ヒナの国造り

第１７章・ステラガーデン死刑台編

武庫之荘光①

　会議直前のホテルの通路にある人物が通る。彼からはものすごいオーラが出ていた。


　「あ・・・あの人は・・・！？」


　あるホテル従業員が呟いた。“ある人物”はどうやら大物のようだ。するとその人物はある部屋に入ったのである。


　「やあ、光さん。こんにちは。」


　「こんにちはっす。今日もよろしくお願いします！！」


　椅子に座りながら彼を迎えたのは六十谷であった。


　「新宮寺さんがあんたの訪問を待っていたよ。」


　「そうっすか・・・そりゃ光栄。僕が来たからにはどんな計画も通るからっすね。」


　やけに自信満々な発言を繰り返すこの男性とは一体・・・？



　その頃、上之郷は自室である男性と会話していたのであった。上之郷がある人物の写真を男性に見せると彼は質問をした。


　「亮君、この人は・・・？」


　「伯父さん、こいつは武庫之荘むこのそう光ひかると言いまして俺の親父の妹の子・・・つまり従弟いとこなんですよ。」


　「なるほど・・・義弟おとうとの子か。しかしなぜ彼があの連中の元へ？」


　「それはわかりませんが・・・ただ１つ言えるのは光は俺達側の人間じゃあないと言うことですか。」


　武庫之荘は上之郷や神明の従弟(上之郷達の父親の妹の子)にあたるがなぜか宇治橋側の人間になっているのだ。


　「やつはラビリンシングタウンの生まれ育ちです。元々武庫之荘家がヒューゴエリアのムコソ村の名主である家系であったために光の先代から強い力を持つ一族でした。」


　光の父はミュージシャン、祖父は元野球選手といった血筋も輝いて見える。同じ“いとこ”でも上之郷達とは差が開いている。


　「差が・・・」


　「ええ、彼は恐らく強いネットワークがあるのでそこからあの宇治橋達とは繋がれたのでしょう。だがこの会議で俺は光の頭を叩く覚悟でいこうと思います。」


　「身内だから・・・放っておけない・・・か。」


　「その通り。血を分けた人間ですからこのままずっとやつを無視したいと思いません。」


　上之郷の想いを伯父は感じたようだ。身の差はあれど同じ血を分けあった家族だからこそこのままにしておきたくないようだ。



　一方、六十谷は楽しそうに武庫之荘に話しかけるが武庫之荘の顔付きは笑顔ながらも少し強ばっているようであった。