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番外編「おいで、妖精さん」(※)

6話 恐怖の仕返し

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「ハヤト…!なによこれ!!」

愕然としている私に、ハヤトが近寄ってくる。その顔には、いつもの優しい笑みが浮かんでいて、それが逆に不気味だった。ハヤトは前に、介護用の着替え魔法を使えると言っていた。おそらく、その罠を玄関に張っていたのだろう。さっきの爆発音はそれだ。私はまんまと引っかかってしまった。

「可愛い、似合ってるよオリビア」

「やめてよ……!なに考えてるの……!」

私はカバンで体を隠した。ドレスというより、申し訳程度にスカートがついているだけの、レオタードだ。こんな際どい服を着せられて、恥ずかしくないわけがない。
必死でスカートの裾を引っ張るが、無意味な行動に彼はニコニコと笑うばかりである。

「君が僕に勉強を教えてくれるって言ったんだろう?でも、僕に本物はまだ早いよ。だから君に妖精になってもらったんだ」

「はぁ!?見た目だけ変えたって、意味な…」

「うん、いいね。これなら嫌じゃない」

私の目の前まで来たハヤトに、手首を掴まれた。カバンが床に落ちる。そのまま強引に壁に押さえつけられた。

「ほら、教えてよ。妖精の扱い方」

彼は、耳元で囁いた。その声にゾクッとする。私は彼の手をどけようとしたが、ビクともしない。

「ハヤト、離して……っ」

「僕ね、この虹色の羽が嫌いなんだよ。てらてらして、昆虫みたいだ。でもさ、オリビアの羽だと思えば、綺麗に見える」

「なっ…にを…」

「ああ、すごく良い匂いがする。これが妖精の香りなのか?」

「んっ……ハヤト、やめなさいっ……」

首筋を舐められ、思わず変な声が出てしまう。するとハヤトは調子に乗って、今度は耳に舌を入れてきた。耳の中でハヤトの舌が動く音がする。

「ひゃあ、だめだってば、勉強しましょうよ……」

なんとか逃れようと身を捩ったが、ハヤトは離してくれなかった。ぐちゅぐちゅと音がした後、低い声で囁かれた。
 
「ねぇ、妖精さん…この間はよくも僕のことをからかってくれたね…」

その言葉に、冷や汗が流れる。やっぱりあの事、怒ってたんだ。

「ごめんなさい、謝るからぁ……っ」

「許さないよ。今日はとことん付き合ってもらうからね」

耳の穴に息を吹きかけられ、体が震える。手首を強く押し付ける大きな手から、いつも以上にハヤトの強い意志が伝わってくる。言葉通り、絶対に許さない、という意志。

「……いいね、その表情。もっといじめたくなっちゃうよ」

怯える私に嬉しそうにするハヤトを見て、ようやく私はとんでもない間違いを犯した事に気が付いた。いつも見せないハヤトの弱々しい姿にすっかり調子に乗ってしまい、やり過ぎた。

忘れていたのだ。私よりも、彼の方がずっとずっと意地悪だと言う事を。





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