偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される

プリオネ

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[告白まで編]

6話 楽しい魔法ドッジボール

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2週間後。今日は、先生が魔法学会の集まりがあるとの理由で、課題が与えられた。魔法学クラスでチームに分かれてドッジボールを行うというものだ。
ただし、通常のルールとは違い、手を使ってはいけない。魔法でボールを浮かせて、相手にぶつけなくてはならない。1度当てられたら、観戦にまわる。
オリビアはハヤトのチームと戦うことになった。敵意をむき出しで、ハヤトを正面から見据える。

「オリビア。僕に恨みでもあるのかい?こっちばかり見て」

ハヤトが微笑んだ。

「レースでもテストでも負けたから、今度こそ絶対にあなたに勝つわ」

「やる気十分だね。君と同じチームなら、心強かったんだけどな」

「そう。私にとっては、好都合よ」

少し言葉を交わした後、試合が始まった。生徒たちは手を使えないので、習ったばかりの魔法に苦戦しながらボールを浮かせる。しかし、浮かせるだけでは相手に当たらない。ボールを飛ばすためには、ある程度の勢いも必要になってくる。
オリビア側のチームメイトが最初に攻撃にまわる。なんとかボールを浮かせて相手コートに投げつけたが、相手の足元に転がるのみだ。当然、敵にひょいと避けられた。

そこへハヤトが前に出てきた。ボールに向かって、杖を向ける。ハヤトの動きを見て、他の生徒は杖を下ろした。ハヤトに任せるつもりなのだろう。
ハヤトが杖を上に振り上げると、ふわりとボールが浮かんだ。そして、ラケットの要領で素早く横に動かす。すると、ボールは風を切るように一直線に飛んでいき、オリビアのチームの、男子生徒の足に当たった。

「うわぁっ!!」

男子生徒にハヤトのボールは速すぎて見えなかったようで、突然のことに驚いて尻もちをつく。他の生徒の手を借りて立ち上がり、コートの外へ出た。
わあっとハヤトの仲間たちが歓声をあげた。

「ハヤトぉ、ナイス!!」

「もう勝ったな、これは」

ハヤトの超人的なプレーに、早くもチームメイトたちは勝利を確信していた。

(…なんなの!何でこんなに上手いのよ!!)

オリビアがあ然としながらもイライラしていると、横から楽しげな声が聞こえた。

「まだ分からないわ!こっちにはオリビアがいるんだから!!」

オリビアと同じチームになったサラだ。

「えっ」

「ほら、オリビア!やってしまいなさい」

「ちょっと!サラも頑張ってよ」

サラは試合を楽しんでいる。ふざけて、オリビアを盾にして隠れている。オリビアが迷惑そうな顔をするが、お構いなしだ。

「…仕方ないわね。今度はこっちよ」

オリビアもボールに杖を向けた。

「オリビア、ちゃんと狙いを定めるんだよ」

ハヤトは敵にも関わらず、オリビアにアドバイスをした。

「うるさい!分かってる!」

オリビアが眉間にシワを寄せると、ハヤトが苦笑した。

オリビアも、練習したように杖を動かした。ボールを浮かせ、ハヤト目掛けて思い切り振った。ボールがスピードを上げ、ハヤトの顔まで飛んでいく。

威力やコントロールは上手くいったが、顔はさすがにまずかった。ハヤトのアドバイスに苛立ち、つい顔を狙ってしまったのだ。一瞬、申し訳なく思う。

しかし、ハヤトは目の前まで飛んできたボールをピタッと止めた。ハヤトの杖に従うように、ボールは大人しく浮いている。

「…えっ……」

「すご……」

オリビアだけではなく、その場にいる全員が唖然として、その光景に見入っていた。
ハヤトが、困ったように笑う。

「オリビア、上手いけど顔は危ないよ。もう少し優しく投げてくれないかな」

「……………ごめんなさい」

その後も、試合は続いた。
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