12 / 54
騎士隊長と黒髪の青年
12
しおりを挟む
大した怪我もしていないし、一人で歩けると言ってもアシュレイは聞き入れず、莉人を抱き抱えたまま騎士団宿舎のアシュレイの部屋へと戻ってきた。部屋へ辿り着くまでに何人かとすれ違い、恥ずかしい事この上ない。
ベッドに腰掛けるように降ろされ、漸くホッと息がつけた。
「リヒト····」
アシュレイの手がそっと手首に触れる。莉人の白い肌に残る拘束具で擦れた傷は痛々しく、アシュレイはやり切れない表情をした。そして、手首の傷に優しく口づけた。
「もう誰にも傷つけさせない·····」
顔をあげ、今度は少し赤みの残る頬に触れた。
「ここも少し赤いな·····叩かれたのか·····」
嫌な記憶を消してくれるような優しい口づけを頬にもされる。
───── ああ···やっぱり
ルーベルトに触れられた時はあれほど嫌悪したのに、アシュレイに触れられても平気だ。
「リヒト?辛いのか?」
黙っている莉人に心配したアシュレイは声をかけながら顔を覗き込む。
莉人はアシュレイの襟首に手を伸ばし掴んだ。
「····平気だったのに·······」
低く絞り出すような声で呟く。
「リヒト?」
「撫で回されるくらい平気だったのに····アイツに触られただけで悍ましくて····」
思い出すだけでも声が慄える。
「リヒト·····。俺が触れるのも嫌か?リヒトが嫌がる事はしない·····」
悲しい瞳だが、莉人を思い遣る温かな光がそこにはあった。
莉人は違う、と首を横に振る。
嫌じゃないから困るのだ。
アシュレイ以外の奴に触れられたくなくなかったこの躰は······。
莉人は額をアシュレイの胸元に当てた。
「お前が消してくれよ····アイツに触られた嫌な記憶を····」
「リヒト····」
アシュレイは莉人の背に両腕を回し優しく抱きしめると、莉人の首筋にそっと唇を落とす。
愛おしく何度も口づけ、時折、軽く歯をたてきつく吸い、白い肌に朱を散らしていく。
莉人に羽織らせていた隊服を脱がせると、シャツ一枚で裾から覗く太腿に手を這わせた。
「この前みたいに止めないぞ」
いいのか?と、アシュレイは莉人の耳元で囁いた。
「俺にお前の事、好きにさせてみせるんだろ?」
きっと······
もう好きになってるんだろうけど···
莉人は穏やかな笑みを浮べた。
ベッドに腰掛けるように降ろされ、漸くホッと息がつけた。
「リヒト····」
アシュレイの手がそっと手首に触れる。莉人の白い肌に残る拘束具で擦れた傷は痛々しく、アシュレイはやり切れない表情をした。そして、手首の傷に優しく口づけた。
「もう誰にも傷つけさせない·····」
顔をあげ、今度は少し赤みの残る頬に触れた。
「ここも少し赤いな·····叩かれたのか·····」
嫌な記憶を消してくれるような優しい口づけを頬にもされる。
───── ああ···やっぱり
ルーベルトに触れられた時はあれほど嫌悪したのに、アシュレイに触れられても平気だ。
「リヒト?辛いのか?」
黙っている莉人に心配したアシュレイは声をかけながら顔を覗き込む。
莉人はアシュレイの襟首に手を伸ばし掴んだ。
「····平気だったのに·······」
低く絞り出すような声で呟く。
「リヒト?」
「撫で回されるくらい平気だったのに····アイツに触られただけで悍ましくて····」
思い出すだけでも声が慄える。
「リヒト·····。俺が触れるのも嫌か?リヒトが嫌がる事はしない·····」
悲しい瞳だが、莉人を思い遣る温かな光がそこにはあった。
莉人は違う、と首を横に振る。
嫌じゃないから困るのだ。
アシュレイ以外の奴に触れられたくなくなかったこの躰は······。
莉人は額をアシュレイの胸元に当てた。
「お前が消してくれよ····アイツに触られた嫌な記憶を····」
「リヒト····」
アシュレイは莉人の背に両腕を回し優しく抱きしめると、莉人の首筋にそっと唇を落とす。
愛おしく何度も口づけ、時折、軽く歯をたてきつく吸い、白い肌に朱を散らしていく。
莉人に羽織らせていた隊服を脱がせると、シャツ一枚で裾から覗く太腿に手を這わせた。
「この前みたいに止めないぞ」
いいのか?と、アシュレイは莉人の耳元で囁いた。
「俺にお前の事、好きにさせてみせるんだろ?」
きっと······
もう好きになってるんだろうけど···
莉人は穏やかな笑みを浮べた。
21
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
神官、触手育成の神託を受ける
彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。
(誤字脱字報告不要)
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる