ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第15章・古座川町編

巨壁

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 その頃、ヒロはヒナに対してあることを言ったのである。


 「景色を見てみるか?」


 「(そういえば何日も外の景色を見てないわね……)ええ、是非とも。」


 ヒナは見たいと希望した。するとヒロはヒナと手を繋いで通り抜けの能力を使って壁を越えるとベランダのある部屋があった。そしてベランダを開けると不思議な光景がヒナの目に映ったのである。


 「うわぁ……辺り一面“団地”ばかりだわ……!!」


 「君の世界ではこういう住宅は“団地”と言うんだね。ここはこのような住宅がたくさん並ぶ場所さ。」


 周りには団地がたくさんあった。恐らく30棟とかでは済まないほどたくさんの棟がある。そしてヒナがベランダの東の方を向くとうっすらと見えたが天をつくような巨大な岩壁のようなものがあった。


 「あの岩壁は……」


 「あれは“クレーター”を囲う岩壁だ。岩壁のふもとをよく見てみると街らしきものが見えるだろ?あの街から岩壁を登ってクレーターへ行くんだけど行けた人はいないと聞く。」


 「あそこが最後の地……」


 謎の団地の集合地帯にクレーターを囲う大きな岩壁。ヒナは見たことない世界を見て少しいつもと違う気持ちがあった。


 「(こんな世界があったのね……私の知らない世界は不思議がいっぱいだわ……)」


 ヒナは今まで知らなかった世界を見て自分の中の世界がひっくり返ったかのような気持ちになったのである。


 「世の中広いわね…………」


 「ああ、世界は広い。この世界は常に不思議でいっぱいだ。」


 「しかもあの岩壁を見ていると懐かしい気持ちになるわ……」


 「君はそう感じたか。やはり君の先祖の誰かがあの岩壁の向こうからやって来たんだろうな。」


 ヒナは先祖の遠い記憶からか懐かしくも感じたのである。だがある疑問もあったのだ。


 「でも岩壁の向こうからこっちの場所にやって来たらどうやって向こうへ帰るのですか?何か独特な方法があるとか?」


 「いいところに気付いたな。いいだろう、教えよう。向こう側で製作されているという噂がある“飛行羽根”というのがあってあちらから来た人はそれでらしい。だが家出や故郷を捨てて旅立つなどで何も持たずにこちらへとやって来た者もいたらしいとか。あくまで噂だが……が我々の祖先となっているとも聞く。」


 「そのまま帰らない……」


 「ああ。きっと岩壁の麓の村もそういった者達が切り開いたのだろう。神秘な物語さ……」


 「私達の知らない文明というのがあの岩壁の向こうにあると思うと不思議ですね。」


 「ああ、しかも向こうには“マナ”という不思議な回復術を使える一族がいるという。」


 「マナ?それは能力者リミッター?」


 「違うな、それは向こうの文明だからこそ取得できる能力だろうな。恐らくその一族の誰かが普通に生きる人でも使えるようその力を能力として使えるよう“能力バッジ”(※1)に秘めさせたのだろう。能力は生み出せるものだからな……」


 (※1……このバッジに“気”を込めることで能力者リミッターの死後、バッジを装着した者は故人の能力を取得できる。将志の母の能力をこの方法でリンは取得できたのだ。)


 「だから“マナ使い”の方も現れるわけですね……ですがその能力を持つ方は……?」


 「隣にいるよ。話もしたけど『ライラック』という子。」


 「えー!?」


 「話を聞いたら母親から受け継いだ能力らしいとさ。また後で部屋に行くから一緒に行くか?」


 「ええ、是非とも。」


 ライラックと会うことを決意したヒナ。常に学びと出会いを経験し、彼女の世界観も常に変わるのであった。
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