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 ──── 使える物は利用してやる


 所詮、自分も祖父と同じ血が流れているのだ、と斗真は自嘲気味に笑った。
「諦めろ。もう西園寺家が広報を通して発表してる頃だ」
 斗真は腕時計を見ながら告げた。
 西園寺家に損失が出るような事態が起こらない限り、祖父はさっさと手を打つだろう。データで優秀なαが生まれると出ている彼をあの祖父が逃すはずがない。
「お前から婚約破棄してみろ。西園寺家の顔に泥を塗った奴が今の会社はもちろん、他の企業だってうちを敵に回したくないだろうからな···雇ってくれる所があるとは考えない方がいいぞ」
「······」
 柚月は悔しそうに押し黙った。
 斗真の言っている事は事実だ。
「···勝手に番にでもすればいい。だけどな、絶対にお前だけは好きにならない。ヒートが来たって求めたりなんか!」
 狂いそうな程、欲情したとしても自分から手をのばす事だけはしたくない。
 強い光を瞳の奥に揺らしながら睨みつけてくる柚月にゾクリとαの性が刺激される。


 この瞳が他の奴を映すのは許さない
 俺だけのモノにしたい···
 
 
「勝手に番にすればいい···か。だったら試してみるか?」
 含んだ笑みを浮べたかと思うと、斗真は柚月の半身に手を伸ばし触れてきた。
「─── なっ··」
 突然の行動に柚月は驚きの声を上げる。
「どこ触って──··」
 慌てて斗真の手を離そうと腕を掴むが、ズボンの上から撫でるように半身をまさぐる彼の手の動きを止める事が出来ない。
 先程の口づけの微熱の残る柚月の半身は、軽く触れられただけで簡単に硬さを持ち始めていた。
「勝手にしていいと言ったのはお前だろ?」
「それは番の話しで···!ヒートの時じゃなきゃいくら項を噛んだって番になれねぇんだから、今する必要なんてないだろ!」
「ヒートじゃないから試すんだろうが。本当に俺を求めないのかをな···。それとも自信がないか?」
 あおるような視線を投げかけられ、柚月はムッとした表情で思わず、
「勝手にしろ!」
 と、言い放つ。


 こいつ···どこまでする気だ?


 まさか、こんな所で最後までは···と思いながらも斗真の考えが読めず、自分の言ってしまった言葉に不安がよぎる。そんな不安を悟られないように、柚月は平静を装った。
「···絶対に···求めない···」

 柚月の耳元に斗真は顔を近づけた。
「いつまで拒み続けられるかな···」
 男の色気を含む低い声で耳元で囁かれ、斗真の舌が耳の輪郭を舐めながら耳孔へと入り込んできた。
 鼓膜を刺激する淫靡な濡れた音がゾクリと甘い痺れが腰に響き、柚月は思わず息を飲む。
「っ····」
 下肢を弄る指も硬さを増した柚月の陰茎の形をなぞるようにいやらしい手つきで動き続けた。
「嫌だ···はな···せ···」
 指で擦られる度にゾクゾクと欲望の熱が沸き起こり、柚月は逃れようと躰をねじらせた。だが、空いている方の腕で腰をしっかり固定されてしまい逃れられない。
「離せ?もっとシテ欲しいの間違いじゃないのか?ここをこんなに硬くして···甘い香りも強くなってるぞ?」
 斗真の言う通り柚月のズボンの前は痛いほど張りつめていた。
「違っ!」
「何が違う?」
 そう問いかけながら斗真の太腿が柚月の脚の間に入り込み、股間に太腿を押しつけ下から押し上げるように刺激する。
「─── っ···くっ···」
 欲望を揺さぶられ、快楽に感じてしまわないよう柚月の口から耐えるように短い吐息が洩れる。
 だが、柚月の先端からは先走りの液が滲み、下着に染みを作り始めていた。
「どうする?そろそろイきたいんじゃないのか?イかせて欲しいなら···そう言ってみろ」
「誰が···!」


 お前なんかに感じてたまるか···


 柚月はきつく唇を噛み、視界に映すのも嫌だと顔を背けた。




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