オリビアは自分の事かと嬉しくなって、振り返った。
「え?これのこ…………あ」
女子たちはオリビアではなく、ハヤトを見ていた。
「こんなの初めて見たかも……」
「すごいね……」
他の生徒たちからもハヤトに注目が集まっているようだ。ハヤトは次々と調合をこなしていく。薬草の組み合わせが絶妙で、他の人がやっているのとは全く違う。ハヤトはどんどん材料を混ぜ合わせていく。
「はい、3つ目」
あまりの速さと完成度の高さから、歓声が湧く。オリビアは、肩を落とした。もういい。ヤケになって、今しがた作ったばかりのハーブティーを飲み干す。回復魔法がかかり、疲れが癒されるはずだが、効いている気がしない。その上先生に提出するのを忘れていたため、もう一度作り直すことになった。
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