ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第7章・Enemy search(敵探し)

売れない作家③

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しかし威摯川は続けて言う。

「しかしこの技は数年間まったく発動していません。私が変な妄想をしているからか後ろ向きな姿勢からかは分かりませんが具現化できる世界を描くことすら出来ませんね。」

「この技が使えたら未来も見えるのでは?」

「勿論見えますよ。“実現する世界”ですから。だけど具現化しなくなって能力がもう失効したのかもしれない……」

「失効?能力がなくなるときはあなたの人生が終わるその時です。生きているうちに能力が使えなくなることはまずありません。」

竜太が説明すると威摯川は安堵した。ヒナも彼を励ました。

「今はそういう世界を描けていないだけかもしれません。ですがたくさん書けば書くほど現実となる世界を描けているはずです。」

「なるほど……ありがとうございます。」

威摯川は少し気を良くしたのか二人にジュースを買ったのである。

「ありがとうございます!」

「いいんですか?わざわざありがとうございます……」

「お嬢さん、気を使わないでください。お二人様には僕からのお礼の気持ちです。」

そして威摯川は去ろうとした時、竜太の方を向いたのである。

「竜太さんとは同じ名前で不思議な縁を感じます。またいつか会えるかな?その時は色々なお話をしましょうね!!今日はありがとうございました!!」

「こちらこそありがとうございます。またお会いできると思います。縁というのは不思議なものですから……同じ名前として応援していますから。お気をつけて!」

穏やかな表情で手を振る竜太に優しい笑顔で頷いて前を振り向く威摯川。二人の縁はまたあるだろうか……ヒナも心のなかで二人の再会を願っていた。

「(二人が再会をできますように……!)」

そしてオフィスに帰るとあるお客さんが来ているとサトキは言った。

「あのさ、ちょっと誰かわからないけどお客さんが来ているんだ。」

ヒナは気になり、その客のいる部屋を訪れたのである。

「あ……はじめまして!」

「あ、君……!!?」

「??」

「俺だ、俺のこと覚えてるか?」

「私はこの世界に知り合いはいませんしあなたとは……」

「自分と同じ世界にいたじゃないか!!僕だよ稲田利通(いなだ・としみち)だよ!!登喜岱(ときたい)のグループの仲間で同じ幼稚園にいた……!!」

「…………!!稲田くん!?」

ヒナが驚いた顔をすると笑顔だった稲田の顔はさらに笑顔で輝いていた。どうやら稲田はこの世界で仕事をしているらしく別のルートでこちらへと来たらしい。

「君は突然こっちの世界に?おかしいなあ……僕は改札みたいなところからこちらへと来ているからなあ……」

なんと異世界に来るための正規ルートがあるようだ。ヒナはもしかしたら元の世界へ帰れるのではと期待を抱いたのである。
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