ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第15章・古座川町編

松原での目的②

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 黒岡宅で少しくつろぐヒナは二人で会話するのであった。基本は雑談などではあったが話をしていると高校時代の付き合いの影響か気が合うのか時間が経つのが早かったのである。


 「はははは……楽しいなあ、猫屋敷。君と会話していると時間を忘れるよ。」


 「ええ、私も楽しいわ。久しぶりにこうやって話をしていると時間があっという間に進むわね。」


 会話を楽しむ二人だが、黒岡の懐にはボイスレコーダーが隠されていたのである。


 「あ、君はこの辺の出身?」


 「私は和歌山の生まれだよ。確か到摩君はここの地元だったのね。」


 「ああ、ずっと松原で生まれて松原で育ったからね。この辺のことはかなり詳しいよ。またこっちに来たときは道案内してあげるよ……だけどね……」


 「?」


 黒岡の最後の言葉が少し気になったヒナである。そして黒岡はズボンの右ポケットから何らかの紙を取り出したのである。その紙をヒナに渡したのである。


 「君に渡したかったんだ。これだよ……読んで見るといい……」


 「ありがとう到摩君……どれどれ……?」


 『うら六国ろっこくの時代に東南の朝廷が現れた。これを機に国には二つの朝廷が生まれたのである。』


 『古代文書“某年記ぼうねんき”によるとある時代に車らしきものが降りてきたという。時期は浦氏の当主が置西ちせいの頃である。その車には二人の女性が乗っていたのである。』


 1枚の紙に謎が二つも記されていたのである。だがもちろん意味不明である。


 「(浦置西って誰かしら……?)」


 とりあえずヒナは松浦の元にメモ用紙を送るとある疑問が脳裏に浮かんだのである。


 「(それよりこの記録は誰が書いているのかしら?)」


 ヒナの言う通り、この記録はどこから出てきて誰が記しているのか……謎ばかりが深まる。


 「(一体何の記録かしら……?)」



 その頃、松浦はサトキの元に居たのである。そして二人で会話をしていたのだ。


 「サトッちゃん、あの『黒竜社こくりゅうしゃ』の『黒雲商事こくうんしょうじ』の件だけど……」


 「実は官僚の情報を掴んだんだよ、まっちゃん。官僚の中でナンバー2の福軌ふくき烈也れつやを始め、トップの日紙ひかみ直銅ちょくどうは知っているだろうが……実は幹部の一人に大東だいとうが居るらしいんだ。」


 「大東……?あいつが幹部!?」


 「ああ、そしてな……おっと、ヒナちゃんからまた何かのメモが届いているな。」


 松浦がメモを確認するとヒナにメール機能と思われるもので届いたことを報告したのである。ヒナの携帯電話(竜太からもらったやつ)の画面にメッセージが表示されたのである。


 『ヒナちゃん、ありがとう!!サトッちゃんに渡しておくからな。』


 メッセージを見て微笑むヒナだったが突然背後から送迎をした男性がハンマーで殴り、ヒナを気絶させたのである。


 「桃さん……ナイッス!!」


 「黒ちゃん、よく引っ張ってくれた!!あとは“黒雲商事の幹部”であるこの僕……樫木かしき桃太郎ももたろうに任せてくれよな…………」




 …………黒岡くろおか到摩とうま

 ●1988年生まれ

 ●大阪府松原市出身

 ●趣味はカーレース、ボート、歴史の勉強。



 …………樫木かしき桃太郎ももたろう

 ●旧姓和戸わと

 ●(異世界)セレカムミニオン渓谷出身

 ●黒雲商事・官僚の一人

 ●家族構成不明

 ●趣味はワンダーフォーゲル、旅行、テレビゲーム



 倒れているヒナを見て笑いが止まらない二人。そして桃太郎はニヤリと不気味な笑いを見せて言ったのである。


 「せっかくだからこの女を殺さないでちょっと遊んでみようか。」


 「良いねえ~!!」


 二人の魔の手がヒナに伸びる頃、松浦はサトキのオフィスでパソコンを見ていたのである。するとサトキに真剣な表情で話しかけたのである。


 「以前、洪水を起こした機械だけどこの世界から無くなっているみたいだ。どうやら福軌の野郎は異世界を彷徨うろついているみたいだな。しかも異世界からの通信を受けたんだけどある世界は大洪水で世界が水に沈んでいるらしい。」


 「何だと……!?あの野郎、ここを水浸しにするのに失敗したにも関わらずまだ懲りないで他の世界を沈めているのか……必ず居場所を暴いて倒さねばならんな!!」


 「サトッちゃん、電話だ……もしもし稲田いなださんですか?僕です松浦です。え……何だって!?」


 「どうしたの、まっちゃん!?」


 「サトッちゃん……異世界だけじゃないようだ………………!!」


 とある連絡を受け、顔が青ざめる松浦であった。その頃、尚徳は少し曇りがちな空を見て呟いたのである。


 「(ヒナちゃん……心配だな……)」


 その尚徳の不安は現実と化しそうになっていたのである。
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