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しおりを挟むあれから何度イかされただろうか···
少しの間、意識を手放していた柚月はゆっくりと瞳を開けた。躰は気怠いが、欲情の熱は収まりを見せている。
まだ霞がかったようにぼんやりとする意識で、背を向けるようにソファーに腰掛けている斗真の背中を見つめた。
本当に約束守ったんだ···
互いに求めるように貪りあったにも拘わらず、斗真が項に歯を立てる事はなかった。
「気づいたのか?」
柚月が意識を取り戻した事に気づいた斗真は、躰を捩り柚月を見下ろした。その拍子に僅かな金属の香りが鼻腔をかすめた。
そうだ···
確か、意識を手放す前にも嗅いだ筈だ
柚月はその時の記憶を辿りながら、香りと同時に何かを見たような気がした事を思い出す。
そう、赤い···何かを······
柚月は斗真の白い指に赤い液体の伝ったような筋を見た事を思い出した柚月は勢い良く躰を起こし、腕を伸ばした。
斗真は柚月から自分の左手を隠そうとするが、一瞬早く斗真の手首を掴んだ。
掴んだ彼の手を見た柚月は短く息を飲む。
掌には斜めに鋭利な物で切ったような傷があり、指にもいくつか切り傷がつけられている。
「···この傷···どうし······」
問いかけた柚月の視線はグラスを割ってしまった場所から離れたソファー近くの床に転がる硝子の破片の一つに釘付けになった。
硝子の表面にはべったりと血がついている。
傷を柚月に見られないよう、気を失った柚月が起きる前に手当てをしてしまいたかった斗真は、参ったな···と困った表情を浮かべた。
「深い傷じゃないから心配しなくていい」
青ざめている柚月を安心させるように斗真は言った。
「心配しなくていいって······大体、いつそんな怪我なんか···」
斗真が自分から離れて戻ってくる時に床から何かを拾う仕草をしていた事を柚月は思い出す。
「······まさか自分で傷つけたのか?何でそんな事···」
「約束したからな···」
「···約束?」
斗真の言葉を繰り返すように口にした柚月はハッとした。
番にしないから···
その言葉を守る為に自身を傷つけ、痛みと引き換えに理性を保っていたのだろう。
「少しは俺の言葉を信用してくれたか?」
斗真は優しい口調で柚月に声をかけた。
大した怪我ではないと言っていたが、それでもかなり痛む筈だ。それなのに斗真は柚月が気にしないよう優しい笑みを浮かべている。
本気で大切にしてくれている
そう感じると同時に柚月は、未だ向き合おうとせず答えを出す事から逃げ出してしまっている自分を思い、真っ直ぐ斗真を見る事が出来ず視線を外した。
そんな柚月を見て、斗真は少し悲しい表情を浮かべながらも口元は笑みを浮かべたまま、無理に応える必要はない、と頭に手を置き撫でた。
「俺が勝手にした事だ。負担に思う事も責任を感じる事もない。ただ······大切に思っている事だけは覚えておいてくれないか···」
切実に願うような声に、柚月は胸が締めつけられる。
本当は自分を卑下するなと言ってくれた事も、柚月自身の気持ちを大切に思ってくれている事も嬉しかったのに、素直に受け入れる事が出来なかった。
自分の気持ちに気づいてしまうのが怖くて、運命の番という言葉に逃げたのは···
─── 自分だ
「柚月···」
余程、追い詰められた表情をしていたのだろうか。斗真は心配そうに顔を覗き込み視線を合わせた。
「待つと言っただろ?ゆっくりでいい···それに、こっちもけりをつけないといけない事もあるしな···」
斗真の言うけりをつけなければならない事とは会長の事だろう。
会長は無理矢理にでも番わせてしまおうと誘発剤まで使ってきた。今後、どんな手を使ってくるのか···と、柚月は改めてこの婚約に会長という存在が大きく関わっているかを認識し、背筋にヒヤリと冷たい物が走る。
「これ以上、祖父に手出しはさせない。だから安心して······」
斗真は柚月の耳元に唇を寄せ優しく囁く。
─── 俺の事を考えろ
─────────────────────
また暫く停滞します···(>_<)ごめんなさい!
気長に待っていてもらえると嬉しいです···
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斗真君と柚月君😊
面白いです。人を信じられなかった斗真君が初めて柚月君の素の態度に戸惑い惹かれて。
柚月君を守る姿が素敵です。
更新ずっと待ってます。
応援してます😊
感想ありがとうございます💕
斗真が次第に柚月に惹かれていく様子がちゃんと書けているかなぁ···と不安でしたが、伝わって嬉しいです(^^)
更新がなかなか出来ていなくて···(>_<)
待っていて下さる優しいお言葉に感謝です💕
続き、頑張ります