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第9章・世界の歪み
竜太に死が迫る④
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翌朝、回復の気配が一向に見えない中でサトキオフィスに電話がなり、ヒナが応対したのであった。
「もしもし……!!」
「もしもし、こちらは医療会と申します。今日の東住吉竜太さんの状況から余命はもはや短いということをお知らせしに連絡させていただきました。」
「…………もう治らないのでしょうか!?」
「残念ですが……東住吉さんの怪我があまりにも大きく、さらに一部の器官にまで傷がつけられていまして……」
予想以上に負傷がひどく、致命的な傷に等しいものであった。もはや治ることは出来ないという最終通告であったのだ。
「傷があまりにも深く、恐らく怨恨的なものを感じさせます。強固たる殺意が伺えます……」
襲った人間の感情を伺わせるその傷痕によって竜太の死はほぼ確実になっていた。
「むしろ襲われてからこうやって数日間も生きていたのが奇跡ですよ。ですがそれももはや数日以内……よく頑張ってきたと思います。」
ヒナは竜太の近況を聞き、涙を流した。もう元気な竜太に出会えなくなるであろうこの時、彼との短い間の思い出が蘇ってきたのである。
「まだ一緒に活動したかったのにね……」
実は昨日、社会奉仕の功績を認められてヒナの世界でいう不起訴が決定していたのである。それにも関わらず本人は目を覚ましていないのである……
「せっかく赦されたのにね……」
ヒナは涙を拭いながら免罪証書(社会奉仕のノルマが達成された際に渡される証書)を抱いていたのであった。するとオフィスの扉を叩く音がするので扉を開けると涼子が来ており、隣には背広姿の若そうな男性がいた。
「こんにちは、猫屋敷さん。」
「涼子さん、こんにちは。」
「今日はまだ武器は出来てないけど竜太さんの状況もあってある人に治療を抱くすることにしました。」
「はじめまして、私が梅原業幸(うめはら・わざゆき)といいます。涼子さんとは僕の母と彼女の父が兄弟でして従妹にあたります。今日は涼子さんの知り合いの方が重体と聞き、やって来ました。」
「…………!?」
「梅原さんは治療不可能と呼ばれた怪我や病気を治せる実力のある方で特殊技と長年培ってきた医療技術を駆使して数えきれないほどの患者さんを治されてきた方です。」
「私をすぐに信用しなくても構いません。ですが“必ず”猫屋敷さんの大切な人を治してみせます!!信任お願いします!!」
頭を下げる梅原にヒナは一瞬戸惑ったのである。治せない怪我を治せるという部分が矛盾のような気がしたりとしたが、治せる人は確かにいないのならば……と最終チャンスと捉えてヒナは梅原に言う。
「よろしくお願いします!」
「ありがとうございます!私、梅原が責任を持って全力で取り組ませてもらいます!!」
梅原の目付きは真剣だった。命を落とす危機の竜太をヒナは彼の言葉を聞いて任せることにしたのである。梅原はドーリンでミニ病院の『うめはら治療院』を経営していて地元でも評判であった。
「では彼のいる場所へ向かいますね。」
梅原の言葉を聞いてヒナは彼らと一緒に竜太の元に向かったのであった。今、竜太が助かるかどうかの重要な分岐点である。
「もしもし……!!」
「もしもし、こちらは医療会と申します。今日の東住吉竜太さんの状況から余命はもはや短いということをお知らせしに連絡させていただきました。」
「…………もう治らないのでしょうか!?」
「残念ですが……東住吉さんの怪我があまりにも大きく、さらに一部の器官にまで傷がつけられていまして……」
予想以上に負傷がひどく、致命的な傷に等しいものであった。もはや治ることは出来ないという最終通告であったのだ。
「傷があまりにも深く、恐らく怨恨的なものを感じさせます。強固たる殺意が伺えます……」
襲った人間の感情を伺わせるその傷痕によって竜太の死はほぼ確実になっていた。
「むしろ襲われてからこうやって数日間も生きていたのが奇跡ですよ。ですがそれももはや数日以内……よく頑張ってきたと思います。」
ヒナは竜太の近況を聞き、涙を流した。もう元気な竜太に出会えなくなるであろうこの時、彼との短い間の思い出が蘇ってきたのである。
「まだ一緒に活動したかったのにね……」
実は昨日、社会奉仕の功績を認められてヒナの世界でいう不起訴が決定していたのである。それにも関わらず本人は目を覚ましていないのである……
「せっかく赦されたのにね……」
ヒナは涙を拭いながら免罪証書(社会奉仕のノルマが達成された際に渡される証書)を抱いていたのであった。するとオフィスの扉を叩く音がするので扉を開けると涼子が来ており、隣には背広姿の若そうな男性がいた。
「こんにちは、猫屋敷さん。」
「涼子さん、こんにちは。」
「今日はまだ武器は出来てないけど竜太さんの状況もあってある人に治療を抱くすることにしました。」
「はじめまして、私が梅原業幸(うめはら・わざゆき)といいます。涼子さんとは僕の母と彼女の父が兄弟でして従妹にあたります。今日は涼子さんの知り合いの方が重体と聞き、やって来ました。」
「…………!?」
「梅原さんは治療不可能と呼ばれた怪我や病気を治せる実力のある方で特殊技と長年培ってきた医療技術を駆使して数えきれないほどの患者さんを治されてきた方です。」
「私をすぐに信用しなくても構いません。ですが“必ず”猫屋敷さんの大切な人を治してみせます!!信任お願いします!!」
頭を下げる梅原にヒナは一瞬戸惑ったのである。治せない怪我を治せるという部分が矛盾のような気がしたりとしたが、治せる人は確かにいないのならば……と最終チャンスと捉えてヒナは梅原に言う。
「よろしくお願いします!」
「ありがとうございます!私、梅原が責任を持って全力で取り組ませてもらいます!!」
梅原の目付きは真剣だった。命を落とす危機の竜太をヒナは彼の言葉を聞いて任せることにしたのである。梅原はドーリンでミニ病院の『うめはら治療院』を経営していて地元でも評判であった。
「では彼のいる場所へ向かいますね。」
梅原の言葉を聞いてヒナは彼らと一緒に竜太の元に向かったのであった。今、竜太が助かるかどうかの重要な分岐点である。
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