ヒナの国造り

市川 雄一郎

文字の大きさ
上 下
26 / 762
第4章・ドーリンの洞窟と若さの効用のルーツ

となり町の洞窟の秘密と怪しい動き⑥

しおりを挟む
渋滞に巻き込まれた直露達はなかなか進めずに立ち往生していたのである。

「くそぉ!なぜだ!?」

どうやらUターンする少し前に先のトンネル内で爆破事故があり、それで車が進めずにいるのであった。

「このままだとヒナちゃんの身が危ないっ!!なんとかできないだろうか!!?」

焦る直露の顔には大量の汗が流れていた。横でそれを見ていた妻が直露に言ったのである。

「私がハンドルを握るのであなたは少し先にあるサービスエリアから下の道に出てください。そこからならドーリンまでは遠くはありません。下の道に出てから先は私が何とかしますので行ってください!!」

「え……?いいのかい……?」

「あなたをサポートするのが妻である私の役割です。あなたとヒナさんは切っても切れない縁だと私は感じています。私は大丈夫だから急いでください。」

「す……すまないな!!行かせてもらう!!」

そういうと車を後にした直露はサービスエリアを目指して全力で駆けていったのである。車から夫を眺めていた妻は優しい微笑みで彼を見つめ続けていた。

「(あなたの優しさがヒナさんにとって心の支えとなっています。私も力を尽くすので彼女を支えてあげてください。そして食材の結果も楽しみにしていますから……)」

彼女は夫を見届けると誰かに電話を掛けたのである。

「もしもし、お願いがあります……」

直露は走って数十分後にサービスエリアに到着したのである。そして出口を見つけて階段を降りた先には一台の車が停車していたのである。その車の窓が開き、男性が声を掛けた!

「直露さん、乗りな!」

「お……お兄さん!!」

直露が『お兄さん』と呼ぶ男性が彼を助手席に乗せるとスピードを出してドーリン方面へと向かったのだ。

「お兄さん、忙しい中……」

「言うな。俺こそいつも妹を大切にしてくれてありがとうな。」

どうやらこの男性は直露の夫人の兄のようで直露から見れば『義理の兄』である。どうやら妻は自分の兄に連絡をしてくれたのであった。

“下の道に出てから先は私が何とかしますので……”

彼女の声が頭に響き、直露の目は潤んでいた。それに気づいた義兄はある質問をしたのである。

「なあ、お前が大切にしている“ヒナちゃん”という子は可愛いのか?」

「はい、結構可愛らしい子ですよ。苦労してきたとは思えないような雰囲気ですよ。」

「ハハハ、直露くん!それなら俺の嫁さんに迎えたいがどうかな?」

「お兄さんのような人柄なら彼女も気に入ってくれるはずです。」

「おっ!助け甲斐があるねえ!良い子は苦しませたくないのが俺の美学!急いで助けてやりたいなっ!!」

「お兄さん、本当にありがとうございます!!」

車で雑談すること一時間くらい経ち、ついにドーリン郊外の工場に到着したのである。

「お兄さん、ここが囚われている場所です。ここにヒナちゃんがいます。」

「よっしゃあ!!大工で体を鍛えた俺の一撃を悪い連中どもに食らわしてやるぞ!!」

二人は工場の入口を開けた。そして中に入ったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

処理中です...