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第一章・ヒーローに憧れていた男
(2)選ばれし戦士と世界を救う旅人
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誰か分からない人に『選ばれし戦士』だと言われても意味が分からないのは当然である。するとその男性は虎丞にこう語ったのである。
「お前はもしかしてこの世界の者ではないのか?」
「はい…………そうなんです。」
「ならばお前は確かに『選ばれし戦士』だな。」
「はあ……」
もはや意味が理解できない。というよりそもそもこの世界は一体どこなのかすら分からない……虎丞の頭は思考回路はこんがらがって来たのである。そして虎丞はある質問をしたのだ。
「すみません……あなたのお名前は……?」
「私か?私は[ラット・ボガード]という。この世界でとても有名な剣士だ。」
「はあ……で、あなたはなぜ僕のところに……?」
「いや……たまたま見かけただけだが……それよりもお前は何か武器や防具は持っていないのか?」
ラットはそう言うが異世界から来たばかりの虎丞にそんなものがあるはずない。それどころかこの世界のことすら理解していないのに武器もくそも無いような気がするが……
「いや……ありません。というより今来たばかりで武器とかを持っている時点でおかしいと思います。」
「そ……そうか……確かにそうだな……初めてきたばかりで武器とかがあればおかしいわな。」
さすがにラットも理解してくれたようだが、さてこれからどうするのか?
「これから僕はどうすればよろしいでしょうか?いや……本当にどうすれば……早く仕事場に戻りたいんですけど……」
「仕事場?私に帰り方を聞かれても困る!!」
ラットは虎丞をキビシく突き放した。元の世界に戻る方法はどうやら誰も知らないみたいだ。
「………………」
「………………」
「あの……本当に僕は『選ばれし戦士』なんでしょうか?」
「…………ああ、何となくそう思う。」
「(何となくかよ!!)」
しかしこのまま立ち止まっても仕方がないのでラットの指示を仰ぎ、この世界を調べてみようと虎丞は考えたのである。
「ラットさん……僕は何をしたら良いかなあ?」
「とりあえずこの辺に村があるからそこへ行きなさい。必ずそこで重要な情報を集めることが出来るから……」
「ありがとうございます。無事に帰れるようにします。」
そう言うと虎丞は北東に村らしきものを見つけたのでそこへと向かうことにしたのである。虎丞の後ろ姿を見ていたラットはこう呟いたのである。
「あいつ……あの雰囲気はまさに『選ばれし戦士』だ!!私の目は節穴ではなかったのだ……!!」
村に向かって走る虎丞であったが久しぶりに走ったのですぐに息は上がったのであった。そして村に到着すると村民の一人が虎丞の元にやって来たのである。ちなみに村は日本の山間部の村のような感じの建物であった。
「はじめまして、旅の方でしょうか?」
「はい、旅をしている者です。ちょっとこの辺の地理を知らないのでここを見つけてやって来まして……」
「それなら村の奥の屋敷へと行ってくださいませ。そこで村の村長にお会いしてくださいませ。」
「村長に?」
虎丞は言われるがままに奥の屋敷へと向かったのである。すると屋敷の玄関に初老の男性がいたのだ。ただ髭は生えておらず、近所のおじさんのようなイメージであった。
「君が旅人かね?私は村長の[リーブ・トライザクロン]と言う。じつは君……いや、あなたに渡したいものがありまして……」
いきなりやって来た旅人に渡したいものと言われても虎丞は戸惑うだけであった。そして奥に行った村長が剣を持ってきたのである。
「先日、占い師のおばあさんから『もし村に最初の旅人が来たら渡すべき』だと言われました。この剣を持っていれば必ず旅の役に立つでしょう。彼女いわく『この世界は今、秩序が乱れつつある。だからもうじき現れる旅人に剣を渡せばその旅人が世界を救ってくれる』とのことだ。だから私はあなたに未来を託したいのだ。」
「???」
「お役に立てていただけると幸いです。」
「ありがとうございます……」
すると村長の家に怪しい男がやって来たのである。
「フハハハ……俺はある者からの命令で村を滅ぼしに来たものだ。さあ、村長よ……まずは貴様の命から頂く!!覚悟しろ!!!」
展開が無茶苦茶過ぎて平凡な人生ばかりを歩んだ虎丞にはついていけない状況であった。すると男は虎丞の剣を見て言う。
「お前……もしかして凄腕の剣士か?ならば俺と戦おうか?」
「いえ……僕はただの旅人なんで凄腕でもなんでもないです……!!だから勘弁して~!!」
「ふざけるな!!剣を持つ時点でお前は“剣士”なんだよ!!」
「(あ~!!俺、終わった……)」
突然謎の剣士に闘いを挑まれて人生の終わりを覚悟した虎丞であった。
第2話・終わり
「お前はもしかしてこの世界の者ではないのか?」
「はい…………そうなんです。」
「ならばお前は確かに『選ばれし戦士』だな。」
「はあ……」
もはや意味が理解できない。というよりそもそもこの世界は一体どこなのかすら分からない……虎丞の頭は思考回路はこんがらがって来たのである。そして虎丞はある質問をしたのだ。
「すみません……あなたのお名前は……?」
「私か?私は[ラット・ボガード]という。この世界でとても有名な剣士だ。」
「はあ……で、あなたはなぜ僕のところに……?」
「いや……たまたま見かけただけだが……それよりもお前は何か武器や防具は持っていないのか?」
ラットはそう言うが異世界から来たばかりの虎丞にそんなものがあるはずない。それどころかこの世界のことすら理解していないのに武器もくそも無いような気がするが……
「いや……ありません。というより今来たばかりで武器とかを持っている時点でおかしいと思います。」
「そ……そうか……確かにそうだな……初めてきたばかりで武器とかがあればおかしいわな。」
さすがにラットも理解してくれたようだが、さてこれからどうするのか?
「これから僕はどうすればよろしいでしょうか?いや……本当にどうすれば……早く仕事場に戻りたいんですけど……」
「仕事場?私に帰り方を聞かれても困る!!」
ラットは虎丞をキビシく突き放した。元の世界に戻る方法はどうやら誰も知らないみたいだ。
「………………」
「………………」
「あの……本当に僕は『選ばれし戦士』なんでしょうか?」
「…………ああ、何となくそう思う。」
「(何となくかよ!!)」
しかしこのまま立ち止まっても仕方がないのでラットの指示を仰ぎ、この世界を調べてみようと虎丞は考えたのである。
「ラットさん……僕は何をしたら良いかなあ?」
「とりあえずこの辺に村があるからそこへ行きなさい。必ずそこで重要な情報を集めることが出来るから……」
「ありがとうございます。無事に帰れるようにします。」
そう言うと虎丞は北東に村らしきものを見つけたのでそこへと向かうことにしたのである。虎丞の後ろ姿を見ていたラットはこう呟いたのである。
「あいつ……あの雰囲気はまさに『選ばれし戦士』だ!!私の目は節穴ではなかったのだ……!!」
村に向かって走る虎丞であったが久しぶりに走ったのですぐに息は上がったのであった。そして村に到着すると村民の一人が虎丞の元にやって来たのである。ちなみに村は日本の山間部の村のような感じの建物であった。
「はじめまして、旅の方でしょうか?」
「はい、旅をしている者です。ちょっとこの辺の地理を知らないのでここを見つけてやって来まして……」
「それなら村の奥の屋敷へと行ってくださいませ。そこで村の村長にお会いしてくださいませ。」
「村長に?」
虎丞は言われるがままに奥の屋敷へと向かったのである。すると屋敷の玄関に初老の男性がいたのだ。ただ髭は生えておらず、近所のおじさんのようなイメージであった。
「君が旅人かね?私は村長の[リーブ・トライザクロン]と言う。じつは君……いや、あなたに渡したいものがありまして……」
いきなりやって来た旅人に渡したいものと言われても虎丞は戸惑うだけであった。そして奥に行った村長が剣を持ってきたのである。
「先日、占い師のおばあさんから『もし村に最初の旅人が来たら渡すべき』だと言われました。この剣を持っていれば必ず旅の役に立つでしょう。彼女いわく『この世界は今、秩序が乱れつつある。だからもうじき現れる旅人に剣を渡せばその旅人が世界を救ってくれる』とのことだ。だから私はあなたに未来を託したいのだ。」
「???」
「お役に立てていただけると幸いです。」
「ありがとうございます……」
すると村長の家に怪しい男がやって来たのである。
「フハハハ……俺はある者からの命令で村を滅ぼしに来たものだ。さあ、村長よ……まずは貴様の命から頂く!!覚悟しろ!!!」
展開が無茶苦茶過ぎて平凡な人生ばかりを歩んだ虎丞にはついていけない状況であった。すると男は虎丞の剣を見て言う。
「お前……もしかして凄腕の剣士か?ならば俺と戦おうか?」
「いえ……僕はただの旅人なんで凄腕でもなんでもないです……!!だから勘弁して~!!」
「ふざけるな!!剣を持つ時点でお前は“剣士”なんだよ!!」
「(あ~!!俺、終わった……)」
突然謎の剣士に闘いを挑まれて人生の終わりを覚悟した虎丞であった。
第2話・終わり
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