181 / 762
第9章・世界の歪み
竜太に死が迫る①
しおりを挟む
アラドマウンテンの山道の途中の山小屋でヒナと松浦が出会ったのは意識がなく、傷だらけで倒れていた竜太であった。さすっても耳元で大声を出しても彼は目を覚ます気配を見せなかったのである。
「竜太さん、竜太さん、起きて…………竜太さんっっ!!!」
涙の止まらないヒナは必死で目を覚まさせようと竜太を起こし続けるも一向に動く気配すら見せない。
「ヒナちゃん、この怪我を見て分かったことだけど刃物か何かで切られている部分が4人の身体にあった。恐らく怪物とかじゃなくて人間の……しかも傷の様子から見て竜太さんに深い恨みがある者が3人を巻き添えにして竜太さんを襲った感じだよ。」
「竜太さん……何で……」
「過去に事件を起こしているからかなり恨まれていたのが分かる……しかも今携帯からネットの板(掲示板か)を見たら『悪いことしたから殺されて当然』とか『仲間揃って粛清されてやんの』とか竜太さんを心配しない声も多い。ただ、もしかしたら“彼と関係ない事件だけど彼を犯人に一応仕立てて復讐した”という可能性も否定できないな。」
「それだけ恨まれて嫌われて生きてきたのですね……可哀想ですね。」
「俺も犯罪者に同情するクチじゃないがこの人は生い立ちなどから普通のやつ(犯罪者)とは何か違うなとは思っていた。」
「私もそう思う……最初にビンタした時は竜太さんから見て“新しい敵”だという恐怖心があったかもしれません……」
「今だから言うね。ヒナちゃんとあったあの日の夜、面会にいくとね……『突然俺をしばいてきた女がいた。この世はどいつもこいつも敵だらけや!!もう世の中は腐ってやがるわっ!!』と言ってたよ。竜太さんの警戒心はとても強かったと思う。」
「(…………!!そういえば雪ちゃんだけは初対面で竜太さんを怖がらずに受け入れていたような気がする……だから雪ちゃんに会えてからあれだけ性格が変わったのかもしれないわ……)」
「竜太さんは護るものを持つようになったから今のような性格に変化したんだと思うよ。」
ヒナはここで確信した。雪が竜太を警戒しなかったことを彼は感慨深い気持ちで受け止めてそんな彼女と仲間であるヒナ達を護りたいという気持ちに駆り立てたのだと……そして意識を失っている竜太に寄り添うと目の前が真っ黒になったのである。
ヒナが目を覚ますとビルの管理室のようにたくさんのモニターが写っていたのである。すると一つ一つのモニターに映像が流れはじめたのである。
暗い顔をしながら街中を歩く竜太に対し、街の人々が辛い言葉を浴びせていた。
『やーだ、犯罪者だわ。』
『性格悪そうな顔をしているな。』
小さな女の子が竜太に手を振っているのを彼が気づいて手を振ろうとしたら女の子の母親が彼女の手を引っ張ったのである。
『犯罪者とは関わってはいけません!!』
一瞬うっすらと笑みを浮かべていた竜太はまた暗い顔に戻り、静かに街を歩きつづけたのであった。
別のモニターには飲食店に行こうとした彼の姿がうつる。
『すみません、まだ店は開いてますか?』
おとなしそうな竜太が地元のレストランに入るといかつい表情の店長が現れて竜太に怒鳴り付けたのである。
『いつもなら『開いてる』と言いたいところだが、お前は犯罪をおかしている!!お前、さっさと帰れ!!』
そう言われて他の店を探しに行くもきつい言葉を浴びせられたのである。
『あんたに食べさせる料理はないよ!!』
『この街から消え失せろ犯罪者!!』
『アホ、ボケッ!!』
どこの飲食店も商売人とは思えない暴言を浴びせてきては店に入れてもくれない。すると竜太は空腹で倒れたのである。飲食店のやり取りのモニターが一旦暗くなると少年時代の竜太が無の黒い空間の中にいたのである。
『あ……お父さん……』
彼の目の前には男性がいたのだ。しかし男性は彼の方を一瞬振り向いただけでどこかへ歩みを進めていったのである。
『お父さん!!お父さん!!』
竜太は父を追いかけるも見失い、その場でしゃがみこんで泣いていた。それを見ていたヒナも涙が溢れてきた。そして町中で倒れてから早く意識を取り戻した竜太の目の前には温かいスープを持ってきてくれていた女性がいたのである。そこでモニターの映像は停止した。
ヒナが目を覚ますと松浦は4人のうちの一人の加計川に声をかけていたのである。どうやら加計川は意識を回復したようである。そこから竜太に何があったか聞こうということである。
「竜太さん、竜太さん、起きて…………竜太さんっっ!!!」
涙の止まらないヒナは必死で目を覚まさせようと竜太を起こし続けるも一向に動く気配すら見せない。
「ヒナちゃん、この怪我を見て分かったことだけど刃物か何かで切られている部分が4人の身体にあった。恐らく怪物とかじゃなくて人間の……しかも傷の様子から見て竜太さんに深い恨みがある者が3人を巻き添えにして竜太さんを襲った感じだよ。」
「竜太さん……何で……」
「過去に事件を起こしているからかなり恨まれていたのが分かる……しかも今携帯からネットの板(掲示板か)を見たら『悪いことしたから殺されて当然』とか『仲間揃って粛清されてやんの』とか竜太さんを心配しない声も多い。ただ、もしかしたら“彼と関係ない事件だけど彼を犯人に一応仕立てて復讐した”という可能性も否定できないな。」
「それだけ恨まれて嫌われて生きてきたのですね……可哀想ですね。」
「俺も犯罪者に同情するクチじゃないがこの人は生い立ちなどから普通のやつ(犯罪者)とは何か違うなとは思っていた。」
「私もそう思う……最初にビンタした時は竜太さんから見て“新しい敵”だという恐怖心があったかもしれません……」
「今だから言うね。ヒナちゃんとあったあの日の夜、面会にいくとね……『突然俺をしばいてきた女がいた。この世はどいつもこいつも敵だらけや!!もう世の中は腐ってやがるわっ!!』と言ってたよ。竜太さんの警戒心はとても強かったと思う。」
「(…………!!そういえば雪ちゃんだけは初対面で竜太さんを怖がらずに受け入れていたような気がする……だから雪ちゃんに会えてからあれだけ性格が変わったのかもしれないわ……)」
「竜太さんは護るものを持つようになったから今のような性格に変化したんだと思うよ。」
ヒナはここで確信した。雪が竜太を警戒しなかったことを彼は感慨深い気持ちで受け止めてそんな彼女と仲間であるヒナ達を護りたいという気持ちに駆り立てたのだと……そして意識を失っている竜太に寄り添うと目の前が真っ黒になったのである。
ヒナが目を覚ますとビルの管理室のようにたくさんのモニターが写っていたのである。すると一つ一つのモニターに映像が流れはじめたのである。
暗い顔をしながら街中を歩く竜太に対し、街の人々が辛い言葉を浴びせていた。
『やーだ、犯罪者だわ。』
『性格悪そうな顔をしているな。』
小さな女の子が竜太に手を振っているのを彼が気づいて手を振ろうとしたら女の子の母親が彼女の手を引っ張ったのである。
『犯罪者とは関わってはいけません!!』
一瞬うっすらと笑みを浮かべていた竜太はまた暗い顔に戻り、静かに街を歩きつづけたのであった。
別のモニターには飲食店に行こうとした彼の姿がうつる。
『すみません、まだ店は開いてますか?』
おとなしそうな竜太が地元のレストランに入るといかつい表情の店長が現れて竜太に怒鳴り付けたのである。
『いつもなら『開いてる』と言いたいところだが、お前は犯罪をおかしている!!お前、さっさと帰れ!!』
そう言われて他の店を探しに行くもきつい言葉を浴びせられたのである。
『あんたに食べさせる料理はないよ!!』
『この街から消え失せろ犯罪者!!』
『アホ、ボケッ!!』
どこの飲食店も商売人とは思えない暴言を浴びせてきては店に入れてもくれない。すると竜太は空腹で倒れたのである。飲食店のやり取りのモニターが一旦暗くなると少年時代の竜太が無の黒い空間の中にいたのである。
『あ……お父さん……』
彼の目の前には男性がいたのだ。しかし男性は彼の方を一瞬振り向いただけでどこかへ歩みを進めていったのである。
『お父さん!!お父さん!!』
竜太は父を追いかけるも見失い、その場でしゃがみこんで泣いていた。それを見ていたヒナも涙が溢れてきた。そして町中で倒れてから早く意識を取り戻した竜太の目の前には温かいスープを持ってきてくれていた女性がいたのである。そこでモニターの映像は停止した。
ヒナが目を覚ますと松浦は4人のうちの一人の加計川に声をかけていたのである。どうやら加計川は意識を回復したようである。そこから竜太に何があったか聞こうということである。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる