ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第12章・ヒナの国造り

リラの自滅③

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リラは老夫婦への感謝の思いを出すと、ヒナは彼女に話しかけたのである。

「あなたが本当に憎いのは……誰?」

「許せないのは…………W様……いや、W……」

するとある怒りの声が二人のいる場所に響くのであった。

「誰が……許せないのだ……?真藤寺リラよ……」

「!?」

「こ……この声は……W様!!?」

二人が声のする方を向くとなんとWがいたのである。Wの表情はかなり憤りを覚えているのか目がひきつっていたのであった。

「お前……誰が許せないのか言ってみろ……」

「いえ、この子(ヒナ)ですよ。この子が私を洗脳しようとして……」

「(それでいいわ……リラさん。私ならWさんを倒す力はあるから……)」

しかしWは懐から取り出した槍でリラの左肩の下を刺したのである。

「リラさんっ!!?」

「お前……嘘をつくんじゃない……お前は以前から私に対する敬意があまりなかった……ごまかしても無駄だ……」

「ヒナさん、私は……助けてくれた老夫婦の仇を討ちたくて本当はWの手下になったの……だがいつの間にか彼に洗脳されてしまったの……老夫婦の死を仕方ないと思うようになってしまい、人の心すら既に失ってしまったわ……」

「リラさん……」

「でもあなたと戦うことで心を取り戻したわ……これで良かったわ……」

「くそ……お前は立派な部下だと信じていたが芯からは私に魂を売っていなかったとは……残念だ……」

「いいえ……私はあなたに魂を売っていたわ。私は人間らしき感情を失っていたわ……」

リラは出血が酷かったが、痛みをこらえて本当の気持ちを語ったのである。

「必ず……心を取り戻したいと言う本当の気持ちは忘れていなかった……だからあなたに出会えてそれを取り戻した。私は幸せよ……」

そう言うと槍を抜いてリラは起き上がったのである。そしてリラにあるものを渡したのである。

「これは……?」

「これは私の能力の力を収めたバッジよ。私が死んだらこのバッジを最初につけた人が私の“気”の能力を受け継ぐことができるわ。力を収めるのは簡単なことじゃないけど受け継いでほしい存在がいるから……」

「受け継いでほしい存在……?」

「私の息子よ……“あの子が何も能力が無ければ”渡してほしいの。能力があるとバッジの力を継承できないからね……」

なんとこのバッジを将志に渡してほしいというのだ。Wは二人のやり取りを見ながら何も口出しをしなかったのである。

「分かったわ……将志君に渡すわ。」

「ありがとう……私があなたに頼めるのはそれだけよ……」

「でもなぜ今?死ぬほどの大怪我なの……?」

「急所を外しているから致命傷ではないわ……ただ『自分の罪は自分で“けじめ”をつけたい』のよ……」

その言葉を聞いたWはその場から消え去ったのである。ヒナはリラから預かったバッジを懐にしまったのだった。
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