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[告白まで編]
8話 天才優等生の秘密の場所
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ある放課後、オリビアは、職員室へ向かう廊下を走っていた。教師のマリアへ報告に行く。11月の魔法学の中間考査で、筆記・実技共に満点を取ったことだ。マリアとは、ホウキレースの大会以来久しぶりに話す。受け持つ学年が違うため、仕方の無いことだった。
魔法学は難しく、何度も壁にぶつかったが、オリビアは時間さえとれれば強い。ノートにまとめて暗記し、それから理解するやり方は遠回りのようにも感じるが、それでもこうして結果が出た。
オリビアは、走りながら思う。本当は、テストでいい点を取ったくらいで、ここまではしゃぎたくなかった。出来て当然であると、振る舞いたい。オリビア・ポットには才能があるのだと思われたかった。
周りの生徒たちの、憧れの存在になりたい。だからこそ、最近はボロが出始めているものの、出来るだけクールに振舞っていた。しっかり者の、天才オリビア。そう呼ばれる事が、オリビアは何よりも嬉しかった。
でも、実際は違った。本当は先生の話はいつもすぐには頭に入って来ないから、予習復習を欠かさないと授業についていけない。抜き打ちや即興も大嫌い。地頭が良くないのにプライドだけは高いから、努力でカバーするしか無い。不器用で鈍臭いから、実技の練習を図書館で始めてしまう事もあった。焦ると顔に出るし、喜びは全身で表現してしまう。
オリビアはそんな自分がたまに嫌になった。そう思いつつも、職員室に到着すると、満面の笑みでドアを開けてしまった。
「失礼します!はぁ…マリア先生!!いらっしゃいますか!?見てください、これ!!」
オリビアは走って乱れた呼吸を整えながら、入口まで出てきてくれたマリアに満点のテストを見せた。
「まぁ、オリビア。凄いわ。よく頑張ったわね」
マリアは、オリビアのテストを眺めて褒めた。
「えへへ…ありがとうございます。これでまた1歩、先生に近づけますね」
マリアは、まさにオリビアの憧れる、頭脳明晰で冷静沈着な女性の代表のような人だ。ホウキレース大会では、マリアに勇姿を見せることが出来なくて、悔しい。
「オリビア、この間はごめんなさいね。私、ハヤト君が転校してくる手続きに関わったものだから。あなたのことが心配だったけれど、彼のところに行かないといけなかったのよ」
マリアは申し訳なさそうに言った。
「いえ!いいんです。次また頑張りますから」
オリビアは笑顔で言った。本当は相当にショックだったが、マリアを気遣った。
「あなたは本当に努力家ね、他の生徒たちにも見習うよう言わねば」
オリビアは慌てて止めた。
「いえ!先生、ですから私、他の生徒の前では才女で通ってるんですって!裏で必死にやってるなんて、言わないでください」
「ふふ、そうだったわね。相変わらず、宿舎の図書室ではなく、学校の図書館で勉強してるの?」
「はい、ほぼ毎日。皆には、学校の方にしかない本を読むのって言ってるんです」
「そこまでして努力している所を隠すなんて、もったいない気もするけど…分かったわ」
マリアは、オリビアの気持ちを汲んで了承した。
「ありがとうございます!絶対、内緒ですよ!では、失礼します」
「ええ、本当に満点、おめでとう」
オリビアはドアを閉めた。マリア先生に褒められて嬉しい。さっそく、また図書館で勉強しよう。
晴れやかな気持ちで振り返ると、目の前にハヤトがいた。
魔法学は難しく、何度も壁にぶつかったが、オリビアは時間さえとれれば強い。ノートにまとめて暗記し、それから理解するやり方は遠回りのようにも感じるが、それでもこうして結果が出た。
オリビアは、走りながら思う。本当は、テストでいい点を取ったくらいで、ここまではしゃぎたくなかった。出来て当然であると、振る舞いたい。オリビア・ポットには才能があるのだと思われたかった。
周りの生徒たちの、憧れの存在になりたい。だからこそ、最近はボロが出始めているものの、出来るだけクールに振舞っていた。しっかり者の、天才オリビア。そう呼ばれる事が、オリビアは何よりも嬉しかった。
でも、実際は違った。本当は先生の話はいつもすぐには頭に入って来ないから、予習復習を欠かさないと授業についていけない。抜き打ちや即興も大嫌い。地頭が良くないのにプライドだけは高いから、努力でカバーするしか無い。不器用で鈍臭いから、実技の練習を図書館で始めてしまう事もあった。焦ると顔に出るし、喜びは全身で表現してしまう。
オリビアはそんな自分がたまに嫌になった。そう思いつつも、職員室に到着すると、満面の笑みでドアを開けてしまった。
「失礼します!はぁ…マリア先生!!いらっしゃいますか!?見てください、これ!!」
オリビアは走って乱れた呼吸を整えながら、入口まで出てきてくれたマリアに満点のテストを見せた。
「まぁ、オリビア。凄いわ。よく頑張ったわね」
マリアは、オリビアのテストを眺めて褒めた。
「えへへ…ありがとうございます。これでまた1歩、先生に近づけますね」
マリアは、まさにオリビアの憧れる、頭脳明晰で冷静沈着な女性の代表のような人だ。ホウキレース大会では、マリアに勇姿を見せることが出来なくて、悔しい。
「オリビア、この間はごめんなさいね。私、ハヤト君が転校してくる手続きに関わったものだから。あなたのことが心配だったけれど、彼のところに行かないといけなかったのよ」
マリアは申し訳なさそうに言った。
「いえ!いいんです。次また頑張りますから」
オリビアは笑顔で言った。本当は相当にショックだったが、マリアを気遣った。
「あなたは本当に努力家ね、他の生徒たちにも見習うよう言わねば」
オリビアは慌てて止めた。
「いえ!先生、ですから私、他の生徒の前では才女で通ってるんですって!裏で必死にやってるなんて、言わないでください」
「ふふ、そうだったわね。相変わらず、宿舎の図書室ではなく、学校の図書館で勉強してるの?」
「はい、ほぼ毎日。皆には、学校の方にしかない本を読むのって言ってるんです」
「そこまでして努力している所を隠すなんて、もったいない気もするけど…分かったわ」
マリアは、オリビアの気持ちを汲んで了承した。
「ありがとうございます!絶対、内緒ですよ!では、失礼します」
「ええ、本当に満点、おめでとう」
オリビアはドアを閉めた。マリア先生に褒められて嬉しい。さっそく、また図書館で勉強しよう。
晴れやかな気持ちで振り返ると、目の前にハヤトがいた。
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