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第7章・Enemy search(敵探し)
一流になれなかった男
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竜太は直銅と対峙していたときに脳裏に微かに浮かんだ小さい頃の自分の姿を見た。自分が狂い始める前の姿だった。
「もし親が再婚しなければ俺は情緒を乱すことがなかった……」
彼は6歳の頃は非常に秀才であった。勉強だけでなく美術面でも電車の絵などを上手く描いていて歌も好きだったためにその才能を一部の人が目につけてくれていたのである。孤児院内で人気者だった彼を破滅に追いやろうとしていたのが母親が新しい男性とともに竜太を自らの手で引き取ったからである。
「やだ!みんなと離れたない!!」
「いい加減にしなさい!!」
幼き日の竜太の記憶である。竜太は孤児院を出るのを拒否したのである。しかし母親は男性を連れて彼を孤児院から自分の元に返してもらおうと必死であった。この背景にあるのがその数ヶ月前の母親と男性の夕方の喫茶店でのやり取りである。
「ねえ、竜太達はどうする?」
「あれなら面倒僕が見るよ。」
「ありがとう、男の子には父親が必要だもんね……!!」
「それなら僕の実家に養子として迎えよう。」
「ありがとう、これで私達は向簾(さきみす)家の一員ね!!」
「こちらこそありがとう。でも子供達には伝えないのかい?」
「後で伝えたらいいじゃないの!もう家族だから名前を受け入れてくれるわよ!!家族が一体感になればそれで十分よ!!」
軽い発言を連発する彼女と男性のラブラブなやり取りは夜遅くまで続いたという。勿論竜太はそれを知るはずもなくいつの間にか話は複雑な家庭の形成へ繋がっていったのである。
竜太は直銅に言う。
「もし俺がこんな環境で育たなければ今頃はあんたとも黒竜社とも関わらなかったはずだ。俺は本当に不幸な星の元に生まれたもんやなあ。」
直銅は言う。
「君が不幸だとか知ったことではない。」
ヒナはそれを聞き激怒した。
「あなた、無責任じゃないの!!?なんで人の苦しみを理解しようと出来ないの!!?私も苦しい経験してきたからこそ竜太さんの気持ちが分かるわ!!少なくともあなたのように巨大な力に媚びるような人間にはなりたくないわ!!」
「ヒナちゃん……」
「私があなたのような生き方をしていたら自分で自分が恥ずかしくなるわ!!苦しんできた人を何とも思わず、自分の欲の追求のために誰かを犠牲にしてまでそんなにバックに力をつけたいの!!?」
「君は可愛くない子だね。性格の歪みっぷりは環境が原因かな?」
「社長、今の発言聞き捨てならんわ。人のことを思いやれないとかいうレベルじゃないわな……最悪や。」
「君のようなやつに最悪と言われる筋合いはない。」
「あなた!本当に……!!」
「ヒナちゃん、いいんだ。これがクズになった俺の責任だ……」
ヒナの怒りを竜太自身が制止した。その目は平手打ちを食らわした時の竜太とはまるで別人に感じたヒナであった。
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彼は6歳の頃は非常に秀才であった。勉強だけでなく美術面でも電車の絵などを上手く描いていて歌も好きだったためにその才能を一部の人が目につけてくれていたのである。孤児院内で人気者だった彼を破滅に追いやろうとしていたのが母親が新しい男性とともに竜太を自らの手で引き取ったからである。
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「いい加減にしなさい!!」
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「ねえ、竜太達はどうする?」
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軽い発言を連発する彼女と男性のラブラブなやり取りは夜遅くまで続いたという。勿論竜太はそれを知るはずもなくいつの間にか話は複雑な家庭の形成へ繋がっていったのである。
竜太は直銅に言う。
「もし俺がこんな環境で育たなければ今頃はあんたとも黒竜社とも関わらなかったはずだ。俺は本当に不幸な星の元に生まれたもんやなあ。」
直銅は言う。
「君が不幸だとか知ったことではない。」
ヒナはそれを聞き激怒した。
「あなた、無責任じゃないの!!?なんで人の苦しみを理解しようと出来ないの!!?私も苦しい経験してきたからこそ竜太さんの気持ちが分かるわ!!少なくともあなたのように巨大な力に媚びるような人間にはなりたくないわ!!」
「ヒナちゃん……」
「私があなたのような生き方をしていたら自分で自分が恥ずかしくなるわ!!苦しんできた人を何とも思わず、自分の欲の追求のために誰かを犠牲にしてまでそんなにバックに力をつけたいの!!?」
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「ヒナちゃん、いいんだ。これがクズになった俺の責任だ……」
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