偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される

プリオネ

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[告白まで編]

3話 決意表明

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転校生のハヤトにホウキレースで負けた日から一ヶ月後、オリビアは最悪な気持ちのまま1年生を終えた。

「普通科であるにも関わらず、特別進学科の生徒を抑えて首席をとる才女」と呼ばれることがオリビアの自慢であり、誇りでもあった。それがあの大会で、特別進学科に入ってきたハヤトに粉々に打ち砕かれた。

しかも、悔しさのあまりクラスメイトたちの前で我を忘れて怒り狂ってしまった。今まで落ち着いた物腰と丁寧な言葉遣いを心がけ、大人っぽいと思われるために振舞ってきたオリビアだったが、本性である負けん気の強い性格を露呈してしまった。オリビアの見た事も無い剣幕に、仲間たちは驚いていた。

ただそれに関しては、オリビアにとっては幸運だった。仲間たちにオリビアの痴態が広まる前に年度末を迎えたため、クラスが解散となり、うやむやにする事が出来た。

高等部2年生になると、学年の合同授業だった魔法学は、選択科目になった。これまで通り普通に進学したり一般企業への就職をするか、魔法を活かした仕事を希望するかで、何を専攻するか決める。

無難に前者を選ぶ生徒が大半を占めるが、中には自ら進んで道を切り開く者がいる。オリビアもその内の一人だった。普通科に籍を置き必修科目を学びつつ、せっかく基礎を勉強したのだから、と魔法学の資格取得を目指し、より専門的な知識を身につける道を選んだ。

オリビアは気持ちを新たに、2年生の魔法学クラスの教室に入った。まだ魔法に関われる就職先は狭き門とはいえ、やはり人気の科目である。思っていたよりも多くの生徒たちが受講していた。その中で、友人のサラと目が合う。サラは高い位置で縛った金髪を元気に揺らし、満面の笑みでオリビアに近付いた。

「あっ!オリビアじゃん。オリビアも魔法学取ったんだ!良かったー、同じクラスになれて」

「サラ!良かったわ。私も嬉しい。よろしくね」

オリビアはサラに嬉しそうに手を振ったが、大会でハヤトに怒鳴り散らす所をサラに見られているため、内心複雑だ。

隣いい?と聞かれ、オリビアは隣の席を空けた。

「さてさて、他に知ってる人いるかな………」

サラは教室内に何人か自分の友人を見つけ、喜んでいる。ふと、ある人物を見つけた途端、吹き出した。

「ど、どうしたの?サラ」

「…あっはっは…オリビア、最高よ。いるじゃない。あんたの宿敵が」

サラに促され、オリビアは「え?」と指差す方を見た。前の方の席に、坊主頭の後ろ姿が見える。オリビアは、落胆した。みるみるうちに眉間にシワが寄る。

「……………まぁ、当然よね。レースであれだけ才能をひけらかされたんだもの。あの人が魔法学を選ばない訳がないわ…!」

ショックではあるが、ハヤトがいることはオリビアには想定内であった。

「そうねぇ、オリビア、これから頑張るのよ。もうハヤトくんに怒鳴ったりしないでね?」

サラがニヤニヤとオリビアを茶化す。

「う、分かってるわよ……」

サラにあの時の話を蒸し返され、オリビアは恥ずかしくて仕方がなかった。

「でも、オリビアがあんなに感情的になるなんて、意外だったな」

「そ、それは……ハヤトが、私のことを馬鹿にしたからよ。サラ…見ててね。絶対にハヤトに勝ってみせるから…」

ハヤトの背中を睨みつけながら、決意を表明する。

「……それにしても、まさかオリビアがハヤトくんにライバル心を抱くとは思わなかったな。だって、オリビアってば、いつも穏やかで落ち着いていて、あんまり誰かに突っかかったりするタイプじゃなかったもん。レースの後も、普通に負けを認めてハヤトくんを称えると思ってた」

「そうね……もうサラにはバレたから、いいわ。私、物凄く負けず嫌いなのよ」

「ふぅん…人は見かけによらないのねぇ…。ま、でもオリビアなら大丈夫じゃない?自分の才能を信じるのよ」

「才能ね………」

こうして、オリビアにとって波乱の2年生が幕を開けた。
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