騎士隊長と黒髪の青年

朔弥

文字の大きさ
上 下
28 / 54
背徳の香り (拘束・目隠し)

3 ※

しおりを挟む
 アシュレイに周りを気にしろと言われた事を一応気にかけ、食堂に誰も居ない事を確認するとカウンターの奥にある流しに向かった。
 カウンターの隅にあるスイングドアから中へ入り、流しで水差しに水を注いでいく。
 莉人が水を汲んでいると、食堂に二人の隊員が静かに入ってきた。
 水差しに水が注がれていく様子をぼんやり眺めていた莉人は、食堂に人が入ってきた事に気づかない。
 水を止め水差しを持とうとした瞬間、莉人は背後から伸びてきた手に口を塞がれた。
「っ ───!!」
 躰を抱き締める腕は力強く、莉人の力ではとても振り解けない。
「おい!早く顔を見られる前に視界を塞げ!」
 口元を覆っている男が、もう一人に指図する。
「分かってるって!」
 布地の幅の広い紐のような物で目隠しをされ、莉人は視界を奪われた。
「んんっ!」
 覆われている掌から逃れようと身動みじろぐが、ビクともしない。サラリーマンだった自分と、常に躰を鍛えている騎士とでは当然の差といえば当然だが、抗わずにはいられない。
「大人しくしろって···」
 目隠しをした男に今度は腕を後ろ手に縛り上げられ益々ますます、自由を奪われていく。
「んぅ ────」
 放せ!という抗議の言葉はくぐもった声にしかならず、莉人を拘束する男達の欲情を煽っただけだった。
「····な··んか、興奮してきた」
「俺も···」
 囁かれる男達の言葉を聞き、莉人は躰を強張らせた。簒われた視界の中で彼らに何をされるのかを思い、恐怖と嫌悪感が莉人を襲う。
 前に回り込んだ男の手が莉人のシャツのボタンに伸び、一つずつ外していく。
 肌が次第に空気に触れていくのを感じた莉人は身を硬くした。
「···っつ」
 これ以上、男達の欲情を煽らないよう声をあげるのをこらえるが、躰は無意識に彼等から逃れようと動いてしまう。
「嫌がる仕草がたまんねぇ···」
 背後の男の声が耳元で囁やくように聞こえた。
「なあ···第一隊長さんだけじゃなく、俺らの相手もしてくれよ」
 前にいる男がそう言いながら、莉人のズボンの前に触れた。
「んぅ···」
 嫌だ、と逃げたくても後ろから腰をガッシリと押さえられ動けない。それどころか、後ろに下がろうとした所為で後ろにいる男の興奮で膨らみをもつ半身に擦りつける形となった。
「なんだ、欲求不満か?食堂でも欲情してたしなぁ···」
「···んんっ···」
 違うと言いたくても言葉にはならない。
 前を触っていた男はズボンのホックを外しジッパーが下げられていく。ズボンを床に落とされ、半身が外気に晒された。
「ンっ···」
 脚の間に躰を割り込まされているのか脚を閉じる事が出来ず、隠したくても隠せない。二人の視線に晒されているだろうと思えば思うほど、羞恥心に苛まれいたたまれない気持ちになる。


 ───── 嫌だ


 今更ながら、アシュレイに助けて欲しいなどと言っていないと言った自分の言葉を後悔していた。




「貴様等、何をしている」
 突然、聞こえた声にその場にいた全員の動きが固まる。凍りつきそうな程、冷やかな声だ。
 足音が近づいたかと思うと、物がぶつかる音が派手にし、うめき声が聞こえた。
 莉人を背後から拘束していた腕が緩み、莉人は床に膝をついた。
「ア、アシュレイ隊長···これは······」
 彼の言い訳は途中で途切れ、蹴り倒された音が莉人の耳に届く。
「お前ら体力が有り余っているようだな···。次の任務は魔物討伐の最前線に配置してやるから楽しみにしてろ」
 彼らに向かって言い捨てると、アシュレイは莉人を抱きかかえた。
「···ア··シュレイ···」
 莉人は彼の名を口にした。まだ腕を縛られ目隠しをされた状態のままでは、彼がどんな表情かおをしているか分からない。
「随分と趣向を凝らした遊びをしているな、リヒト」
 感情の無い口調から、彼が酷く怒っている事が計り知れる。
「助けてとは言われていないが、邪魔をしたか?」
「っ·········」
 莉人は押し黙った。悔しいが、何も言い返せない。
「これに懲りたら少しは大人しくしているんだな」
 躰の上に何かをかけられ露わになっている半身を隠された気配はあるが、アシュレイは目隠しや腕の拘束は解こうとはせず、そのまま歩き出した。
「ちょ···アシュレイ!これ外せよ···」
「騒ぎたてると、誰かに見られるぞ?」
「────── っ!」
 莉人は言葉を詰まらせ、アシュレイのなすがままに身を任せた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

処理中です...