ヒナの国造り

第１４章・日常へ戻る時

早すぎる冬

少し様子のおかしい日輪は霧島に何かを言った。

「もうすぐ雪が降るぞ。お前の力で美しい世界を作るぞ！」

「は……はい！」

日輪は取り出した木の実に何かを念じるとその木の実を空中に投げ飛ばすと粉砕したのである。そして空は曇って雪が降り、美しいギターの音色とともに雪はサッキーノに積もりつつあった。

「これが“雪降りの実”だ……」

そう日輪は呟いた。


一方、アディーマの温泉でヒナ達はスクラッチタイガーと相対したのである。

「あんた達はさっきまで敵だったのではないのか！？」

「今は和解したの！口を出さないで！」

ヒナはスクラッチタイガーに対して口調を荒くして反論した。しかし逆にスクラッチタイガーの逆鱗に触れたのである。

「ねえ……あんた達が私に喧嘩を売っているのは分かったわ……風呂に出たらそこの女！！あんた、私と戦いなさい！！」

「ええ、戦いましょう！！」

ヒナはスクラッチタイガーの宣戦布告を受け入れたのである。せっかくの温泉ムードが台無しである。風呂を出た一行はホテルの入口に集まり、ヒナとスクラッチタイガーとの戦いを見守る。

「さあ……いくわよ！！」

「臨むところよ……！！」

スクラッチタイガーの言葉にヒナは覚悟を決めて戦う。そしてスクラッチタイガーは剣を取り出して横から斬りかかってきたのである。

「いくわよ……“一四王の憂い(いっしおうのうれい)”！！」

ヒナは間一髪避けるとスクラッチタイガーは舌打ちをしたのである。

「あぶな～」

「チッ！」

驚く表情のヒナに苛立ちを見せるスクラッチタイガー。するとスクラッチタイガーは今度は剣を下に構えて下から上に斬りかかる技を見せた。

「このぉ！！必殺“三志の涙(さんしのなみだ)”っ！！」

この技も避けたヒナであった。するとヒナは剣を構えて剣の先に氷結のオーラを集めたのである。

「いくわよっ！！“氷結斬り(アイス・ブレーダー)”！！」

ヒナの新必殺技である。避けたスクラッチタイガーだが剣に漂う氷結が身体に当たったのか身体が凍りついてきたのだ。

「な……何よこの技！？」

「この技はたとえ避けても剣を覆う氷結に触れると凍ってしまうのよ。」

「そこまでっ！！」

ルミが叫ぶと勝負は終了した。しかしスクラッチタイガーは完全に全身が冷凍してしまったのである。すると竜太はやかんに入ったお湯を持ってきたのである。

「湯入れ(ゆいれ/やかんのこと)にお湯を入れてるぞ。」

どうやら一部始終を見ていたらしく用意してもらっていたようだ。

「ヒナちゃん、いい新技だな……」

「ありがとう！！」

するとヒナの左の頬に冷たい感触がしたのである。ヒナが頬をさわると冷たい白いものが落ちていた。

「雪……？」

すると将志がリンと一緒に携帯電話を持ちながらヒナ達の元にやって来たのである。

「ヒナ姉ちゃん！！“サッキーノ”の辺りを中心に各地大雪だとニュース速報があったよ！！」

「え！？」

すると雪は少しずつ量が増え、積もりそうな勢いである。夏の近い時期に関わらずの雪であった……