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歪んだ愛 3
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散々、躰を貪られ、小池から開放されたのは翌日の日が高くなった時間だった。その後の記憶はない。
·····眠ってたのか
窓の外はすっかり日が落ち、部屋の時計は10時を指していた。
あちこち痛む躰を夏樹はゆっくりと起こす。
ベッドのシーツは新しい物に替えられ、躰も体液と汗でベタベタしていたが、綺麗に拭かれさっぱりしていた。
部屋を見渡すが、そこに小池の姿はなかった。
ベッドの端に畳んで置いてあるシャツに気づいた夏樹は、それを手に取り袖に腕を通した。軽くボタンをかけ、ベッドから立ち上がる。
「痛っ·····」
下半身に重い痛みを感じ、思わず声が洩れる。否応なしに小池にされた凌辱の数々が鮮明に浮かぶ。
チッ···
忌々しそうに小さく舌打つと、部屋のドアを開けた。
広々としたリビングだが、そこにも小池の姿はなかった。
····出かけてるのか?
夏樹は部屋の中央へと歩いていく。親は離婚したと言っていたが、さすが大手企業の息子。いい所に住んでるな、と夏樹は一人で住むには広すぎるリビングを見渡した。
広すぎる·····違うな
この部屋には何も無いから広く感じるのだ。テレビやソファー等は置かれてはいるが、必要最低限の物しかない。更に、リビングに面したオープンキッチンはまるで使われた形跡がなく、調理器具の類も見当たらない。お湯を沸かす為の電気ケトルだけが、ポツンと置かれていた。
不意に、最中に小池が呟かれた言葉が脳裏に過る。
先輩だけは·····
俺を捨てないで·······
こんな寂しい空間でアイツはどんな生活を送っているのだろうか····。
その時、ドアの開く音が聞こえ、小池が部屋に入ってきた。
「···先輩、躰は大丈夫ですか?」
「あれだけの事をしておいて心配するのか?」
「····そうですよね」
散々、高圧的な態度を取っていた割に、夏樹に言われしゅん···とした表情の小池に、罵声の一つでも浴びせてやろうと思っていた夏樹は毒気を抜かれる。
小池は手にしていたコンビニの袋をキッチンのカウンターに置き、
「適当にコンビニで買ってきたんですけど、先輩、食べますか?」
と、夏樹とあまり目を合わせないように視線を袋の中へ向けたまま聞いた。
「·····。それより俺の服と鞄、返せ」
「·········」
「小池」
夏樹の強い口調に、ビクンと肩を震わせた。
「····分かってますよ、先輩をここにずっと監禁しておくなんて事······現実的じゃないって事くらい。無理矢理した所で先輩を手に入れられるわけじゃない事も·····」
小池はポケットからスマホを取り出すと、ロックを解除し、テーブルに置いた。
「写真、全部消してあります。心配なら、そのスマホ壊してもいいですよ·····もう俺には必要なくなりますから····」
夏樹は小池の胸ぐらを掴みかかる。
「テメェ···死ぬつもりとか言うんじゃねぇだろうな!散々、人の事を犯しといてふざけた事言ってんじゃねえ!!」
夏樹は怒鳴りつけた。小池は目を伏せたまま、グッと何かを堪えるように拳を握り締める。
夏樹はそんな様子の小池を見ると、深く息を吐いた。
「·····ったく、こんな生活感のない部屋で独りでいたらロクな考え浮かばねぇよ」
夏樹は小池から手を離すと、そなまま小池の目の前に手を広げる。
「·····?」
「ここの鍵よこせ。スペアくらいあるだろ?」
小池はますます混乱した表情で、思わず夏樹を見つめた。
「えっ····何で·······」
「鍵が無いと入れねぇだろうが」
「誰が······?」
状況が読み込めず、小池は間抜けな問いを返す。
「俺がに決まってんだろ····。ロクな飯も食ってなさそうだし、たまに作りに来てやるから、ちゃんと食べろ。その前に調理器具くらい買っとけよな」
「······な···んで?俺、先輩にあんな酷い事したのに·····」
小池がした事を許した訳ではなかった。
ただ、小池が人の温もりに縋りたいと手を伸ばしているように感じ、その手を払い除ける事が夏樹にはどうしても出来なかった。寂しすぎる部屋を見てから·····。
「許してなんかいない·····。ずっと側にいてやるから····自分のした事、後悔し続けろ」
死ぬなんて······
────── させない
·····眠ってたのか
窓の外はすっかり日が落ち、部屋の時計は10時を指していた。
あちこち痛む躰を夏樹はゆっくりと起こす。
ベッドのシーツは新しい物に替えられ、躰も体液と汗でベタベタしていたが、綺麗に拭かれさっぱりしていた。
部屋を見渡すが、そこに小池の姿はなかった。
ベッドの端に畳んで置いてあるシャツに気づいた夏樹は、それを手に取り袖に腕を通した。軽くボタンをかけ、ベッドから立ち上がる。
「痛っ·····」
下半身に重い痛みを感じ、思わず声が洩れる。否応なしに小池にされた凌辱の数々が鮮明に浮かぶ。
チッ···
忌々しそうに小さく舌打つと、部屋のドアを開けた。
広々としたリビングだが、そこにも小池の姿はなかった。
····出かけてるのか?
夏樹は部屋の中央へと歩いていく。親は離婚したと言っていたが、さすが大手企業の息子。いい所に住んでるな、と夏樹は一人で住むには広すぎるリビングを見渡した。
広すぎる·····違うな
この部屋には何も無いから広く感じるのだ。テレビやソファー等は置かれてはいるが、必要最低限の物しかない。更に、リビングに面したオープンキッチンはまるで使われた形跡がなく、調理器具の類も見当たらない。お湯を沸かす為の電気ケトルだけが、ポツンと置かれていた。
不意に、最中に小池が呟かれた言葉が脳裏に過る。
先輩だけは·····
俺を捨てないで·······
こんな寂しい空間でアイツはどんな生活を送っているのだろうか····。
その時、ドアの開く音が聞こえ、小池が部屋に入ってきた。
「···先輩、躰は大丈夫ですか?」
「あれだけの事をしておいて心配するのか?」
「····そうですよね」
散々、高圧的な態度を取っていた割に、夏樹に言われしゅん···とした表情の小池に、罵声の一つでも浴びせてやろうと思っていた夏樹は毒気を抜かれる。
小池は手にしていたコンビニの袋をキッチンのカウンターに置き、
「適当にコンビニで買ってきたんですけど、先輩、食べますか?」
と、夏樹とあまり目を合わせないように視線を袋の中へ向けたまま聞いた。
「·····。それより俺の服と鞄、返せ」
「·········」
「小池」
夏樹の強い口調に、ビクンと肩を震わせた。
「····分かってますよ、先輩をここにずっと監禁しておくなんて事······現実的じゃないって事くらい。無理矢理した所で先輩を手に入れられるわけじゃない事も·····」
小池はポケットからスマホを取り出すと、ロックを解除し、テーブルに置いた。
「写真、全部消してあります。心配なら、そのスマホ壊してもいいですよ·····もう俺には必要なくなりますから····」
夏樹は小池の胸ぐらを掴みかかる。
「テメェ···死ぬつもりとか言うんじゃねぇだろうな!散々、人の事を犯しといてふざけた事言ってんじゃねえ!!」
夏樹は怒鳴りつけた。小池は目を伏せたまま、グッと何かを堪えるように拳を握り締める。
夏樹はそんな様子の小池を見ると、深く息を吐いた。
「·····ったく、こんな生活感のない部屋で独りでいたらロクな考え浮かばねぇよ」
夏樹は小池から手を離すと、そなまま小池の目の前に手を広げる。
「·····?」
「ここの鍵よこせ。スペアくらいあるだろ?」
小池はますます混乱した表情で、思わず夏樹を見つめた。
「えっ····何で·······」
「鍵が無いと入れねぇだろうが」
「誰が······?」
状況が読み込めず、小池は間抜けな問いを返す。
「俺がに決まってんだろ····。ロクな飯も食ってなさそうだし、たまに作りに来てやるから、ちゃんと食べろ。その前に調理器具くらい買っとけよな」
「······な···んで?俺、先輩にあんな酷い事したのに·····」
小池がした事を許した訳ではなかった。
ただ、小池が人の温もりに縋りたいと手を伸ばしているように感じ、その手を払い除ける事が夏樹にはどうしても出来なかった。寂しすぎる部屋を見てから·····。
「許してなんかいない·····。ずっと側にいてやるから····自分のした事、後悔し続けろ」
死ぬなんて······
────── させない
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