ヒナの国造り

市川 雄一郎

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第4章・ドーリンの洞窟と若さの効用のルーツ

洞窟の中の禁断の成分⑧

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二人はマグマの海を乗り越えると再び線路が敷かれた道を歩いた。ここからは危険というものは何もなく、とにかく歩くだけ歩いた。ヒナは少し疲れていたのか喋ることもなく、直摩も理解していたのか何も喋らずにいた。

「あっ!いい休憩場所だ!!」

直摩が見つけたのは古い駅舎らしき建物であった。しかも自動販売機も置いてあり、飲み物も買えるようだ。ただヒナは自販機を見て違和感を感じたのである。

「あれ?商品が書かれていないわ。」

「ああ、これね。ここに小さなグレー色の画面があるだろう。ここに自販機についている特殊なペンで欲しいジュースの名前を書けば値段が表示されるからお金をいれれば商品がすぐに出てくるよ。ペットボトルがいいなら商品名の横に丸い括弧の中にペットボトルと書けばいいよ。」

新しいタイプの自販機にヒナは少し感動したのである。異世界の不思議というのはまだまだあるのだなと感じただけでなく、普通に生きていたら味わえなかっただろうし触れなかったであろう世界や物事が今触れているのだから彼女は人生を楽しめるようになっていた。彼女はポカリの名前をペットボトルに設定して書くとちゃんと出てきたのだ。二人は駅のベンチに座りながら会話をはじめた。

「ヒナちゃん、あのロープを敷いたマグマの池の場所も元々レールがあったんだよ。」

「でしょうね。そうでなければ線路が洞窟の入り口にまで続かないはずですからね。」

「元々ここは何千年も噴火していない山だったんだ。しかし数年前に噴火してからはこのようにマグマが表面に出てきて本当に危険な洞窟と化してしまったんだ。たぶんあのロープの場所へ来て諦めたひとは多いと思うよ。」

「かもしれませんね。」

「結局は命が大事なんだろうね。ヒナちゃんも冒険好きは構わないけど命の危険も隣り合わせだということを分かっておかなくちゃいけないね。」

「ですね……」

「でもあの勇気は本当に良かった。危険の中で死の恐怖心はあったと思うがこれが冒険というものだ。僕は君にあれ以上の危険はこれ以上経験してほしくないけどね……」

「しかし本当に大きな経験になりました。落ちたらそんなこと言えなかったと思いますが……ところで直摩さんの持っているジュースはなんですか?」

「これ?これは『シルフィールドサイダー』といってシルフィールドという地域で販売されている特殊なサイダーだよ。でもこれ結構炭酸がきついからおすすめしないけど運動能力は高くなるらしいよ。」

「本当に異世界には色々なものがあるのですね。」

「まあね。僕らからしたらここは普通の世界だけどね。君の世界は安全そうだからそこに行きたいよ。」

二人は会話を盛り上げていたからか笑顔になっていた。すると二人の前にある男性が歩いていたのである。その男性を見たヒナの顔がひきつったのだ。

「(あ!あの人は……!!なぜこんな場所に!!?)」

男性は二人の方向に顔を向けなかったがヒナは気づいていた。先日あの愛想の悪い宿泊客であったからだ。
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