悪夢の辺境

4ruba

文字の大きさ
上 下
5 / 7
二章 炎と水のエクソシスト

5

しおりを挟む
教会を出て少し歩いた所で、四人の足が止まる。

「はぁ、全く油断なんねぇーなこの町は!」
シビスが声を荒げて言った。
その視界先には三体の悪魔と中位クラスの悪魔が一体。

「一旦引くか?」
ロクが言う。

「いえ、それは出来ないでしょう。」
フミーはまだ子供。
悪魔三体に中位クラス相手では逃げきれない。
それに旧市街中央は悪魔が集中して多い。
つまり逃げた先に悪魔がいないとは限らない。

アルベが頭の中で考えているこれらの危険性はおおよそ当たっているだろう。
エクソシストがもっとも命を落とす原因は悪魔に囲まれ、選択肢を削られる事。
つまり、戦う意外道はない。

中位クラスの悪魔はもうほとんど人間だった時の面影は残っておらず、今回の奴に限っては半獣狼男といった見た目で体長は2.5mはあるだろう。

長い鉤爪に筋肉質な足に狼のような体毛。
逃げてもどのみち追い付かれる。
アルベ達は各々武器を取り出し戦闘体制に入った。

「フミーちゃん。少し怖いかもだけど安心して、すぐ終わらせるから!」
精一杯の笑みと冷静さを装い物陰にフミーを誘導した。

「神聖書。」
ロクがそう言い手を上げると一冊の青白いオーラを放つ本が出現し空中に浮遊した。

神聖書シンセイショ
エクソシストが使う魔法の聖書であり、様々な能力を引き出す。
使う者によってそれぞれ違った種類の聖書になり、エクソシストの大半はこれらをベースに悪魔祓いを行う。

「アクアボイド!」
続けてロクが唱えると、神聖書がペラペラとめくられ聖水が泡の様に浮かびながら出現し、弾丸と同じスピードで中位クラスの悪魔に突撃する。

目を隠し怯む中位クラスの悪魔をよそに、三体の下位クラス悪魔達がフミーがいる方へ駆け出した。

「行かせるかよ!神聖書!」
次はシビスが言った。
ロクとは違い赤い炎のオーラを放つ神聖書が出現した。

「エンチャントフレア!」
シビスがそう唱えると、持っているメイスと盾が炎に包まれ、火力が上がっているのか一撃で悪魔を祓う。

「さぁさぁ、他の悪魔がくる前に最後の締めと行きますか!」
シビスの火とテンションがドンドン燃え上がる。

「おい、気を抜くなよ。相手は中位クラス、そこらの悪魔とはレベルが違う!」
ロクがシビスをそう叱り、なんだよっといった表情を見せるシビス。

その一瞬の間に狼男はすごい脚力でシビスにつめより鋭い鉤爪で切りつけた。
なんとか盾で防いだシビスだったが、狼男の力が強いのか軽く吹き飛ばされ、追撃とばかりに再びつめよられる。

「まずい。アクアボイド!」
ロクの攻撃は軽くかわされ、しりもちをつくシビス。
二度目の攻撃もなんとか防げたが、狼男の鉤爪が盾を貫通していた。

「これで終わり!」
この隙を逃すまいと狼男の動きが止まったところを、後方から剣を振りかざし首をとろうとしたアルベ。
狼男は危機を察知したのか、咄嗟に振り返りながら左腕でアルベを貫く構えを取った。

「まずいぞアルベ!」
ロクが叫ぶ。

「タイムターナ!」
アルベが唱える。
空中にジャンプし浮かんでいるアルベが方向転換する事は不可能に近かった。
つまり、狼男の攻撃をかわす手段はない。
ロクとシビスはそう思っていたが、アルベのすぐとなりには銀色に輝く神聖書が出現しており、アルベの体はジャンプする前の構えに巻き戻り、狼男の攻撃をかわした。

「あぁ!?」
この不可解な動きに狼男からも動揺と低い声が漏れた。

タイムターナ。
この魔法は使用者の時間を少しだけ戻すことが出来る。
アルベは攻撃をかわし、敵の隙を作り出す事が出来たというわけだ。

そして再びアルベが剣を向けた時には、狼男の心臓にアルベの剣が刺さっていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...