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第四章 誰も触れない
20話 大嫌いなダンスを
しおりを挟む───これで最後の曲です、とアナウンスが流れる。歴史あるプロピネス総合学校の、魔法学の今後の発展を願った、式典。そのラストを飾るにふさわしい音楽が流れ始める。CD音源ではあるが、バイオリンの美しい音色が響き渡ると、ホール中の男女がゆっくりと踊り始めた。
その中を掻き分けるようにオリビアの手を引いて走っていたハヤトが、中央まで来て立ち止まった。オリビアへ振り返ると、膝をつき、うやうやしく手を差し出す。優しい瞳で、オリビアを見上げる。
「なっ、何してるの!?立って!」
その時、オリビアは気付いた。群がる美女たちの手を取っていた時も彼は優しい顔をしていたが、今、自分に向ける顔とはまるで別人だ。心の底から愛しい人を想う、熱い眼差し。
「オリビア、僕と踊ってくれますか?」
オリビアにはまるでハヤトがプロポーズでもしているかのように見えた。周りで踊る男女がチラチラと見ているのに、恥ずかしげも無く笑顔で自分を誘うハヤトに、顔を赤く染める。
───この人は、また突拍子も無いことを…
「やめてよ、皆見てるからっ…」
「いいから。お願いします」
ダンスは、嫌いなんだってば。
あれ程目立つことはやめてと言ったのに。
だけど───────────
「~っ!もうっ、分かったわよっ」
顔を真っ赤にしながら、彼の手を取った。
最初から不安になる必要など無かった。彼は帰ってきたのではない。初めからずっと、ハヤトはどこにも行っていなかった。今、オリビアは思う。
ハヤトと、踊りたい。
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