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ナテュール達がロイのために動き出している同時刻、神官たちに拘束されたロイは、神殿へ向かう馬車に揺られていた。
(……今どき縄で拘束って……2秒で抜けるんだが。付けたままなのめんどくさいな……)
まさか僕がそんなことを思ってるとは考えても居ないだろう目の前の神官は得意げな顔でこちらに向かってフフンッと鼻を鳴らす。
「お前が神殿から出て5年……どれだけこの日を待ちわびたことか。」
「おや、それはそれは。人気者で困ってしまいますね。」
神官の言葉にそう返せば、目の前の神官はピクリとこめかみの筋をたてる。
それにしても、この神官。僕のことを知っているようだが、僕は誰か思い出せない。
磨けば光源になりそうな程の見事なスキンヘッドと、ゆったりとした神官服でも隠しきれないふくよかな体型。1度見たら忘れないと思うのだが……
(……とはいえ、僕が最後に神官と接触したのは5年前の10歳の時が最後。多少見た目が変わっていてもおかしくは無いけど……)
頭の中で痩せて髪の毛をフサフサにした姿に変換してみる。どこか見たことがあるような気もするが、一般的に多い茶髪のイメージだとピンと来ない。
(他に当時神殿にいたメンバーで茶髪以外……)
「ああ、もしかして、私のケツ掘ろうとして返り討ちにあった当時見習いの指導官を担当していたナントカ神官ですか?」
「今思い出したのかよ!てかナントカ神官って何だ!!もっとちゃんと思い出せよ!!」
僕の言葉に、神官は動く馬車の中勢いよく立ち上がり、そして揺れによってよろけ、その重さ故勢いよく席に戻された。こいつも典型的な堕落した神官だったな、と当時の記憶を思い出す。
「いえ、まさかあれだけもっさもっさしていた黒髪が荒地になってるとは思いもせず。5年経つと変わりますね。」
「荒地言うな!!主にお前のせいのストレスでこうなったんだからな!!」
と、指を頭に向ける神官に、「心外ですね。」と言葉を返す。
「私は円満に神殿から離脱したというのに。」
なんて縛られたまま肩を竦めて見せれば「あれのどこがだ!」と、更に喚かれた。
「円満でしょう?貴方達だって神の名の元に好き勝手見習いに手を出している事で逮捕されたりしていないじゃないですか。」
「ぐっ……!だ、だからお前のせいで……!」
「ああ、『誓い』が邪魔ですか?二度と見習いに対してあんなことやそんなこと出来なくなりましたものね。滑稽です。欲求不満だろうが知ったことではありません。貴方方は神官なのですから。」
神官、の部分を強調すれば、顔を真っ赤にして体を怒りに震わせる。
以前、オリバーには少し話したことがあるが、神殿という宗教によって閉ざされた閉鎖空間では、神官という禁欲を語った変態によって支配されている。
大人しそうな子。他に行き場のない子。
見目の良い子はダメだ。貴族に気に入られる可能性が高く、権力に近い力をその子が持てば復讐されるかもしれない。
とにかく、泣き寝入りしそうな見習いの子供を、神官からの慈愛と称して犯す。そんな行為が横行していたのが、かつての神殿だ。
本当にクソみたいな話だ。
なので神殿を出る際、今までの記録を身をもって集め、従わない場合はこの事実を国中で公表すると交渉したのだ。
他にも不正金や貿易禁止国に対しての密輸など、交渉材料は色々と揃えたが。
そして交渉の際に使ったのが、かつて魔法使いが多く居たころに造られたと言われ、神殿に保管されていた古の魔法具だ。
魂に『誓い』を刻み込むその魔法具。破れば死に至るその古の魔法具を近代で使ったのは後にも先にも僕だけだろう。
ちなみにどうやって解除するのかは不明だ。
「私を殺して、その『誓い』が消えるかどうかの賭けにでも出ますか?」
と、笑えば目の前の神官はニタリと気味の悪い笑みを浮かべた。
「まだ殺さないさ。お前にはやってもらうことがあるからな。」
(……やってもらうこと?……やはり、後ろに誰か着いているな。)
良くも悪くも神官といのは欲深い。故に失うことを恐れて小心者にもなる。
悪を悪だと主張できるだけの善性の性根を持った神官は尽く地方の寂れた神殿へと配属されるし、王都の神殿にいるやつらなど、余計にそんなやつらが纏まっている。
だからこそ、そんな神官どもがこれだけ大きな顔をしているということは、それだけ大きな権力が後ろ盾についた、ということだ。
(……下手すると王族の誰か……王に賛同する貴族派には今更神殿に手を貸す理由はない。そうなると実家が反神殿派の正妃様と王太子は除外。第2側妃の実家は権力が弱い。)
と、脳内でそれぞれの人物をピックアップし、その情報を整理していく。
(親神殿派の高位貴族を親に持つのは第4側妃くらいか……しかし、産んだのは王女だけ。神殿に手を貸しても見返りがない。)
どの人物もピンと来ず、内心首を捻る。
黙りこくる僕に何を勘違いしたのか、目の前の神官は「ハハハッ!今更悔いても遅いからな!!」と高笑う。
「うるさいですよ。今考え事をしているんです。黙っていてください。」
「お前自分の立場わかってんのか??」
そう、口角を引き攣られる神官に、僕は再び「うるさいです。」と言葉を吐き出した。
(……今どき縄で拘束って……2秒で抜けるんだが。付けたままなのめんどくさいな……)
まさか僕がそんなことを思ってるとは考えても居ないだろう目の前の神官は得意げな顔でこちらに向かってフフンッと鼻を鳴らす。
「お前が神殿から出て5年……どれだけこの日を待ちわびたことか。」
「おや、それはそれは。人気者で困ってしまいますね。」
神官の言葉にそう返せば、目の前の神官はピクリとこめかみの筋をたてる。
それにしても、この神官。僕のことを知っているようだが、僕は誰か思い出せない。
磨けば光源になりそうな程の見事なスキンヘッドと、ゆったりとした神官服でも隠しきれないふくよかな体型。1度見たら忘れないと思うのだが……
(……とはいえ、僕が最後に神官と接触したのは5年前の10歳の時が最後。多少見た目が変わっていてもおかしくは無いけど……)
頭の中で痩せて髪の毛をフサフサにした姿に変換してみる。どこか見たことがあるような気もするが、一般的に多い茶髪のイメージだとピンと来ない。
(他に当時神殿にいたメンバーで茶髪以外……)
「ああ、もしかして、私のケツ掘ろうとして返り討ちにあった当時見習いの指導官を担当していたナントカ神官ですか?」
「今思い出したのかよ!てかナントカ神官って何だ!!もっとちゃんと思い出せよ!!」
僕の言葉に、神官は動く馬車の中勢いよく立ち上がり、そして揺れによってよろけ、その重さ故勢いよく席に戻された。こいつも典型的な堕落した神官だったな、と当時の記憶を思い出す。
「いえ、まさかあれだけもっさもっさしていた黒髪が荒地になってるとは思いもせず。5年経つと変わりますね。」
「荒地言うな!!主にお前のせいのストレスでこうなったんだからな!!」
と、指を頭に向ける神官に、「心外ですね。」と言葉を返す。
「私は円満に神殿から離脱したというのに。」
なんて縛られたまま肩を竦めて見せれば「あれのどこがだ!」と、更に喚かれた。
「円満でしょう?貴方達だって神の名の元に好き勝手見習いに手を出している事で逮捕されたりしていないじゃないですか。」
「ぐっ……!だ、だからお前のせいで……!」
「ああ、『誓い』が邪魔ですか?二度と見習いに対してあんなことやそんなこと出来なくなりましたものね。滑稽です。欲求不満だろうが知ったことではありません。貴方方は神官なのですから。」
神官、の部分を強調すれば、顔を真っ赤にして体を怒りに震わせる。
以前、オリバーには少し話したことがあるが、神殿という宗教によって閉ざされた閉鎖空間では、神官という禁欲を語った変態によって支配されている。
大人しそうな子。他に行き場のない子。
見目の良い子はダメだ。貴族に気に入られる可能性が高く、権力に近い力をその子が持てば復讐されるかもしれない。
とにかく、泣き寝入りしそうな見習いの子供を、神官からの慈愛と称して犯す。そんな行為が横行していたのが、かつての神殿だ。
本当にクソみたいな話だ。
なので神殿を出る際、今までの記録を身をもって集め、従わない場合はこの事実を国中で公表すると交渉したのだ。
他にも不正金や貿易禁止国に対しての密輸など、交渉材料は色々と揃えたが。
そして交渉の際に使ったのが、かつて魔法使いが多く居たころに造られたと言われ、神殿に保管されていた古の魔法具だ。
魂に『誓い』を刻み込むその魔法具。破れば死に至るその古の魔法具を近代で使ったのは後にも先にも僕だけだろう。
ちなみにどうやって解除するのかは不明だ。
「私を殺して、その『誓い』が消えるかどうかの賭けにでも出ますか?」
と、笑えば目の前の神官はニタリと気味の悪い笑みを浮かべた。
「まだ殺さないさ。お前にはやってもらうことがあるからな。」
(……やってもらうこと?……やはり、後ろに誰か着いているな。)
良くも悪くも神官といのは欲深い。故に失うことを恐れて小心者にもなる。
悪を悪だと主張できるだけの善性の性根を持った神官は尽く地方の寂れた神殿へと配属されるし、王都の神殿にいるやつらなど、余計にそんなやつらが纏まっている。
だからこそ、そんな神官どもがこれだけ大きな顔をしているということは、それだけ大きな権力が後ろ盾についた、ということだ。
(……下手すると王族の誰か……王に賛同する貴族派には今更神殿に手を貸す理由はない。そうなると実家が反神殿派の正妃様と王太子は除外。第2側妃の実家は権力が弱い。)
と、脳内でそれぞれの人物をピックアップし、その情報を整理していく。
(親神殿派の高位貴族を親に持つのは第4側妃くらいか……しかし、産んだのは王女だけ。神殿に手を貸しても見返りがない。)
どの人物もピンと来ず、内心首を捻る。
黙りこくる僕に何を勘違いしたのか、目の前の神官は「ハハハッ!今更悔いても遅いからな!!」と高笑う。
「うるさいですよ。今考え事をしているんです。黙っていてください。」
「お前自分の立場わかってんのか??」
そう、口角を引き攣られる神官に、僕は再び「うるさいです。」と言葉を吐き出した。
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