上 下
4 / 23

4

しおりを挟む


4


始めての夜会で、煌びやかな会場に足がすくんでしまう。

夜会の内容自体は、把握してたけど。
とにかく豪華だ。
会場には、令嬢達の色とりどりのドレスで花が咲いているよう。

今回は、僕のデビューもあり、両親と兄様に一緒に来たんだ。
あまりに僕がキョロキョロするもんだから兄様に、
「ルー、あまりキョロキョロするなよ?人にぶつかるよ?」
恥ずかしい!
頬が赤くなるのが、分かる。
だって、初めてなんだもの。
早く、ライに会いたいな。
安心するのに。
この服のお礼も言いたい。

しばらくすると、王族が入場が始まると、アナウンスが流れた。
会場は、水を打ったように静まった。

扉が開いて、ライが見えた。

あっ!
か、かっこいい!!
凄く凄くかっこいい!
いつもは下ろしている前髪を今日は、全部上げてる。
あ、あれ?あれれ?
何か、凄く不機嫌?みたい。
どうしたのかな?
でも、そんな顔もキリッとして、素敵だなぁ。
ん?
服が・・・・僕のと、お揃いなの?
色も僕の目の色だ。
う、何か恥ずかしい・・・・
でも、嬉しいな。
じっとライばかり見てたら、僕の前に兄様が立つから、
「兄様?」
「あールー。今から王様の挨拶があるからちゃんと、聞こうな?」
「う、うん。」
返事はしたものの、何なんだろう?
ま、いっか。
えっと、この後、王族の挨拶する為に並ばないといけないんだよね?
僕は、1番最後かな?

王様の挨拶も終わり、皆が移動を始めると父様が、
「ルーは、最後だから、まだゆっくりしてていいよ?疲れてないか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「では、父様と母様と一緒に待ってようか」
「うん、ありがとう。」
両親が、僕と一緒にいてくれるから安心だな。
父様の所に、挨拶をしに来る人達が、僕を見ると、ハッとする顔するから、何だろうって首をコテリとすると、兄様が僕の前に来て見えなくなった。

何なんだろう?
僕、何か変なのかな?
母様に
「ねぇ?母様?僕何か変?」
「ふふっ、ルーは可愛いわよー!」
「えっと、そうじゃなくてね?何で皆僕を見てビックリしてるの?」
「ルーが可愛いからよ。」

駄目だ。
母様に聞いたのが、間違いだ。
もういいや。

家族に囲まれて、大人しく待っていると、やっと僕の番が来た。

王様の前に立ち、右手を胸に当てて頭を下げる。
「面をあげよ。」
ゆっくりと、頭をあげると、ライに良く似た陛下が、にっこり笑って
「成人おめでとう。」
「ありがとうございます。」
僕も、笑顔で返すと、陛下は玉座から降りて僕の前まで来て、
「久しぶりだな?ルー。たまには私の所にも顔をみせにおいで?待ってるよ。」

僕の頭を撫でながら、そう言うと、
「あら?ズルいわ!ねぇ?ルーちゃん。久しぶりね。私の所にも来て頂戴ね?はぁ可愛いわぁ~。」
と、王妃様が僕を抱きしめてきた。
アワアワする僕を助けてくれたのは、ライだった。

「妃殿下、ルーを離して下さい。」
「ん、もう!ちょっとぐらいいでしょうにケチなんだから~」
「駄目です!ルーは私のですから。」
ライは、僕の腕を優しく掴んでライの腕の中に囲い込んた。

「ルー?疲れてない?大丈夫?」

ライは、僕の顔を覗き込んで、心配そうな顔をしてる。

「うん、大丈夫だよ。ちょっと緊張したけどね。」

「そうか。良かった。」

安心した顔で、僕の頭を撫でてくれた。
僕もライの顔が見れて、嬉しくて笑顔で

「心配してくれて、ありがとう。」

ライは、大きく目を見開くと、途端に破顔した。
あぁ、やっぱり好きだなぁと、改めて思う僕だった。


それから、ライは、
「座って食事でもしような。」
僕をソファに座らせ、ちょっと待っててと
近くにいる給仕の人に食事を持って来るように伝えた。

ライと、座って話をしてると、
「殿下、少し宜しいでしょうか?」
「何だ?」
「いえ、そちらの方は、宰相閣下のご子息でいらっしゃいますか?」
「あぁ、それが?」
ライが、不機嫌な返事をするので、僕は急いで立ち上がり、
「初めまして、ナーヴァス公爵家の次男でルーカスです。ラインハルト殿下の側近として、側に仕えさせて頂いております。」
「おぉ、そうで御座いましたか。私は、ダグラナ伯爵家当主の、アイゼンでこちらが娘の、ポーリットと申します。以後お見知り置きを。」
「こちらこそ。」

ライが、
「で?要件はなんだ?」
不機嫌顔で、僕の前に立つ。

「いえ、ルーカス様には、まだ婚約者がいらっしゃらないのかと、ならば、娘はどうかと、思いましてな。」

えっ?僕?
ライじゃないの?
そんな事考えてると、ライが

「あぁ、まだ私の側近の仕事に就いたばかりだから、今はまだそんな余裕はない。」
「そうでございますか。では、また。」

と、その親子は会場に戻って行く。

ふぅ~ビックリした。
でも、そうか。
これからは、こんな事もあるんだよね。
まだ、そんな事も考えられないし、な。

「ルー?大丈夫?」
「あ、うん。ビックリしたけど。ありがとう。ライ。」
「いや、ルー。ルーは婚約者が欲しい?」
「えっ?」
「まぁ、成人を迎えたから、そう言う話も出て来るだろうな。」
「そうだね。でも、僕は身体も弱くて、誰かを守る事は出来ないよ。多分・・・僕は結婚しないと思う。」
「・・・ルー。」

ライは、少し寂しそうな顔で、僕の頭を撫でる。

「ふふっ、そんな顔しないで。今は、やりたい事があるから、そんな事考えられないしね。」
「ふっ、そうか。無理するなよ?」
「うん。ありがと。」

そうして、僕の初めての夜会は、終わったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

召喚された少年は公爵様に愛される

さみ
BL
突然、魔導士により召喚された、ごく普通の大学生の乃亜(ノア)は何の能力も持っていないと言われ異世界の地で捨てられる。危険な森を彷徨いたどり着いた先は薔薇やガーベラが咲き誇る美しい庭だった。思わずうっとりしているとこっそりとパーティーを抜け出してきたライアンと出会い.....

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ヴェリテ〜賢竜帝様の番は過ちを犯し廃嫡されて幽閉されている元王太子で壊れていました

ひよこ麺
BL
賢王と慕われる竜帝がいた。彼が統治してからの500年の長きに渡りポラリス帝国は繁栄を極めた。そんな素晴らしい竜帝にもひとつだけ問題があった。 彼は妃を迎えていなかった。竜人である竜帝には必ず魂の伴侶である番が存在し、歴代の竜帝も全て番と妻として迎えていた。 長命である竜人であるがゆえにそこまで問題視されてはいなかったが、それでも500年もの長い間、竜帝の番が見つからないのは帝国でも異例な事態だった。 その原因を探るために、数多手を尽くしてきたが、番の行方はようとしてしれなかった。 ある日、ひとりの男が竜帝の元を訪れた。彼は目深にローブを被り、自らを『不死の魔術師』と名乗るとひとつの予言を竜帝に与えた。 『貴方の番は、この1000年不幸な運命に翻弄され続けている。それは全て邪悪なものがその魂を虐げて真実を覆い隠しているからだ。番を見つけたければ、今まで目を背けていた者達を探るべきだ。暗い闇の底で貴方の番は今も苦しみ続けているだろう』 それから、ほどなくして竜帝は偶然にも番を見つけることができたが、番はその愚かな行いにより、自身の国を帝国の属国に堕とす要因を作った今は廃嫡されて幽閉されて心を壊してしまった元王太子だった。 何故、彼は愚かなことをしたのか、何故、彼は壊れてしまったのか。 ただ、ひたすらに母国の言葉で『ヴェリテ(真実)』と呟き続ける番を腕に抱きしめて、竜帝はその謎を解き明かすことを誓う。それが恐ろしい陰謀へつながるとことを知らぬままに……。 ※話の性質上、残酷な描写がございます。また、唐突にシリアスとギャグが混ざります。作者が基本的にギャグ脳なのでご留意ください。ざまぁ主体ではありませんが、物語の性質上、ざまぁ描写があります。また、NLの描写(性行為などはありませんが、元王太子は元々女性が好きです)が苦手という方はご注意ください。CPは固定で割と早めに性的なシーンは出す予定です、その要素がある回は『※』が付きます。 5/25 追記 5万文字予定が気づいたらもうすぐ10万字に……ということで短編⇒長編に変更しました。

強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。 生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。 生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て… そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。 死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。 まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて… それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか? 魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。 「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」 執着溺愛騎士達からは逃げられない。 性描写ページには※があります。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

処理中です...