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[告白まで編]
11話 教室と違う態度
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次の日も、ハヤトは来た。オリビアは、ため息をついた。
「……また来たの?あなた、暇なの?」
「うん、まぁね」
ハヤトは悪びれもなく答えた。
オリビアは、今日はイライラしていた。昨日少しはハヤトと打ち解けられたのかと思っていたのに、今日の魔法学の授業では、いつも通りハヤトにからかわれたからである。オリビアがどうしても出来ない問題を、わざわざ目の前で解いてみせたのだ。
「……ねぇ、あなた本当に私を尊敬してるの?」
「もちろんさ。君の努力は凄いよ。だから、君が困っていたら助けたいと思って」
「……嘘つき」
オリビアはボソッと呟いたが、ハヤトは聞こえなかったふりをしたようだ。
「じゃあ僕、また本読んでるからね」
「本当にあなた、何しに来てるのよ…?」
オリビアは心から疑問に思ったが、放っておくことにした。
ハヤトは向かい側の席に座り、本を読み始めた。目の前だと集中出来ないんだけど、とオリビアは文句を言いたかったが、我慢する。
しばらくすると、ハヤトが体を起こし、口を開いた。
「オリビア、ここ分からないんでしょ。昨日も手が止まってたよ」
「……分かるわよ」
図星だ。
「ほんとは?教えようか」
「いい」
「分かったよ。頑固だね」
ハヤトはクスクス笑う。
「……うるさい」
オリビアは、ハヤトがうっとおしくて仕方無い。
「そう言うと思った。はい、これあげるよ」
ハヤトに無地のノートを渡される。受け取って中を見ると、彼の字で丁寧に解説がまとめてあった。
「……」
「僕のメモ帳だけど、良かったら使っていいよ。僕はもう覚えてるから」
オリビアはそのページをめくったまま固まってしまった。オリビアが分からないところだけがピンポイントで説明されてある。ハヤトはきっと、自分のためだけにこのメモを書いたのだろう。
「いらな……いえ、ありがとう」
「どういたしまして」
ハヤトは再び本の世界へ戻って行った。
***
今日もたっぷりと時間を使って、オリビアは勉強した。また日が暮れた。ハヤトは昨日と同じように、足を組んで本を読んでいた。
「よし、この辺にしとこうかな。ハヤト、終わったわよ」
声をかけたが、ハヤトは動かない。よく見ると、スースーと寝息を立てて寝ていた。
「は、ハヤト?」
声をかけてみるが、起きる気配が無い。
「ちょっと……どうしよう…そろそろ帰りたいんだけどな…」
置いていこうか迷ったが、さすがにかわいそうだ。
「…ああもう、仕方ないなぁっ」
オリビアは、自分の上着を脱ぎ、ハヤトにかけた。そして、彼の手から落ちてしまった本を拾い上げて、表紙を見てみた。
「天才ハヤト君は、何を読んでいたのかしら?」
それは、地図付きの図鑑だった。しかも、魔物の生息地について詳しく書かれているものだ。魔法の存在が証明されてからというもの、正体不明の怪物まで現代に現れるようになっていた。
「…恐ろしいものを読むのね。やっぱり、この人は謎が多いわ」
それでも興味深い内容に、オリビアは読みふけった。
しばらくすると、ハヤトが身じろいだ。
「あ、あれ…?」
肩からパサリとオリビアの上着が落ちる。ハヤトはぼうっとしながらそれを拾う。
「これ、君の……」
ハヤトが少し嬉しそうに、上着を手渡した。
オリビアは恥ずかしくなって、無言で受け取った。
「ありがとう、オリビア。勉強終わった?」
「…ええ」
「お疲れ様。帰ろうか」
オリビアはホッとしたように、立ち上がる。本は、そっと棚へ戻しておいた。
静かな渡り廊下を2人で歩く。月明かりが優しく照らす。
その後も、ハヤトは毎日オリビアのいる図書館へやってきた。ひたすら本を読み、オリビアを待つ。時々、オリビアが疲れて休憩をしている時に、横から紅茶を差し入れたりする。
オリビアは、最初はよく分からない行動をするハヤトを邪険にしていたが、少しずつ受け入れ始めていた。
しかし、12月に入ると、ハヤトは突然来なくなった。
「……また来たの?あなた、暇なの?」
「うん、まぁね」
ハヤトは悪びれもなく答えた。
オリビアは、今日はイライラしていた。昨日少しはハヤトと打ち解けられたのかと思っていたのに、今日の魔法学の授業では、いつも通りハヤトにからかわれたからである。オリビアがどうしても出来ない問題を、わざわざ目の前で解いてみせたのだ。
「……ねぇ、あなた本当に私を尊敬してるの?」
「もちろんさ。君の努力は凄いよ。だから、君が困っていたら助けたいと思って」
「……嘘つき」
オリビアはボソッと呟いたが、ハヤトは聞こえなかったふりをしたようだ。
「じゃあ僕、また本読んでるからね」
「本当にあなた、何しに来てるのよ…?」
オリビアは心から疑問に思ったが、放っておくことにした。
ハヤトは向かい側の席に座り、本を読み始めた。目の前だと集中出来ないんだけど、とオリビアは文句を言いたかったが、我慢する。
しばらくすると、ハヤトが体を起こし、口を開いた。
「オリビア、ここ分からないんでしょ。昨日も手が止まってたよ」
「……分かるわよ」
図星だ。
「ほんとは?教えようか」
「いい」
「分かったよ。頑固だね」
ハヤトはクスクス笑う。
「……うるさい」
オリビアは、ハヤトがうっとおしくて仕方無い。
「そう言うと思った。はい、これあげるよ」
ハヤトに無地のノートを渡される。受け取って中を見ると、彼の字で丁寧に解説がまとめてあった。
「……」
「僕のメモ帳だけど、良かったら使っていいよ。僕はもう覚えてるから」
オリビアはそのページをめくったまま固まってしまった。オリビアが分からないところだけがピンポイントで説明されてある。ハヤトはきっと、自分のためだけにこのメモを書いたのだろう。
「いらな……いえ、ありがとう」
「どういたしまして」
ハヤトは再び本の世界へ戻って行った。
***
今日もたっぷりと時間を使って、オリビアは勉強した。また日が暮れた。ハヤトは昨日と同じように、足を組んで本を読んでいた。
「よし、この辺にしとこうかな。ハヤト、終わったわよ」
声をかけたが、ハヤトは動かない。よく見ると、スースーと寝息を立てて寝ていた。
「は、ハヤト?」
声をかけてみるが、起きる気配が無い。
「ちょっと……どうしよう…そろそろ帰りたいんだけどな…」
置いていこうか迷ったが、さすがにかわいそうだ。
「…ああもう、仕方ないなぁっ」
オリビアは、自分の上着を脱ぎ、ハヤトにかけた。そして、彼の手から落ちてしまった本を拾い上げて、表紙を見てみた。
「天才ハヤト君は、何を読んでいたのかしら?」
それは、地図付きの図鑑だった。しかも、魔物の生息地について詳しく書かれているものだ。魔法の存在が証明されてからというもの、正体不明の怪物まで現代に現れるようになっていた。
「…恐ろしいものを読むのね。やっぱり、この人は謎が多いわ」
それでも興味深い内容に、オリビアは読みふけった。
しばらくすると、ハヤトが身じろいだ。
「あ、あれ…?」
肩からパサリとオリビアの上着が落ちる。ハヤトはぼうっとしながらそれを拾う。
「これ、君の……」
ハヤトが少し嬉しそうに、上着を手渡した。
オリビアは恥ずかしくなって、無言で受け取った。
「ありがとう、オリビア。勉強終わった?」
「…ええ」
「お疲れ様。帰ろうか」
オリビアはホッとしたように、立ち上がる。本は、そっと棚へ戻しておいた。
静かな渡り廊下を2人で歩く。月明かりが優しく照らす。
その後も、ハヤトは毎日オリビアのいる図書館へやってきた。ひたすら本を読み、オリビアを待つ。時々、オリビアが疲れて休憩をしている時に、横から紅茶を差し入れたりする。
オリビアは、最初はよく分からない行動をするハヤトを邪険にしていたが、少しずつ受け入れ始めていた。
しかし、12月に入ると、ハヤトは突然来なくなった。
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