ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第9章・世界の歪み

竜太に死が迫る⑤

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ヒナと梅原達は竜太の元に到着すると数人が竜太の元に来ていたのである。どうやら古くからの竜太の知人である。


集まったのは以下の8人。

●公島新一(きみしま・しんいち)
●様田哲人(さまた・てつと)
●大谷寛鐵(おおたに・かんてつ)
●古田婪透(ふるた・らんすけ)
●石井蓬莱(いしい・ほうらい)
●番粉毅(ばんこ・たけし)
●家値荷広貞(かちに・ひろさだ)
●卯礼安雅咲(うれあ・まささく)

彼らはいずれも怪我した情報を聞き付けて慌ててやってきたという。古い親交があるだけに仕事を休んできたり、遠方からやってきたりしている人がいた。

「竜太に死なないでほしいという気持ちでいっぱいです。」

一人一人表情が強張っている。しかしヒナは来ていた皆を見ていると二人だけ少し冷静な顔つきをしていたのである。番粉と家値荷であった。

「(なんで冷静な顔でいれるのかな?)」

少しヒナは疑問に感じていたが、たぶん気持ちを抑えているのだろうなと考えていたので深くは気にしなかったのであった。だが、ヒナの疑問は後に…………

「では治療開始します。」

梅原は治療を開始したのである。目を鋭くして竜太の身体にメスを入れる。梅原は元々医療会の関係者であったが、独立してから本格的に医療技術を学んだのである。

「彼を必ず死なせません。助けて見せます。」

梅原は呟くとさらにメスを入れて必ず竜太を回復させようと恐ろしく集中力を高めたのである。

「…………助からないでしょう…………」

石井が呟いた。彼は竜太と同じ地区の生まれで古い親友であった。現在はヒナの世界でいうコンサルタント業をグリンフォートで勤めている。そんな彼が呟くのだから相当な傷であることが伺える。

「それを治してきたのが私です!!」

梅原は語気を強めた。弱音を吐くのが嫌いな梅原は石井に怒りを見せたが、すぐに優しい言葉を出した。

「昔からの友達を失わせたくありませんから。」

石井はそれを聞いて少し涙を流した。助かってほしい気持ちは8人の中で誰よりも強い彼だからこそ弱音がつい出てしまったのかもしれない。だが梅原は助けることに視線をおいている、本気だ。

「私も患者さんをその方のお友達やご家族の前で助けられなかったことがありました。そして私も両親を自分の目の前で失いました。医療の道を目指したのはその時からです。」

梅原は自分の過去を明かした。自分も辛い思いをしてきたからこそ言えた言葉である。そしてヒナと石井が竜太の様子を見ると彼の顔に生きる気力のようなものが見えてきたのである。

「彼は今、戦っています。生きるか死ぬかの危機と戦っています。だから僕も戦います。皆さんも戦っていきましょう。必ず勝ちます、私たちは!!」

その言葉を聞き、ヒナと竜太の知人達は頷いた。ただ一人だけ舌打ちをしたのだが、それは誰か分からず、その舌打ち自体誰も気づく者はいなかった。

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