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セカンドエピソード ~魔界戦争~
97.燃え上がれ、最高のパワー
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「うあああ!!」
もはや自分自身でも、何が起きているのか理解出来なかった。
体が熱い。燃えるように熱い。それに加えて気分もどんどん高揚し、頭から指先まで力が行き届いているのがよくわかる。だがなぜそうなったのか、なぜこうまでこのジーグリードを追い詰めているのか、そこがわからない。
殴れば当たる。蹴ればふっ飛ぶ。
そんな簡単な事が、今まさに目の前で簡単に起きているのだ。
「ぐッ……小僧!!」
「うおおおお!!」
一方的に攻撃しているわけでもない、何度か反撃も受けている。だがそれも痛みを感じないどころかびくともしない。
まるで自分の体ではないような感覚。
この体にまとわりつく炎のようなオーラが、そうさせているのだろう。
「あのボーズ……なんだ、あの不安定で激しい力は。俺の知る、人間が操る生命力のパワーともまた違う何か……」
ゼインファードに見えていたのは、激しく燃える炎のような、そんな不安定さと激しさを兼ね合わせた力。
「でえありゃぁぁあ!!」
またヴァックスの蹴りがヒットする。あのジーグリードがいとも容易く殴られ蹴られ、右に左にと吹き飛ばされ続けている。
あまりに異常、あまりに異質なパワーアップ。
「ちぃ……ッ!この私をこうも……!!ならばこれはどうかァッ!!」
ずっと握られていたジーグリードの手のひらが開かれ、ヴァックスへと突き出される。余った方の手も空を引き裂くように振るわれ、突風を巻き起こした。
「うッ!」
「どうだ、逃げられまい!お前はそこで風の檻に捕らわれたまま、真空圧縮弾を受けてバラバラになるがいい!!」
「うう……うあああああああああッ!!!!」
次第にヴァックスのオーラが高まり、さらに激しさを増す。それはどんどん大きく、そして激しくなりヴァックスを拘束していた風を簡単に吹き飛ばしてしまった。
「くう……あああああ!!」
拘束を解いてもまだ止まらない。ヴァックスのオーラはどんどん大きくなっていき、ジーグリードさえも巻き込むほどの大きさまで暴走し始めた。
「こ……この小僧ッ!これほどのパワーを!!」
「マズい、マズいぞ!あれがもし生命力のパワーならアイツは……ッ!!」
ゼインファードも危惧している、この異常なパワー。それはもちろん生命力を燃やして具現化する力であり、有限なのだ。故にこれほどの力で使用すれば体も、そして心も崩壊することは必然である。
「ぐ……うらぁぁぁぁぁあ!!!!」
どん、と音を立てて地を蹴りあげたヴァックスは赤い軌跡を描いてジーグリードへと高速移動した。この間、僅かに一秒も無かっただろう。瞬きすらも許されぬその素早さ。
「ええい舐めるな小僧!!」
強烈なキックが、迫るヴァックスに叩き込まれる。
が、もはやヴァックスにそんなものは通用しなくなっていた。片手で受け止め、逆に弾き返してしまったのだ。
「あああ……!!!!」
「ぐおおッ!!」
そのまま足にパンチを叩き込む。赤い衝撃波が周囲に飛び散る。
この様子を見ていた鳥魔兵の誰もが、ここに介入してジーグリードを救出しようなどとは思わないだろう。
先程まで怯え、立ち向かおうとも力の無いだけだった男が、今や謎の力でジーグリードを追い詰めている。
それも、超圧倒的パワーで。
「がぁぁぁあ!!!!」
「ぬゥッッッ!!」
なんとか掴まれている足を振りほどき後方へ逃げる。が、それも一瞬の事。
すぐに踏み込んで距離を詰めて今度は腹部へ強烈な前蹴りが炸裂した。
血を吹き後方へ激しく飛ぶジーグリード。さすがの彼もこの猛攻に確実にダメージを蓄積していた。というのも、高速治癒が追いついていないのだ。
「か……ぁ……ッ!!」
数千年という時を生きた。それがどうだろうか、たかだか十数年生きただけの小僧にいいようにしてやられている自分に吐き気がした。
鳥魔、そして妖魔。さらには原魔。三魔界の猛者どもと一戦交えたことも数しれない。地球人の小僧ごときに遅れをとるような事はありえないのだ、本来は。
背中を地に付けて、天を仰いでいる自分が不思議で仕方がなかった。
「……小僧、お前は……!」
「ジーグリードォッ!!」
起き上がろうとしたジーグリードにさらにもう一撃、蹴りを叩き込む。
「かッッッ……!!」
「だぁぁぁぁ!!!!」
ヴァックスのパワーはまだおさまらない。どころかさらに増幅しているのだ。
「お前のような小僧に……ここまでやられるとは……」
ヴァックスがもう一撃、さらに加える。
「ッッッ!!ッカは……ッ!!」
尻を付いて頭部の位置が低くなっているところへ、思い切りのいい全力の拳が叩き込まれる。
乾いた音。鈍い振動。
右に左に、右に左に。何度も連続して叩き込まれた。
「……が……ぁ……あぁ……」
「だァァァッ!!!!」
ヴァックスのパワーは更に激しさを増して燃え上がる。溢れ続け、止まることを知らぬそれはもう太陽と比喩して差し支えはなかった。
もはや勝敗は決した。
そう、誰もが思い描き疑わなかったまさに、その時の出来事である。
もはや自分自身でも、何が起きているのか理解出来なかった。
体が熱い。燃えるように熱い。それに加えて気分もどんどん高揚し、頭から指先まで力が行き届いているのがよくわかる。だがなぜそうなったのか、なぜこうまでこのジーグリードを追い詰めているのか、そこがわからない。
殴れば当たる。蹴ればふっ飛ぶ。
そんな簡単な事が、今まさに目の前で簡単に起きているのだ。
「ぐッ……小僧!!」
「うおおおお!!」
一方的に攻撃しているわけでもない、何度か反撃も受けている。だがそれも痛みを感じないどころかびくともしない。
まるで自分の体ではないような感覚。
この体にまとわりつく炎のようなオーラが、そうさせているのだろう。
「あのボーズ……なんだ、あの不安定で激しい力は。俺の知る、人間が操る生命力のパワーともまた違う何か……」
ゼインファードに見えていたのは、激しく燃える炎のような、そんな不安定さと激しさを兼ね合わせた力。
「でえありゃぁぁあ!!」
またヴァックスの蹴りがヒットする。あのジーグリードがいとも容易く殴られ蹴られ、右に左にと吹き飛ばされ続けている。
あまりに異常、あまりに異質なパワーアップ。
「ちぃ……ッ!この私をこうも……!!ならばこれはどうかァッ!!」
ずっと握られていたジーグリードの手のひらが開かれ、ヴァックスへと突き出される。余った方の手も空を引き裂くように振るわれ、突風を巻き起こした。
「うッ!」
「どうだ、逃げられまい!お前はそこで風の檻に捕らわれたまま、真空圧縮弾を受けてバラバラになるがいい!!」
「うう……うあああああああああッ!!!!」
次第にヴァックスのオーラが高まり、さらに激しさを増す。それはどんどん大きく、そして激しくなりヴァックスを拘束していた風を簡単に吹き飛ばしてしまった。
「くう……あああああ!!」
拘束を解いてもまだ止まらない。ヴァックスのオーラはどんどん大きくなっていき、ジーグリードさえも巻き込むほどの大きさまで暴走し始めた。
「こ……この小僧ッ!これほどのパワーを!!」
「マズい、マズいぞ!あれがもし生命力のパワーならアイツは……ッ!!」
ゼインファードも危惧している、この異常なパワー。それはもちろん生命力を燃やして具現化する力であり、有限なのだ。故にこれほどの力で使用すれば体も、そして心も崩壊することは必然である。
「ぐ……うらぁぁぁぁぁあ!!!!」
どん、と音を立てて地を蹴りあげたヴァックスは赤い軌跡を描いてジーグリードへと高速移動した。この間、僅かに一秒も無かっただろう。瞬きすらも許されぬその素早さ。
「ええい舐めるな小僧!!」
強烈なキックが、迫るヴァックスに叩き込まれる。
が、もはやヴァックスにそんなものは通用しなくなっていた。片手で受け止め、逆に弾き返してしまったのだ。
「あああ……!!!!」
「ぐおおッ!!」
そのまま足にパンチを叩き込む。赤い衝撃波が周囲に飛び散る。
この様子を見ていた鳥魔兵の誰もが、ここに介入してジーグリードを救出しようなどとは思わないだろう。
先程まで怯え、立ち向かおうとも力の無いだけだった男が、今や謎の力でジーグリードを追い詰めている。
それも、超圧倒的パワーで。
「がぁぁぁあ!!!!」
「ぬゥッッッ!!」
なんとか掴まれている足を振りほどき後方へ逃げる。が、それも一瞬の事。
すぐに踏み込んで距離を詰めて今度は腹部へ強烈な前蹴りが炸裂した。
血を吹き後方へ激しく飛ぶジーグリード。さすがの彼もこの猛攻に確実にダメージを蓄積していた。というのも、高速治癒が追いついていないのだ。
「か……ぁ……ッ!!」
数千年という時を生きた。それがどうだろうか、たかだか十数年生きただけの小僧にいいようにしてやられている自分に吐き気がした。
鳥魔、そして妖魔。さらには原魔。三魔界の猛者どもと一戦交えたことも数しれない。地球人の小僧ごときに遅れをとるような事はありえないのだ、本来は。
背中を地に付けて、天を仰いでいる自分が不思議で仕方がなかった。
「……小僧、お前は……!」
「ジーグリードォッ!!」
起き上がろうとしたジーグリードにさらにもう一撃、蹴りを叩き込む。
「かッッッ……!!」
「だぁぁぁぁ!!!!」
ヴァックスのパワーはまだおさまらない。どころかさらに増幅しているのだ。
「お前のような小僧に……ここまでやられるとは……」
ヴァックスがもう一撃、さらに加える。
「ッッッ!!ッカは……ッ!!」
尻を付いて頭部の位置が低くなっているところへ、思い切りのいい全力の拳が叩き込まれる。
乾いた音。鈍い振動。
右に左に、右に左に。何度も連続して叩き込まれた。
「……が……ぁ……あぁ……」
「だァァァッ!!!!」
ヴァックスのパワーは更に激しさを増して燃え上がる。溢れ続け、止まることを知らぬそれはもう太陽と比喩して差し支えはなかった。
もはや勝敗は決した。
そう、誰もが思い描き疑わなかったまさに、その時の出来事である。
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