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第三章 立場大逆転
12話 憧れの方々からの勧誘
しおりを挟む会場の隅の方、生徒たちがあまり近寄らない場所で、教師たちは魔法学会の関係者と酒を交わし上機嫌で笑い合っている。大人のテーブルにはしっかりとイスが用意されていて、皆そこへどっかりと腰を下ろしていた。
ハヤトがいるなら絶対にここだと思った。きっと大人たちは優秀な彼を捕まえ、彼の話を肴に盛り上がっているに違いない。そう考えたのに、ここにも見当たらない。
オリビアがキョロキョロしていると、学会の上役らしき男たちにテーブルから手招きされた。相当に酔っているのか、顔が鼻まで赤い。先の式典では大真面目に魔法学の今後について語っていたが、今は下品にゲラゲラと笑っている。少しためらうが、行かない訳にはいかない。おそるおそるテーブルへ近付くと、複数の大人たちからの注目を浴びた。
「君!君、式典の時、研究発表してた子だよね?素晴らしかったよ。特に君の発表の、あの魔法の応用の仕方は実に見事だった!」
ありがとうございます、と少し距離を取って礼を言うオリビアの腰に手を回し、遠慮するなとテーブルへ引き寄せた。男たちのアルコールの匂いがきつい。
「ねえ、こんな可愛らしい服着てるのに、あんなに立派に発表しちゃうなんて、君は相当な実力の持ち主なんじゃない?」
男はオリビアを褒めながら、露出した腕を撫でてきた。ぞわっと鳥肌が立つ。嫌な予感がする。
「でもねぇ、若い子がこんなに肌出しちゃダメだよ。他の子もみんなそうだね。ここの生徒は恥じらいってものを知らない。おじさんたちの頃はね……」
男たちは、好き勝手に喋り始めた。「今どきの若い子は」などと言いながら、時々オリビアのドレスのリボンを触ったり、裾を少しめくろうとしてくる。
「あ、あの、私、人を探してて…失礼します」
「学生さん、目上の人にはお酌しないと」
逃げようとするが、止められる。無理矢理酒を持たされ、仕方なくついで回る。その間も彼らはオリビアの全身を舐めるように見回していた。
助けを求めて教師たちに視線を送るが、誰もこちらに気付かない。同様に酷く酔っ払っている。
「ああ、君みたいな子が学会に入ってきてくれたら、もっと魔法学の発展に繋がるんだけどなぁ。我々もむさ苦しいおじさん同士で一緒に仕事するよりかは数段と捗るってものだ。どうだね、卒業したら来るか?ん?」
アルコールの匂いをふんだんに含ませたその口から、憧れの魔法学会への勧誘の言葉を聞く。
───どうしよう。全然嬉しくない。
「こ、光栄ですが、そのお話はまた…」
顔を思い切り引きつらせた笑顔で答える。
「はっはっは、そうかそうか!まあ、考えておいてくれよ。いつでも歓迎だからな!」
肩をポンポンと叩かれるが、何回かに1回は下の方へ手が当たる。オリビアは限界になって、テーブルに背を向けた。
「あの、そろそろ失礼しま……きゃあっ!?」
歩き出そうと出した右足に男の靴を引っ掛けられ、床へ転んだ。持っていたグラスは無事だったが、中身はこぼれてしまった。ドレスのスカートに染みができる。
「おっと、すまないね。足元がおぼつかなくって。大丈夫かな?」
男のわざとらしい謝罪に、周りの者たちが腹を抱えて笑う。
「いえ……大丈夫、ですから……」
起き上がり、ドレスの汚れを払う。しかし、男たちはしつこく絡んできた。
「いや、そんなはずはない。ほら、拭いてあげるよ」
「いえっ……本当に……!!」
「いいから、ほら、じっとしてなさい」
男たちがオリビアを囲み始める。1人が、オリビアを周囲から隠すように立った。
それぞれがハンカチを取り出し、ジュースがかかっていない場所まで、丁寧に擦る。ドレスの裾や足だけだったのが、次第に胸元にまで伸びてくる。やんわりと拒む手を、「念の為ここも拭いておこう」と掴まれてしまう。両手の自由を奪われて無防備になった丸い膨らみに、ハンカチは集中した。
「えっ……」
「あっ、当たっちゃった。ごめんね。でもさ、拭かないといけないから。これならセクハラにはならないよね?」
そう言って、再びハンカチを胸に擦りつける。その手から逃げようと前かがみになると、垂れ下がった胸を揺らされた。何本もの手が、オリビアの身体を這い回る。
「……ひっ………!」
恐怖で声が出なくなった。抵抗できない。
助けて、ハヤト。
ついに1人の男の手がドレスの内側に入り込んできた時、その後ろから声が聞こえてきた。
「あの、オリビア?」
男たちはハッと振り返る。オリビアも、ゆっくりと顔を上げた。そこには、ずっと探していた彼、ハヤト──────ではなく、別の男が立っていた。
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