ヒナの国造り

第４章・ドーリンの洞窟と若さの効用のルーツ

となり町の洞窟の秘密と怪しい動き④

直露がヒナを探しに行った直後に民宿に警察官が訪れたのである。直露の父は息子がなにかしたのかと一瞬不安になっていたので警察官が事情を説明する。

「私はこのブルーサイド地区の警備、巡回の担当である永崎(ながさき)グライディともうします。最近この辺を束椎木渇途(たばしき・かつみち)という男が彷徨いています。彼はこの地区における誘拐犯であり、かなり危険な組織に所属している者です。」

「束椎木……？あ、あいつか！！朝ここに来てあの子を連れていった……！」

「あの子……とは？」

「私の息子と仲良くなった子で、娘のようにいとおしい存在です。彼女があの男に『アニを助けてほしい』と懇願して連れ去っていったのです……」

「御主人、署で詳しくその時の様子を聞かせてもらえませんか？」

「ああ、詳しく説明する。おい、お前と次男夫婦で少し店を営んでくれ。すぐに帰る。」

「わかりました。お気をつけて……」

直露の父は妻に妻と次男夫婦で店を切り盛りしてもらうことをお願いして警察署の車に乗ったのであった。

一方の直露はドーリン町に行き、聞き込みを開始したのである。町から洞窟にかけての道は人通りが多いので見つかるはずだと思ったのである。

「女性の方を見ましたでしょうか？」

「いいえ、見てないわ……」

聞いても聞いても誰も見ていないという。目撃証言も昨日の情報であり、今日に至っては誰も見てすらいないのである。苛立ちを隠せない直露に妻がアドバイスしたのである。

「もしかしてヒナちゃんはこの村にはいないのでは？」

「どうしてそう思う？」

「だって連れていった方はバレないように遠くへ行くのが普通だと思うわ。たぶんヒナちゃんの行き先を確認した上で別の場所に逃亡してるはずよ。」

「なるほどな……ちょっとだけ移動しよう。」

妻のアドバイスを聞き、車での移動を再開した直露。高速道路の入口を発見し、料金所の職員にダメ元で質問した。

「あのー、女性の方を見ましたでしょうか？男性と一緒にいたと思います。」

すると職員から重要な目撃情報を得ることが出来たのである。

「見たよ。ちょっと高級な車の感じがするね。向こうの方面に向かっていったよ。」

高速道路の料金所を越えると分岐点がある。うちの左側の方面に進んでいったというものである。その方面に車を走らせるとサービスエリアの看板があったのだ。一度サービスエリアにいないかどうかを聞くことにしたのである。勿論ここにも目撃者は不在。ただ店の外で屋台の料理店を営む男性がある情報を教えてくれたのだ。

「ん？女性かはどうかは分からないけどカップルらしき二人が降りてそこに男性が来たのがちらっと見えた。それで何かごそごそしながら怪しい動きを見せてそのまま本線に行った。」

それを聞いた直露はすぐに本線へと戻ったのだ。なんとその目撃時間は夢にヒナが現れた時間と被るからであった。

一方の束椎木の車は一度あるインターチェンジを降りて、Uターンしてから再びインターチェンジの入口側へと向かう。そこから高速道路に再度進入してドーリン方面に向かっていたのである。