上 下
1 / 23

1

しおりを挟む


1


ミリアリア国。

遠い昔には、領土を巡って争いはあったものの、今は平和な国となっている。

この国の王も、賢王として君臨し、それを支える王弟もまた、素晴らしいと、評判だ
公務も的確に対応し、剣の腕も騎士団の団長と互角だ。
性格も、穏やかだが、厳しい部分も持ち合わせている。
25歳だが、まだ独身が故、縁談がひっきりなしだ。
国交も安定しているので、他国の姫を娶らなくてもいいので、国内の貴族女性からの求婚は後をたたない。

王弟殿下。
ラインハルト・ミリアリア

そのラインハルトが大事にしている子がいる。
ナーヴァス公爵の次男。
ルーカス・ナーヴァス。
産まれた時から溺愛している。


ミリアリア国の王弟と、ナーヴァス公爵家は、親戚にあたる。

ラインハルトの祖母が、ナーヴァス公爵家の現在の当主の祖母と、姉妹なのだ。
だから、ルーカスとは一応血の繋がりある

ルーカスの兄のマリウスとは、同い年で親友でもある。
幼い頃から一緒に遊び学び、お互い切磋琢磨しながら育った。
10歳と、歳の離れた弟をマリウスも大変可愛がった。
産まれたばかりのルーカスを見たラインハルトは、あまりの可愛さにメロメロになり毎日ルーカスに会いに公爵家に行った。

ルーカスは、産まれた時から、少し体が弱く、よく熱を出し、ベッドから出れない日が続く事が多かった。
そんな時、ラインハルトはルーカスが退屈しないように、絵本を読んであげたり、色々な遊びを教えてあげたりと、甲斐甲斐しく世話をした。
体調の良い日には、庭を散歩したり馬を見たり乗せたりと、ルーカスが笑顔になるようにと、心を砕いたのだった。

ラインハルトだけではなく、兄のマリウスも一緒にルーカスを可愛がった。

そんな2人に育てられたルーカスは、優しい心を持ったまま成長した。


公爵家を継ぐ嫡男のマリウスを支えていけるように、ルーカスは勉学を頑張るが、やはり体が弱く剣を習うのは、皆が反対したのだ。
少し無理をすると、必ず体調を崩してしまうので、残念に思いながら、ならば、僕に出来る事は何があるのか、と、毎日考える日々だ。

そんな、ルーカスをラインハルトは、優しく見守っている。


15歳になったルーカスに、ラインハルトは自分の側近として、やってみないか?と
話をされて、ルーカスは少し躊躇ったものの、喜んで二つ返事で受けた。


ラインハルトは、自分の執務室にルーカスがいるのが、嬉しくて仕方がない。


朝、自分の執務室に入ると、

「おはようございます。殿下。」

と、ルーカスが笑顔で挨拶する。

「おはよう。ルー。2人の時は、ライと、呼んでね。」
「え、で、でも・・・」
困った顔も可愛いな。なんて思いながら、
「大丈夫。2人だけの時だからね。」

「う、うん。わかった、ライ。」
俺は、笑顔でルーカスの頭を撫でる。
・・・可愛いな・・・本当に・・・

ルーカスは、本当に可愛い。
亜麻色の髪色に柔らかい髪質で凄く触り心地が良い。
いつまで触っていたいくらい気持ちいい。
目も、大きく少し垂れ目がいい。
なんと言っても、綺麗な目の色。
スカイブルーの澄み切った色。
吸い込まれそうだ。
兄のマリウスは、新緑の色で兄弟でも違うもんだなと思う。
顔は何となく似ているが、マリウスは父親に似て、がっしりとした体付きだ。
ルーカスは、華奢で儚げな感じだ。
守ってやらなければと、思わずにはいられない。

性格も優しく、頭がいい。
仕事振りを見ても、的確に対応している。

俺の執務室にいる人間は、限られた人しかいない。
まずは、俺。
そしてルーカス。
以前から、俺の側近をしていた、ライアン
このライアンが、
「私1人では、この書類を捌けません!誰か、もう1人欲しいです!!」
と、以前からうるさかったので、ルーカスを採用したのだ。

基本3人で、扉の向こうには文官が複数人いる。
この執務室には、3つの扉がある。
1つは、文官達が居る部屋。
もう1つは、廊下に続く部屋。
ここには、護衛の騎士が2人いる。
最後の扉は、俺の仮眠室。
まぁ、プライベートな場所だ。
ここには、鍵をかけれるようになっている。
が、そもそも使う事がない。
随分と昔には、使われていたんだろうがな
俺の代になってからは、使う事はない。
女を連れ込む事など、ないからな。

だが、ルーカスの体調が悪くなる事があるかもしれないので、こまめに掃除をしておくようにと、指示はしてある。

とにかく、俺は、ルーカスが可愛くて仕方がないのだ。
産まれた時から面倒を見ているのもあるが何故か、ルーカスが側に居ないと、落ち着かない。
庇護欲。
なのだろうか?
成長するに連れ、その気持ちだけではないと、最近思うのだ。
誰かに、ルーカスを取られたら?
考えただけで、気が遠くなりそうだ。
胸が締め付けられて苦しくなる。
まだ、この気持ちは誰にも知られてはいけない。と、日々悩んでいるのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

召喚された少年は公爵様に愛される

さみ
BL
突然、魔導士により召喚された、ごく普通の大学生の乃亜(ノア)は何の能力も持っていないと言われ異世界の地で捨てられる。危険な森を彷徨いたどり着いた先は薔薇やガーベラが咲き誇る美しい庭だった。思わずうっとりしているとこっそりとパーティーを抜け出してきたライアンと出会い.....

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ヴェリテ〜賢竜帝様の番は過ちを犯し廃嫡されて幽閉されている元王太子で壊れていました

ひよこ麺
BL
賢王と慕われる竜帝がいた。彼が統治してからの500年の長きに渡りポラリス帝国は繁栄を極めた。そんな素晴らしい竜帝にもひとつだけ問題があった。 彼は妃を迎えていなかった。竜人である竜帝には必ず魂の伴侶である番が存在し、歴代の竜帝も全て番と妻として迎えていた。 長命である竜人であるがゆえにそこまで問題視されてはいなかったが、それでも500年もの長い間、竜帝の番が見つからないのは帝国でも異例な事態だった。 その原因を探るために、数多手を尽くしてきたが、番の行方はようとしてしれなかった。 ある日、ひとりの男が竜帝の元を訪れた。彼は目深にローブを被り、自らを『不死の魔術師』と名乗るとひとつの予言を竜帝に与えた。 『貴方の番は、この1000年不幸な運命に翻弄され続けている。それは全て邪悪なものがその魂を虐げて真実を覆い隠しているからだ。番を見つけたければ、今まで目を背けていた者達を探るべきだ。暗い闇の底で貴方の番は今も苦しみ続けているだろう』 それから、ほどなくして竜帝は偶然にも番を見つけることができたが、番はその愚かな行いにより、自身の国を帝国の属国に堕とす要因を作った今は廃嫡されて幽閉されて心を壊してしまった元王太子だった。 何故、彼は愚かなことをしたのか、何故、彼は壊れてしまったのか。 ただ、ひたすらに母国の言葉で『ヴェリテ(真実)』と呟き続ける番を腕に抱きしめて、竜帝はその謎を解き明かすことを誓う。それが恐ろしい陰謀へつながるとことを知らぬままに……。 ※話の性質上、残酷な描写がございます。また、唐突にシリアスとギャグが混ざります。作者が基本的にギャグ脳なのでご留意ください。ざまぁ主体ではありませんが、物語の性質上、ざまぁ描写があります。また、NLの描写(性行為などはありませんが、元王太子は元々女性が好きです)が苦手という方はご注意ください。CPは固定で割と早めに性的なシーンは出す予定です、その要素がある回は『※』が付きます。 5/25 追記 5万文字予定が気づいたらもうすぐ10万字に……ということで短編⇒長編に変更しました。

強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。 生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。 生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て… そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。 死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。 まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて… それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか? 魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。 「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」 執着溺愛騎士達からは逃げられない。 性描写ページには※があります。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

処理中です...