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第三章 立場大逆転

17話 すれ違いの末に

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「ごめんな。俺がオリビアを連れ出したんだ」

「ワルフ?……どういうことだ」

ハヤトがワルフに1歩近づいて、見下ろす。自分より背の低いワルフとの差が、はっきりと分かる。杖の先の火花がより一層弾ける。

「ワルフ、何で戻ってきちゃったの?あなたは何も悪くないんだから、逃げた方が…」

──今のハヤトはたぶん頭に血が上っている。何をするか分からない。

オリビアはワルフをハヤトから離そうと試みるが、彼は手の平を向けて制止した。

「俺は、お前らが恋人同士なのは知っているし、邪魔しないつもりだった。でも、今夜だけはこらえきれなくて、オリビアに告白したんだ。そしたら、断られた。オリビアは、お前を選んだんだよ」

ワルフはハヤトを睨みつけながら言う。よく見ると、足が震えている。ハヤトの天井知らずの強さは、ワルフもよく分かっていた。
それでも、彼は負けじとハヤトに向かって前に出た。

「それなのに、お前、自分の事棚に上げてよく言えるなあ!お前が他の女と踊ってたの、俺もオリビアも見てるんだぞ!」

「えっ……」

ハヤトはオリビアを見た。オリビアは視線を逸らすように俯く。

「オリビア、あれは、仕方なく…」

「仕方ない、だと?お前があの美人にデレデレしてる時、オリビアがどうしてたか知ってるか!?泣いてたんだぞ!!苦手なパーティーで不安なオリビアを一人ぼっちにさせて、お前何やってるんだ!!」

「……」

ハヤトは、驚きで何も言い返せない。

「ちょっと、ワルフ、言わないでっ」

オリビアは顔を真っ赤にして人差し指を口に当てた。慌ててワルフを止めるが、ワルフは続けた。

「オリビアがどれだけ酷い目にあったのかも知らねぇで…。いつもオリビアから離れないくせに、1番そばにいてやらないといけない日に近くにいないでどうすんだっ!!俺だってなあ、オリビアの事が好きなんだ!だから、お前がほったらかしてる間に、誘ったんだよ…」

ハヤトは目を見開いたまま動かない。ワルフが顎を突き出し、威嚇するように目の前まで、近付いた。

「…でもな、安心しろよ。オリビアはお前しか見てないようだから、これが最初で最後だ。きっぱり諦めるよ。その代わり、お前…オリビアの事がそんなに好きなら、泣かせてんじゃねぇよ!!」

ワルフは、ハヤトを殴った。バキッという音が、夜の中庭に鈍く響いた。



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