ヒナの国造り

第１４章・日常へ戻る時

「てめえら、出しゃばってんじゃねえよ。」

皇帝の優しさが会議室内に伝わっていた頃、例の“ある人物”に呼び出された男性がいた。

男性がある人物の元へ行くと、その“ある人物”は社長室の大きな椅子に座って男性に背を向けて話を始めたのである。

「お疲れ様です。」

「ああ、お疲れだ。」

「本日も特にこれといった情報や目玉人物は無しでした。」

「最近のこんな世の中を見ていても誰にも期待しちゃあいないよ。この世界の人間などどいつもこいつもダメだ。」

「はぁ……」

「まあ、私を唸らせる人材が出てくるなぞ既に期待などしていないからな……そんな程度だから誰も『クレーター』に到達など出来ぬのだ。」

「そうでしょうね。結局実力がなければ『クレーター』など夢のまた夢ですね。」

すると“ある人物”は男性に対して怒り口調で話し始めたのである。

「君はあれか？私の部屋に訪れて名前も言わずに会話をするとは大物のつもりか？」

「え……いえ、そういうつもりはございません。少し緊張していて忘れていました……」

急に慌て始めた男性にさらに“ある人物”は問い詰めたのだ。

「ならば名前を今言うのが適切ではないのか？」

「申し訳ございませんでした。私は『馬二羽ユニコン(うまにわ・ゆにこん)』と申します。」

「馬二羽……君か……」

「はい。」

急に笑顔で返事した馬二羽であったが“ある人物”の口調はさらに厳しくなったのである。

「君は反省の顔色は見えないようだな。仮にも我々の組織のナンバー５をつとめているのにどういう姿勢をしているのだ？君を見ていると本当に世の中が正常でないというのがよく分かる……」

「申し訳ございませんでした……」

「謝れば警察は要らないんだよ。確か君の仲間も『幹部８(かんぶエイト)』の一人だろう。彼も態度が少しあれだった。昔の私ならこう言っただろうな。」

「……？」

「そうだな……“少し持ち上げられたからってすぐに天狗になりやがって……てめえら、出しゃばってんじゃねえよ。身の程弁えろ！！”とな……馬二羽君。」

「…………」

「まあ、誰に対しても期待はしてないが次の任務も頑張りたまえ。解散後にアディーマのホテルで集合するようなので遅れないように行きなさい。」

「はい……分かりました。申し訳ございませんでした…………」

男性はうつむきながら“ある人物”の部屋を後にした。“ある人物”が元から馬二羽を注意するために呼んだのか、来た際の態度が悪いために注意したのかは不明である。


一方、アディーマでは皇帝が会議のはじまりを宣言した。

「それでは始めます。」

一同は緊迫した表情をしながら短い時間の会議は始まったのである。