奥手(?)な天才×秀才魔法使いカップル3ヶ月目の邪魔され初デート計画

プリオネ

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番外編

照れ屋な君の代わりに[スマホif]

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 最後まで抵抗した。魔法という便利なものがあるのにテクノロジーの力に頼るなんて、と。それでも「魔法を使わない人もいるから」という理由から最終的には購入を余儀なくされた、スマートフォン。オリビアにとってはただの無機質な板であり、杖の魅力の足元にも及ばない存在だが、周囲は違った。

 フォークにパスタを巻き付けていると聞こえてくるのは、食器がぶつかり合う金属音と、生徒たちの笑い声。ランチタイムのざわめきの中でオリビアは何気なく視線を周囲に巡らせた。食事を終えた者が次々とポケットから自分の携帯端末を取り出しているのが見える。中には飲み物のカップに立てかけ、画面を見つめながら料理をかきこんでいる人もいた。彼らが話しているのは、誰かと連絡先を交換したことや、何かの記事について。そのどれもがスマートフォンにまつわる話題だ。最近は通信手段として使うだけでなく、近況や好きなものを写真に撮ってSNSというもので共有することが、このプロピネス総合学校でも流行りだしていると耳にしていた。

 何がそんなに面白いのだろう────オリビアは食事を進めながら、真向いに座る友人のサラも例に漏れず興奮しているのを、気のない様子で眺めた。片手でサンドイッチをつまんだサラは画面をこちらに向け、自分のアカウントを自慢げに披露する。見慣れぬ「フォロワー」という言葉の横にある数字は、自分の投稿を心待ちにしている人の数らしい。彼女はやはり人気者で、オリビアには見たこともない数の友人たちがネット上にもいることが容易に想像できる。

「オリビアはやらないの?」
「私?私は……空を飛ぶ方が楽しいな」
 
 自分には縁の無い話だと軽く笑いながら返すが、無意識に口がへの字になる。

(サラは友達が多いからSNSだって楽しめるだろうけど、私がやったところで見る人いないし……)

「オリビアは魔法使うの上手いもんね。そうだ、ハヤト君とのデート写真、アップしてよ」
「え、や、やだっ!無理よ!!大した場所行ってないし、わざわざ他の人に見せたりは……」

 サラの大胆な提案にオリビアの顔はみるみる赤くなり、手元は乱れ、口元まで運んだフォークからパスタがするりと滑り落ちてしまう。
 
「つまんない。みんなやってるのよ?今はわざわざ人に見せる時代なのよっ」

 サラは画面を下へ動かし、友達の投稿を紹介する。確かに多くの人が友達や、恋人とのプライベートな写真を投稿し、お互いに反応し合っているのが分かる。しかし、とてもオリビアが便乗できるものではない。

(ハヤトとの写真?撮ったとしても載せるわけないじゃない。彼氏を見せたい気持ちなんて、別に……)

 それでもみんなが当たり前のようにSNSを使い、インターネットの中で自分を表現している様子を見ていると、少しだけ取り残されたような気持ちになる。オリビアは窓の外に目を向け、大空を見つめながらも、小さな画面の中に広がる世界に思いを馳せた。



 ***

 我が物顔でいつもの窓際の席を陣取って、今日も魔法学の課題に勤しむ。相変わらずここで誰かに出くわすことは滅多にないため、オリビアにとってこの古い図書館は自分専用の勉強部屋である。

 後ろに並ぶ棚から参考になりそうな本をかき集める。それらをテーブルに広げながら、ああでもないこうでもないと愛用の黄色い羽ペンを走らせた。すでに合格ラインは超えたはずだが、周りより一歩進んだレポートにするために必死だ。隣には質問をするにはうってつけの魔法使いがいるが、オリビアが彼────ハヤトに頼ることは無い。

「オリビア、教えようか?」
「……もう少し一人で頑張らせて」

 しばらく意地を張り続けてきたが、ついに手が止まった。見かねたハヤトにそっと教科書の一点を指差される。そこには今の状況を打破する、魔力の相関図が載っていた。オリビアは「あっ」を声を漏らし、そのまま突破口を見つけたかのようにするするとレポートを書き上げていった。

「終わったぁ……!!これなら評価Aかも」

 最後の最後でハヤトのアドバイスを受けてしまった事が悔やまれるが、あれぐらいなら許容範囲だと自分に言い聞かせる。完成の喜びを噛み締めて伸びをしていると、タイミングを見計らったようにふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。テーブルを占領する勉強道具を避けるように、暖かな湯気の立つティーカップが置かれる。ハヤトの魔法だ。ひと足先に課題を終わらせた彼が用意した二人分のカップ。熟れたベリーの香りが、この場所に充満する古びたインクの匂いを一瞬にして果樹園に変えた。

「お疲れ様。頑張ったね」
「ありがとう……この味も大好き」

 オリビアはカップを軽く掲げ、ハヤトに微笑みかけた。回を重ねるごとに、彼の紅茶はオリビア好みの味になっている。

 ふと、彼が手にしている物が目に入る。いつもハヤトは適当な棚から手に取った図鑑を眺めながら自分を待っているが、今日彼の時間を潰していたのは本とは正反対の存在だった。彼の杖から放たれる柔らかな魔法とも程遠い、テクノロジーの青白い光を放つ、電子機器。

(ハヤトもすっかりのめりこんでいるわね……)

 待ってもらっている以上は邪魔さえしてこなければ何をしていても文句は無いが、こうも長時間夢中になっていると、何がそんなに彼を楽しませているのか気になってしまう。昼時のサラの姿が重なる。オリビアは温かいカップを両手で包みながら、ハヤトの手元を見つめた。彼のスマートフォンは普段の私服と同じく、シンプルな黒色のケースに包まれている。サラのカラフルで派手な模様付きのそれとは、受ける印象が全く違う。

「何見ているの?」
「ちょっとね。SNSってのを始めてみたんだよ」
「えっ……ハヤトもやってるの?」
「ああ。面白いよ」

(まさかハヤトも始めているだなんて)

 裏切られた気分だ。オリビアは普段、スマホなど学校に持ってきてすらいなかった。魔女たるもの、魔法でできることは魔法でこなすべきという考えだ。ハヤトも当然そうであると思っていた彼女には、彼がスマートフォンを使いこなしているなどとは思いもよらなかった。ここまでくると、完全に置き去りになっているのは自分だけだろう。しかしそうなると気になるのは投稿内容だが、そっと覗こうとすると「ダメだよ」と裏返しにされる。
 
「何よ。そんなに没頭していたら気になるじゃない」
「"いいね"が増えるのが嬉しくてね」
「"いいね"?なにか写真を載せたって事?ふぅん……だから見せてよ」
「ダメダメ。ほら、まだしたい勉強あるんじゃないか?」

 はぐらかされた気がする。オリビアはむっとしながらも、再びペンをとる。随分と先の予定のテスト勉強だ。ノートを埋めるのに勤しんでいると、今度は横からカシャカシャと音がし始めた。気が散って仕方ない。横目で確認するとカメラは自分に向けられている気がするが、テーブルの方へ傾いているようにも見える。

「……ねぇ、何撮ってるの?私の写真とか載せないでね」
「大丈夫だよ。コンセプトと違うから」

(コンセプト?なんなの、もう……)

 不満げに顔をしかめていたオリビアだったが、不意にハヤトの声が聞こえて我に返る。

「ちょっとこれ見て」

 見るなと言われたり、見ろと言われたり。オリビアは今日も彼の言葉に振り回されていることを実感しつつも、素直に彼の隣に身を乗り出す。画面を覗き込もうとした瞬間、すかさず肩に腕を回され、ぐいっと強引に引き寄せられた。

(あっ、しまっ……)

 ハヤトは所構わず愛情表現をする。例え公共の場でも警戒を解いてはいけないのに、油断した。ここではやめてよ、と言おうとしてハヤトの顔を見上げたが、彼は自分ではなく何か別のものを見つめていた。反射的に彼の視線に従って目を移すと、何を見ているのか理解する前にシャッター音が響く。

「えっ?」

 ハヤトは腕を伸ばしてスマートフォンを立てていた。レンズがこちらを向いていて戸惑う。彼女の反応に、ハヤトはしたり顔だ。嬉しそうに見せてきたその画面には、制服の下に着こんだ黒いハイネックをのぞかせ、口の端を少し釣り上げて笑うハヤトと、彼に肩を抱かれて焦りの表情を見せながらもしっかりカメラ目線の自分が写っていた。

「やった。待ち受けにしよう」
「な……撮るなら言ってよ……」

 あ然とするオリビアを放置して、設定画面を操作するハヤト。オリビアはぶつくさと文句をぶつけたが、初めてのツーショットに、不覚にもスマートフォンの良さを少しだけ理解したような気がした。

 その夜オリビアはハヤトの名前で検索したものの、不思議と彼のアカウントは出てこなかった。

 ***
 
 普通科クラスの授業が終わると同時に、サラがオリビアの席に駆け寄る。高い位置で結んだ金色の髪が軽やかに揺れた。彼女はどちらかというと他の友達といる方が多いが、こうしてオリビアを気に掛ける事も欠かさない。いつも明るく太陽のような人であり、オリビアにとっては唯一無二の存在だ。

 ところが今日の彼女は違った。オリビアの前の席に後ろ向きに座って机に肘をつくと、手に顎を乗せてむくれ面になった。

「ねぇ、どうして返事してくれないのよ」
「えっ……急にどうしたの?」

 心当たりがない────返事?手紙でも貰ったっけ。サラの言うことが理解できず、オリビアは目を丸くした。

「えー、気付いてないの?オリビアからフォローしてきたんでしょ?あたし、コメントしたのに。オリビアがあんな事書くなんて思ってなかったから、凄くテンションあがったのにぃ。オリビアってネットだと雰囲気変わるのねっ」

(ネット?コメント?SNSの話?私、やってないけど…?)

 サラはにやにやとウィンクするが、オリビアの混乱は止まらない。この人は何を言っているんだろうと、ひたすら首を傾げる。

「あの、なんのこと……?人違いじゃないかしら?」
「はぁ?これオリビアのアカウントでしょ?」
「……………!?」

 オリビアは言葉を失った。そこに映っていたのは、SNSの投稿画面だった。自分の名前が入ったアカウント名と、自分の勉強時の相棒、黄色い羽根ペンが写った写真にコメントが添えられて全世界に公開されていた。"たからもの"という言葉に、ご丁寧にハートの記号までつけられている。

「ね?このペン、オリビアのでしょ?"いいね"もしたのよ」
「な……な…………」

 頬が熱くなる。無意識に手が口元に運ばれ、画面に釘付けになる。紛れもなく自分の羽根ペンだった。ハヤトから貰った、羽の部分が黄色く染められたペン。長く使い続けて下の方の羽根が何本か抜け始めているところも、自分のものであることを証明している。

 開いた口が塞がらず、眉の皺も深くなっていく。投稿はもう一件。震える手でスクロールすると、よく飲む紅茶の写真が現れ、さらにもうひとつのカップが見切れるように映り込んでいる。背景の本棚から見るに、いつも図書館で飲むものだ。この勉強後のひとときの写真も、卒倒しそうなほどに恥ずかしくなる言葉と共に投稿されていた。

「あはは、これって『匂わせ』ってやつでしょ?オリビアがまさか彼氏の事SNSでのろけるなんて思ってなかったから、もうみんなびっくりしてるのよー」

 サラは嬉しそうに冷やかすが、オリビアに反応している余裕はなかった。自分の名前で書きこまれているコメントを読み上げるので精一杯だ。

「お…教えるのが上手だから、本当に助かる……だ…………だいす…………!!!!」

 それ以上は口に出す事が出来なかった。どう見ても自分の投稿だ。身に覚えもないのに、『オリビア』がSNSを使ってハヤトの存在を匂わせ、思い切り自慢するような投稿をしていたのだ。絵文字をふんだんに使って、画面上の自分がハヤトへの愛をほのめかしている。 

 青ざめたまま固まるオリビアに、サラは「どうしたの」と笑う。

(なにこれ?私こんな投稿したっけ?いいえ、するはずない。アカウントなんて作っていない!!どうして?しかも、"いいね"がたくさんついている。これって押した人の数よね?見たのサラだけじゃないの?)

 状況が理解出来ないまま茫然と画面を見つめていると、通知音が鳴り、画面上部にサラへのメッセージが表示された。

「あっごめん、親からだ。スマホ返してねー」
 
 食い入るように画面を見つめていたオリビアは、サラの声でハッと現実に戻された。メッセージを打ち込むサラを視界に入れながら、心は写真の内容でいっぱいだった。

 自分のもので今すぐもう一度確認したい。『ハヤトラブ・オリビア』などという背筋の凍るようなIDを一刻も早く打ち込みたいが、あいにく今日も学校へは持ち込んでいない。急に周囲の視線が気になり始め、次の授業でも使おうとしていた羽根ペンをカバンの奥にしまいこんだ。

 心を落ち着かせるために深く息を吸い込む。深呼吸が終わると同時に思い出されるのは、いつかの放課後、シャッター音。

────間違いない…………

 オリビアの頭に、スマートフォンをやたらと楽しそうにいじっていた男の姿が浮かび上がり、彼女は拳をきつく握りしめた。

 ***

 放課後になり、ハヤトを探す。彼は生徒貸し出し用のホウキが詰め込まれた倉庫の前にいた。手入れの当番のようだ。気怠げにホウキの毛先を整えているハヤトに、オリビアは強い足取りで詰め寄った。

「ハヤト!!どういうことよ…!!」
「ん?あ、オリビア。どうしたの?」

 ハヤトはオリビアに気付くと顔をほころばせて笑った。そののんきな反応に、オリビアの怒りはさらに燃え上がる。頭に血が上ったまま勢いよく近づき、指を突き付けた。

「ねぇ、あなたが最近SNSでやっていた事って……私になりすましてあなたの事を投稿する事だったの!?それも直接名前を出すんじゃなくて、遠回しに…………!!」

 夕方の静まり返った魔法練習場に彼女の怒声が響き渡る。だがハヤトは気にした様子もなく、「ああ」と気の抜けた返事をした。

「あはは、ばれちゃった?うまいだろ、誰も僕だなんて気付かなかったよ」
「ど、ど、どうしてそんな事するのよ!?」

 恥ずかしさと怒りが一気にこみ上げ、声が震える。

「ごめんごめん、だって君に、僕の事自慢して欲しかったんだよ」

 ハヤトは悪びれることもなく、肩をすくめて軽い調子で言い訳を口にした。

「じっ、自慢!?どうしてわざわざインターネットでそんなことする必要があるのよっ!!」
「だからしてくれたら嬉しいなと思って、遊んでみただけさ」
「その遊びがどれほど私を困らせたと思ってるの!?サラにまで見られて、恥ずかしいじゃない!!」
「そうそう、サラは優しいよね。一番に反応してくれてたよ。コメントも貰ったから、本物から返事してあげて」
「……っ、ダ、ダメ、もうアカウント消すから。貸しなさい!」

 苛立ちを抑えきれず、オリビアはハヤトに手の平を見せてスマートフォンを差し出すように要求した。ハヤトは「えー」と不満そうに口を尖らせ、しぶしぶポケットから取り出す。

「結構いい投稿だと思ったんだけどな。でも事実だろう?」

    彼の言葉に一瞬言葉が詰まる。

「うっ…………うるさい!そういう事じゃない!変な人だって思われちゃうじゃないの!それにサラが言ってたけど、これみんな、あなたからフォローしたって話じゃない!私が喋った事無い人にまで見せないでよ、本当に信じらんないっ!もう……」

 今にも泣きそうになりながら、彼のスマホを操作する。アカウントを開き、投稿内容を確認して改めて彼の仕業だと実感する。

 ハヤトによって公開された2枚の写真。ハヤトから貰った黄色い羽根ペンを「たからもの」と称したもの。お気に入りの図書館で、彼とのティータイムに使ったカップ。彼の説明が分かりやすいという自分の気持ちが見透かされているようなコメント。そこに偽りはなかった。恥ずかしさはあるものの、彼女に否定することはできない。サラからついたコメントは「この間のテストも凄い点数だったね。オリビアならいつか絶対勝てるよ!」というものだった。

(サラだけじゃなくて、よく見たら色んなクラスメイトが反応してくれてる)

 本物の自分だと思ったクラスメイトたちが、自分の投稿だと疑いもせずに受け入れている。オリビアは深く息を吐くと、画面を見たまま静かに呟いた。
 
「……ハヤトはスマートフォン、好きなの?……魔法より?」
「…………いや、スマホも悪くないけど、僕はやっぱり魔法が好きだな」

 ハヤトはおもむろに、懐から杖を取り出した。軽く一振りすると、オリビアの胸元に一輪の花が現れた。制服の胸ポケットに挿されたそれは、彼女の所属を表す「普通科」カラーの黄色に輝いている。

「こんなこと、機械には出来ないだろう?」

 花びらが幾重にも重なり、力強く咲く黄色い花にオリビアは驚き、指先でそっと触れた。

「……そうね」

 肩の力が抜けていく。オリビアはハヤトの持つホウキに目をやった。心を覆った雲が少しずつ晴れていく。

────ハヤトは完全にスマートフォンの魅力に取り込まれているわけではなかった。この人は今までもこれからも、天才的にその力をあやつる、魔法使い。
 
「それで、もう消しちゃった?」
「あ、ええ、今から消すわ。アカウント削除のボタンは……」

 再びスマートフォンに意識を移す。偽物の自分のアカウント。設定の項目を探して、『削除』のボタンを見つける。そして──────────

「………はい。終わったわよ。今日はもう帰るわね」

 オリビアはハヤトと目を合わさず、胸に押し付けるようにしてスマートフォンを返した。代わりに彼の持っていた手入れ済みのホウキを奪い、急いでまたがる。



「あーあ。本当に消し………………あれ?」

 ハヤトは画面を見つめて不思議そうに固まり、顔を上げ、もう一度オリビアを見た。しかしオリビアは一足早く空へ舞い上がった。その方向は宿舎でもなければ、学校でもない。ハヤトには彼女の耳が赤くなっているように見えるが、それが夕焼けのせいなのか分からない。

「ハヤト、私のこと何も分かってない。どうせやるなら……」

 そう言い残して太陽の沈む方角へ飛び去るオリビアの背中を見つめて、ハヤトはニヤリと笑う。スマートフォンをポケットにしまい、ゆっくりと倉庫から適当なホウキを手に取り、自身も飛び乗った。

 「はは……僕から逃げられると思ってるの?素直じゃないなぁ」

 ハヤトはオリビアを追いかけた。徐々にスピードを上げ、その距離をたやすく縮めていくが、手が触れそうになるとわざと少し離れる。愛する彼女との空中の追いかけっこを、時間をかけて楽しむ。ポケットからスマートフォンをもう一度取り出し、その画面を眺めると、彼の自信に満ちた表情はより一層と深まった。
 
 アカウントは残されていた。削除する代わりに投稿されていたのは、「ハヤトと」というコメントが添えられた、図書館で撮った二人の写真だった。









 終わり
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