ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第9章・世界の歪み

竜太、ついに起つ!!

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ヒナ達が新しい監視に目をつけられていた頃、竜太は胸騒ぎがしたようで洋明に訴えたのである。

「はよお、上の世界に戻らないとあかん!!」

「突然どうしたんだ?」

「俺を待ってくれている人が苦しんでいるんです!!助けに行ったらなあかんのですわ!!」

「しかし、どうやって帰るんだ?」

「分からないです……だけど待っていてもダメなんです……」

竜太は上の世界に戻りたいと強く訴えた。しかし上の世界への戻り方は誰も知らないのが現状。だがこのまま老夫婦や二人にお世話になるわけにもいかない。竜太は悩んでいた。

「もし助けたらんと二人がどんな目に遭うか分からないです…………このままじゃ……だ、だ、だ、ダメなんですわ!!」

いつにも増して訛りが止まらない竜太は本気で訴えていた。洋明は考えた上でこう言ったのである。

「俺らでどうすることはできない。だからこそお務めをするのだ。」

この言葉を聞いた竜太は胸に言葉が突き刺さるようだった。しゃがみこんで顔を下げてしまった竜太は口だけで何も動いていない自分を恥じた。

「口では良いことを言って、行動は人々を裏切る人間がいる。そんな人間になりたくないと思ったが……自分がまさにそうだった……許せない……」

「自分を憎むな。だからこそ後ろを見つめるのではなく前を向いて明るく行こう!!」

それを聞いた竜太は顔を上げると真剣な表情と化していた。助けたい人を助けたい気持ちが強くなる時、人はいつも以上の力を発揮するのだ。しかし上に上がるのはヒナの世界でいうロッククライミングのプロでも無理なため、毎日の家業の手伝いとお務めの合間を縫っては登り口らしきものを探すことにしたのであった。しかしなかなかそれは見つからないのが現状である。

「あ、誰かいる。」

竜太はある男性を見かけたので声をかけた。

「突然に申し訳ございません!!はじめまして、東住吉竜太といいます。」

「おぉ!はじめまして。私は青柳ペトリック(あおやぎ・ぺとりっく)と言う。どうしたのかな?」

男性は竜太より年上で紳士的な雰囲気の男性であった。隣に友人が二人おり、桑原カックル(くわはら・かっくる)と得側隼人(えがわ・はやと)というのだ。

「突然どうしたのかな?」

「上の世界に戻りたいんです…………」

「上の世界に……?それは大変。落ちてこの世界にやってきたんだね。」

青柳は竜太に優しく話しかけるが故に竜太も心を開いた。そして上に帰りたいという話をすると青柳はいう。

「それなら難しいけどいい方法があるよ。」

竜太はその言葉に驚いた。そして竜太と青柳のやり取りを陰から見ている二人がいたのである。それは…………
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