ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第16章・ステラガーデン編

10月10日⑥

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 その苛立つ尚徳の横に現れたのはあの花井であった。彼も此処に連れてこられて待機中の身であった。


 「……君も気になっていたのか……」


 どうやら新聞をのぞく花井の姿を見て穏やかな顔をする尚徳を見る限り、二人は仲良くしているようである。


 「以前はヒナちゃんを助けてくださりありがとうございます。」


 「いえいえ……こちらこそ彼女のお陰で事が出来たので……はい。」


 「そうか……それはよかった。」


 「はい……」


 尚徳は詳しくは聞かなかったが花井がヒナに大きく感謝していることを理解していたようである。そして尚徳に対して花井は言う。


 「そういえば昨日は猫屋敷さんの実家の話を聞かせて頂いたので今回は私の実家の話をします。」


 「聞かせてくれないか。」


 興味津々に聞こうとする尚徳に花井は楽しく話をしたのである。


 「以前、ヒナさんの仲間の方と僕の遠縁の兄弟が“コドニード”で対面したようでして……私の父祖はそのコドニードを作った“京野橋きょうのばし”家の支流である“浜田京はまだきょう”家でして母方は日尻ひじり家です。そして……」


 「そして?」


 「僕の父方祖父とヒナちゃんを支えてくれた再従弟はとこの母方祖母が兄妹だったんです。」


 「ほぉ……」


 「それでそのの母方祖母が“なか”氏の出身です。」


 「中……?それって私の実家の分家か?」


 「そうです。猫屋敷さんの家系です。」


 「それは偶然だ……だからあのときは運命だったのか……」


 「かもしれませんね……彼女(高祖母)はある日突然こちらの世界に移り、戸惑っていた時に我々の高祖父である周参見野家の男性に助けられました。周参見野家は1870年春に同家の始祖である男性(高祖父)の直系先祖の方が同家本拠地となるスーザックの村を興してスーザックの村民から感謝されて支持を受けました。高祖母はスーザックに迷って入ってきたみたいで……それでです。」


 「ヒナちゃんみたいに突然異世界に来てましたみたいなケースか……」


 「そうですね。だから再従弟もまで彼女に気にかけていたかもしれません。それとからヒナちゃんの親族に渡してほしいと頼まれた重要な手紙がありまして……」


 花井は服の胸ポケット(なぜか服には“歩家っと”の文字がプリントされている)から封筒を取り出して尚徳に渡したのである。尚徳は封を開けて手紙を読むと少し何かが気になるよう表情を見せたが笑みを浮かべたのである。


 「ありがとう。この問題が解決したらヒナちゃんに伝えておくよ。あたりかな?楽しみにしているよ……」


 「……色々と……」


 「気になさらずに……」


 何かに謝る花井に尚徳は気をつかわせないように言ったのであった。二人はこの10月10日にヒナを助けに行くことは出来ないようだが行けないからこそ二人ともヒナを心配し……特に尚徳は彼女を誰よりも心配していたのである。
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