17 / 35
第三章 立場大逆転
17話 すれ違いの末に
しおりを挟む「ごめんな。俺がオリビアを連れ出したんだ」
「ワルフ?……どういうことだ」
ハヤトがワルフに1歩近づいて、見下ろす。自分より背の低いワルフとの差が、はっきりと分かる。杖の先の火花がより一層弾ける。
「ワルフ、何で戻ってきちゃったの?あなたは何も悪くないんだから、逃げた方が…」
──今のハヤトはたぶん頭に血が上っている。何をするか分からない。
オリビアはワルフをハヤトから離そうと試みるが、彼は手の平を向けて制止した。
「俺は、お前らが恋人同士なのは知っているし、邪魔しないつもりだった。でも、今夜だけはこらえきれなくて、オリビアに告白したんだ。そしたら、断られた。オリビアは、お前を選んだんだよ」
ワルフはハヤトを睨みつけながら言う。よく見ると、足が震えている。ハヤトの天井知らずの強さは、ワルフもよく分かっていた。
それでも、彼は負けじとハヤトに向かって前に出た。
「それなのに、お前、自分の事棚に上げてよく言えるなあ!お前が他の女と踊ってたの、俺もオリビアも見てるんだぞ!」
「えっ……」
ハヤトはオリビアを見た。オリビアは視線を逸らすように俯く。
「オリビア、あれは、仕方なく…」
「仕方ない、だと?お前があの美人にデレデレしてる時、オリビアがどうしてたか知ってるか!?泣いてたんだぞ!!苦手なパーティーで不安なオリビアを一人ぼっちにさせて、お前何やってるんだ!!」
「……」
ハヤトは、驚きで何も言い返せない。
「ちょっと、ワルフ、言わないでっ」
オリビアは顔を真っ赤にして人差し指を口に当てた。慌ててワルフを止めるが、ワルフは続けた。
「オリビアがどれだけ酷い目にあったのかも知らねぇで…。いつもオリビアから離れないくせに、1番そばにいてやらないといけない日に近くにいないでどうすんだっ!!俺だってなあ、オリビアの事が好きなんだ!だから、お前がほったらかしてる間に、誘ったんだよ…」
ハヤトは目を見開いたまま動かない。ワルフが顎を突き出し、威嚇するように目の前まで、近付いた。
「…でもな、安心しろよ。オリビアはお前しか見てないようだから、これが最初で最後だ。きっぱり諦めるよ。その代わり、お前…オリビアの事がそんなに好きなら、泣かせてんじゃねぇよ!!」
ワルフは、ハヤトを殴った。バキッという音が、夜の中庭に鈍く響いた。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
【R18】赤ずきんは狼と狩人に食べられてしまいました
象の居る
恋愛
赤ずきんは狩人との待ち合わせに行く途中で会った狼に、花畑へ誘われました。花畑に着くと狼が豹変。狼の言葉責めに赤ずきんは陥落寸前。陰から覗く狩人は……。
ほぼエロのハッピー3Pエンド!
いろいろゆるゆるな赤ずきん、狼はケモノタイプ、狩人は赤ずきんと7歳違い。
ムーンライトノベルズでも公開してます。
エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。
お家デートでエッチないたずら
まゆら
恋愛
前回投稿を間違えて削除をしてしまいました…。
新着狙いのあげ直しにならないように、一からあげ直しています…。前回投稿の閲覧、ブクマ頂いた方々、本当に本当に、申し訳ございません…。
久しぶりの彼氏とのお家デートで、いつの間にかクリを責められちゃって、いやいやしても許してもらえない女の子のお話です。
pixivとFantiaでは『お家デートで……』で投稿している作品です。
アルファポリスで投稿するには、ちょっと躊躇ってしまったので、タイトルを変更してますが、内容はpixivと同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる