ヒナの国造り

市川 雄一郎

文字の大きさ
上 下
19 / 762
第3章・若さを保つ食材

村への帰還と食材の正体③

しおりを挟む
食堂での一悶着も終えて時間を見るとすでに夜の10時となっていた。ヒナは自分の部屋に戻り布団を敷いていると部屋に直露が訪れたのだ。

「ヒナちゃん、怪我は大丈夫か?」

「うん、大丈夫よ。そんなに強く当たらなかったから特に何もないわ。」 

「そうか、良かった。」

ヒナは直露の顔が心配してくれているような感じであったので気にかけてくれたのかと思っていたのであった。すると直露は立て続けに真剣な顔をして語ったのである。

「ヒナちゃんが持ってきてくれた種を研究してくれる人がいるんだ!明日一緒に会ってくれないか?」

ヒナは『本件はそっちかい!』と突っ込みたいような表情で答えた。

「良いわよ。私も本物か気にしていたからね。」

すると直露はヒナの表情を伺い『あ、怒らせたかな?』と心配したような顔つきに変わって話を続けたのである。

「明日会う人はとても食材の研究で有名な方でもしこの種を見てもらうならこの地域ではかつてない大研究になりそうだよ!!」

どうやらこの食材については詳しくは分かっていないためか種の研究ですら重大事件と同じニュースなのだ。するとヒナは表情を180度変えてやたら笑顔を見せてにやにやしながら直露を見つめていた。

「(感情豊かな子だな……)ああ。これでもし若さを保つ成分などが分かればこれは表彰ものだよ!!ヒナちゃんは凄いことしたんだよ!!」

もはやヒナは怒るという感情を忘れたかのごとく笑顔が輝いていた。確かに大発見的なことをしたのだから評価されて当然ではあるが……だがヒナは少し冷静になり考えた。

「でも私の功績でいいの?はじめて見つけた人やはじめて栽培した人にかなり申し訳ないんだけど……」

「勿論、関係者は全員表彰されるよ!だからそこは気にしなくていいから大丈夫!!」

「それなら良かったわ!!」

ヒナはある考慮をしていたようだがその必要もなかった。あとは研究してもらうだけだが勿論時間はかかる。

「結果が出るのに短くて一週間はかかるな。だからそれまでは自由にここに居てなよ!手伝いも都合に合わせていいからね。」

「それならそうするわ。でも一週間あるなら少し隣町に行ってきていいかな?夜までには必ず帰ってくるからね。」

「それでも良いよ。ただ明日だけはその先生にお会いしてほしいんだ。じゃあ、よろしくね!おやすみ!!痛みが再発したら隣の部屋で寝てるから声をかけてね!!」

「おやすみ!!」

直露は自室へ戻る。しかしヒナはなんやかんやで最後に心配してくれた直露の優しさに少し感動していたのか表情が嬉しそうであった。夜の11時半になるとそろそろヒナはベッドの上で眠りにつこうとしていた。

しかしこれからがヒナにとってとても大変なことになるとは現時点ではヒナも直露も誰も知る由はなかった。それを知らないヒナは日付が変わった午前0時2分に眠りについたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...