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     ジークバルト

 ハルが体調が悪くて、ずっとベッドの中にいる。

元々、身体は丈夫ではないみたいで、心配ないから、寝てれば治るからと、ハルが言ってるが、なかなか良くならない。

心配で心配でオロオロしてしまう。
仕事の方も、落ち着いたので、ここの所は半日仕事にしている。
だが、ハルが心配で、ずっと側にいる。
屋敷の者も、皆ハルを心配して滋養のある食べ物を作ったり、気分が良くなるように
花を飾ったりと、甲斐甲斐しく世話をしている。

ずっと忙しくしていて、やっと落ち着けると、思った途端に疲れが出たのだろう。
辛そうにしてるハルが可哀想で、変われるなら変わってやりたい。
俺に構うのも億劫みたいだが、ハルの心の中では、ごめんね、の感情が伝わるから気にしないで、とハルの頭を撫でる。

セバスから、モーリスを呼んだらどうだと言われて、そうだな。診てもらう為に、モーリスを呼んだら、
「サーヴァント公爵様、お久しぶりですねお元気そうで何より。今日はハル君か?」
「お久しぶりです。その節はお世話になりありがとうございました。今日は、ハルの具合が良くならないので、診て頂きたい」
「かしこまりました。それでは、失礼して診せて頂きますね。あ、それから、ジークは、ここで待機。わかった?」
「えっ?何で?」
「色々聞きたい事もあるし、ジークが居たらハル君も言い辛い事もあるでしょ?」
「そ、そんな事は、、、ゴホッん、ん、わかった。よろしく頼む。」
「了解!」

俺達の部屋へ入って行くモーリスを見てると、胸がムカムカするが、しょうがない、ハルの為に我慢する。

しばらく待って、モーリスが部屋から出て来たので、
「ハルは?」
「詳しい話は、ハル君から聞いて。それでは、お大事に。」
笑顔で、去っていくモーリスを見て、ひとまず安心する。
ハルから、聞けと言うなら悪い病気ではないんだろう。
急いでハルのいる部屋へ入る。



「ハル、大丈夫か?」
ベッドの上で座り、俺を見てるハルに声をかけて、ハルの横に座る。

「ジーク、大丈夫だよ。ごめんね?心配かけちゃって。。。」
俺は、素早くハルを腕の中に抱きしめる。
「ハル。。。モーリスはなんて?」
ハルは、にっこり笑顔で、俺の手を取りその手を、ハルのお腹に持っていく。

「ハル?」
「ジーク。僕のここにね、僕とジークの赤ちゃんがいるんだよ。」

は?赤ちゃん。。。。
俺と、ハルの?
そう頭で理解出来た瞬間、俺の目から涙がポロポロ溢れた。

「ジーク?嬉しい。」
「うん、うん、ありがとうハル。。。」

俺は、ハルを優しく抱きしめ、ハルのお腹をゆっくり撫でる。

「ここに、俺とハルの子供がいるんだな。これ以上嬉しい事はないな。うぅぅ、、本当に本当に嬉しい!ハル、ありがとう!」

泣きながら、ハルを抱きしめ、何度も何度もハルに、ありがとうと、愛してると囁く

それからは、屋敷中が歓喜し、ハルの出産や子供の部屋の準備だとか、皆、嬉しい気持ちを隠さず笑顔で駆け回っている。
今まで、屋敷中がこんなに明るく、幸せな空間になった事があっただろうか?

いや、ない。
以前は、屋敷の中で人が行き交う事もほとんどなく、寒々しい空間だった。

それがハルが来てからは、暖かい風が吹いているようで、明るくて、笑い声が聞こえるそんな場所となった。

俺や、その周りの人達を幸せにしてくれたハル。
何より、大切なハル。
ありがとう。

俺とハルの子供。
大事に、大切に、慈しんで育てよう。
毎日、ハルのお腹を撫でながら、幸せを噛み締める。 
   あぁ、幸せだ。。。


あれから、ハルの体調は少し良くなり、庭を散歩出来るくらいにはなった。
ピアノは、毎日弾いている。
俺は、ずっとハルの側に居たかったのに、
「ジーク、僕は大丈夫だから、お仕事頑張ってきて?」
少し膨らんできた、お腹を撫でながら、ハルが言うから、仕方なく仕事に行くが、、
どうしても気になる。

そして、俺はある決意をする。


執務室に入り、ある程度書類を片付けて、陛下の前に行き

「陛下、本日で公爵家当主として、責務を果たしたいと思いますので、騎士団、皇国軍総長。ジークバルト・サーヴァント。辞したいと思います。これからも、陛下の臣下として、支えて行けるよう邁進していきます。」
深く、礼をする。

陛下は、少しだけ考えていたが、
「ふぅー、分かった。認めよう。これまでよくやってくれた。感謝する。これからも臣下として、友として、よろしく頼む。」

「はっ、有り難きお言葉、誠に感謝申し上げます。」

レオとは、またゆっくり話をすれば良い。唯一心許せる友だからな。
ありがとう。俺の我儘を許してくれて。


まぁ、俺が居なくなったからと、政務に支障が出るかと言えば出るかも知れないが、元々、総長と言う役は、レオが作ったもんだ。それまでは、無かったんだから何とかなるだろう。
宰相は大変だろうがな。。。
ははっ!やっぱり怒られた。
だが、ハルが子を宿した時点で、ある程度は覚悟していたようだ。
宰相に
「幸せにな。」
と、声をかけられた時には、不覚にも泣きそうになったが、なんとか耐えて感謝した
騎士団やら、軍の方にも報告や、引き継ぎやら、当面は王城に来なければならないが 肩の荷が降りた気がした。

これからは、ハルの側に居てやれる。
あんな小さな身体で、俺達の子を産んでくれるんだ。
身体への負担は、そうとうのものだろう。
ハルの季節には、結婚式も予定していたがハルの体調次第で決める事にした。
ちょうどいい時期に産月になりそうで、ハルも安心したようで、毎日お腹を撫でながら、早く逢いたいね。元気で産まれて来てね。どっちだと思う?どっちに似てもジークに似てるといいな。とか、可愛い事を言うハルが可愛い。
俺は、ハル似がいい。絶対可愛い!!
今から逢うのが楽しみだ。
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