ヒナの国造り

第１６章・ステラガーデン編

“裏付け”と“繁栄”……二つの計画

　場面は南場家に戻る。田平の母、レーナは買い物へ向かおうと外に出ようとした時であった。玄関を出てすぐの第一声が喜八郎の耳に聞こえたのである。


　「あ……あなた……」


　喜八郎はすぐさま玄関に向かうと背広姿の男性ともう一人の作業服姿の男性が居たのである。


　「君は……勝幸かつゆきかね？」


　「はい……長らくご無沙汰して申し訳ございませんでした……横にいるのは私の母の弟の子で私の従弟にあたる東周参ひがしすさ満寛まんかんです。」


　彼は自身の名前を“田平たびら勝幸かつゆき”と名乗った。だが彼の姿を見た喜八郎は顔をしかめていた。


　「君の顔は……出来れば二度と見たくなかった…………」


　「…………」


　「用事があるなら……仕方ない。上がりなさい……」


　「ありがとう……ございます……」


　勝幸は喜八郎宅に上がると席についてある話をしたのであった。喜八郎は彼の話を一応聞くのであった。


　「話をしなさい。」


　「はい……実は雪のことで……」


　「雪？あいつは……ルーツの地よりその地を傷つけた男を優先してしまったが……何か。」


　「…………お父さん…………それは間違っています！！」


　「何っ！？」


　突然雪のグリーンウッドフィールド依存を否定した勝幸は事情を説明することにしたのである。


　「お父さんは知らなかったのですね……！！」


　「君にお父さんとは言われたくない……関係はもうないだろう……」


　「お父さん、ここは勝幸さんの顔を立ててあげて……」


　「お前もか……レーナ……」


　「すみません……お父さん。これから話をします。単刀直入に言わせてもらいますとお父さんは雪の事情を知らないようですね。」


　「何！？黙って聞こうとしたら……」


　「お父さん！！話を聞いてあげて！！」


　「チッ！！」


　勝幸はいきなりとんでもない発言をしたが実は雪にはある事情があったのである。


　「実は２ヶ月ほど前にコドニードにある田平家の父祖の墓参りに行った時に雪と再会しました……」



　…………２ヶ月ほど前…………


　コドニードの墓地。この日、先祖の墓参りに来ていた勝幸は偶然同じ墓へと墓参りにやって来た雪と再会したのであった。


　「ゆ……雪……久しぶりだな……」


　「お……お父さん……！！」


　雪は父・勝幸の姿を見ると再会に感動したのか涙を大粒に流して彼に抱きついたのであった。


　「お父さん……会いたかった！！本当に会いたかった！！」


　「僕もだよ！！雪！！」


　愛娘を抱きしめた勝幸の笑顔にもまた涙が光っていた。そして雪はある話をしたのであった。


　「お父さん……私はある“恐怖感”があるの……」


　「恐怖感？そりゃあ何のことだい？」


　「実はある人の元に“潜伏”しているのですが、彼らが表に出ると大変なことになりそうで…………」


　「！？」


　雪からある話をうちかけられた勝幸の表情は凍ったのである。