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第四章 誰も触れない

最終話 放置した彼氏は溺愛彼女におしおきされたりする

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「ふぅ、さすがに疲れたな、今日は…」

部屋に帰ると、ハヤトはすぐにベッドに倒れ込んだ。その横に、オリビアも座る。

「あなたは実行委員長だから、特にそうかもね。長いこと大仕事、お疲れ様」

オリビアはハヤトの頭を撫でた。ハヤトの舞台での挨拶は見られなかったが、最後まで大役を務め切った彼を心から労う。

「ねぇ、オリビア。もう1回ドレス、よく見せて」

「え?」

オリビアは戸惑いながらも、ドレスの裾をつまんで持ち上げて見せた。

「……綺麗だ」

起き上がってじっとオリビアを見つめる。

「ありがとう。……でも、なんか変な感じがするわ。いつもと違うからかしら。こういうの着たことないの。前のパーティーは本当に制服で出たから」

「えっ…それは凄いね……」

「さすがにドレスコードは守れって、皆に笑われたの」

オリビアが気付くと、ハヤトは腹を抱えて必死に笑いを我慢していた。

「ねぇ!!やっぱりあなたも笑うのね!!」

「ごめん……!まさか本当に、制服とは……!!」

こらえきれず吹き出すハヤトに、オリビアはワナワナと怒りで震え出す。

「さっきの感動を返してよ!!」

「あは……見たかった……でも、僕がそこにいたとしても、やっぱり君と踊ってただろうよ」

「……もう」

オリビアは照れながら頬を膨らませた。

「………ワルフも、君のドレス姿を褒めてたね」

「…そうね。あ、そういえば、大丈夫?顔」

「ああ、これか。大丈夫だよ」

ハヤトはワルフに殴られた頬をさする。

「また返り討ちにすると思ってた」

「あいつには、感謝しないといけないと思ってるんだ」

「どういうこと?」

「ワルフはオリビアの事を本気で思って僕に怒ったんだ。僕はオリビアの事になると、冷静じゃいられなくなる。だから、あいつがいなかったら、僕は自分のした事にも、オリビアの気持ちにも気付けなかった」

ハヤトの言葉に、オリビアは優しい笑顔を見せた。

「……ワルフの拳をきちんと受け入れるハヤト、かっこよかったよ」

「そうか……なら、殴らせた甲斐があるな」

「でも、ちょっと心配だった」

「大丈夫だよ。ちゃんと手加減されてたから」

「ううん、ワルフの事が心配だったのよ。あんな事して、殺されるんじゃって」

オリビアが真っ直ぐな瞳で言った。大真面目だ。

「そうだね。僕、やりそうだものね」

ハヤトはムッとする。

「あはは、ええ」

「僕はどうせ、自分勝手だよ」

そう言ってハヤトは、オリビアのドレスに手を伸ばす。オリビアが気づくより早く、背中のチャックを下ろす。

「あっ!」

ハヤトは無表情のまま、彼女の後ろからドレスを剥いた。

「こら!」

オリビアは驚いて胸を隠す。

「……可愛い下着つけてるんだな」

「や、やめ」

背中で、チュッと音がする。

「ひゃっ…」

慌てて前に逃げようとするも、がっちり捕まえられて、動けない。ハヤトは何度もオリビアの背中にキスを落とす。

「もう……くすぐったいわよ……」

オリビアは、小さく震えていた。

「もう無理」

「……………」

スイッチが入ってしまったハヤトには勝てない。
オリビアは抵抗しかけたが、すぐに諦めてハヤトに身を任せる。

「んっ……」

甘い声が出る。

「……やっぱりいいな、この格好も。僕が最初に見たかった……」

ハヤトが寂しそうに呟く。背中にキスをしながら、ぷち、と下着のホックを外す。オリビアを足の間に座らせ、後ろから抱きしめるようにして胸に手を回して揉んでいる。大きく開いた背中や肩にキスをして、舌を這わせる。

「……!」

オリビアがぴくりと反応する。

「………待って……」

「ごめん。止まらない」

ハヤトは、オリビアの耳に唇をつけて囁いた。

「……そうじゃなくて。ちょっと待ってよ、ハヤト!」

「ん?」

突然オリビアが振り返り、ハヤトを思い切り押した。ハヤトはそのまま後ろのベッドに倒れ込んだ。肘で体を支え、オリビアを見上げる。

「えっ、オリビ……」

オリビアはハヤトに顔を近付け、そのまま口を押し付けた。

「っ!!」

ハヤトは驚き過ぎて声も出ないのか、固まっている。オリビアはハヤトの胸ぐらを黒の蝶ネクタイごと掴んで引っ張ると、もう一度キスをした。今度は少し長めにしてから離す。

「ハヤトこそ……!こんな素敵な格好…何で最初に他の女の子に見せちゃったの?」

「え………」

「わ、私のハヤトなのに」

「…………」

「私を放置した…………おしおきをしなくちゃね…………」

ぎこちなく微笑むオリビアを見て、ハヤトの中で何かが弾けた。



終わり









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