75 / 85
75
しおりを挟むジークバルト
ハルが体調が悪くて、ずっとベッドの中にいる。
元々、身体は丈夫ではないみたいで、心配ないから、寝てれば治るからと、ハルが言ってるが、なかなか良くならない。
心配で心配でオロオロしてしまう。
仕事の方も、落ち着いたので、ここの所は半日仕事にしている。
だが、ハルが心配で、ずっと側にいる。
屋敷の者も、皆ハルを心配して滋養のある食べ物を作ったり、気分が良くなるように
花を飾ったりと、甲斐甲斐しく世話をしている。
ずっと忙しくしていて、やっと落ち着けると、思った途端に疲れが出たのだろう。
辛そうにしてるハルが可哀想で、変われるなら変わってやりたい。
俺に構うのも億劫みたいだが、ハルの心の中では、ごめんね、の感情が伝わるから気にしないで、とハルの頭を撫でる。
セバスから、モーリスを呼んだらどうだと言われて、そうだな。診てもらう為に、モーリスを呼んだら、
「サーヴァント公爵様、お久しぶりですねお元気そうで何より。今日はハル君か?」
「お久しぶりです。その節はお世話になりありがとうございました。今日は、ハルの具合が良くならないので、診て頂きたい」
「かしこまりました。それでは、失礼して診せて頂きますね。あ、それから、ジークは、ここで待機。わかった?」
「えっ?何で?」
「色々聞きたい事もあるし、ジークが居たらハル君も言い辛い事もあるでしょ?」
「そ、そんな事は、、、ゴホッん、ん、わかった。よろしく頼む。」
「了解!」
俺達の部屋へ入って行くモーリスを見てると、胸がムカムカするが、しょうがない、ハルの為に我慢する。
しばらく待って、モーリスが部屋から出て来たので、
「ハルは?」
「詳しい話は、ハル君から聞いて。それでは、お大事に。」
笑顔で、去っていくモーリスを見て、ひとまず安心する。
ハルから、聞けと言うなら悪い病気ではないんだろう。
急いでハルのいる部屋へ入る。
「ハル、大丈夫か?」
ベッドの上で座り、俺を見てるハルに声をかけて、ハルの横に座る。
「ジーク、大丈夫だよ。ごめんね?心配かけちゃって。。。」
俺は、素早くハルを腕の中に抱きしめる。
「ハル。。。モーリスはなんて?」
ハルは、にっこり笑顔で、俺の手を取りその手を、ハルのお腹に持っていく。
「ハル?」
「ジーク。僕のここにね、僕とジークの赤ちゃんがいるんだよ。」
は?赤ちゃん。。。。
俺と、ハルの?
そう頭で理解出来た瞬間、俺の目から涙がポロポロ溢れた。
「ジーク?嬉しい。」
「うん、うん、ありがとうハル。。。」
俺は、ハルを優しく抱きしめ、ハルのお腹をゆっくり撫でる。
「ここに、俺とハルの子供がいるんだな。これ以上嬉しい事はないな。うぅぅ、、本当に本当に嬉しい!ハル、ありがとう!」
泣きながら、ハルを抱きしめ、何度も何度もハルに、ありがとうと、愛してると囁く
それからは、屋敷中が歓喜し、ハルの出産や子供の部屋の準備だとか、皆、嬉しい気持ちを隠さず笑顔で駆け回っている。
今まで、屋敷中がこんなに明るく、幸せな空間になった事があっただろうか?
いや、ない。
以前は、屋敷の中で人が行き交う事もほとんどなく、寒々しい空間だった。
それがハルが来てからは、暖かい風が吹いているようで、明るくて、笑い声が聞こえるそんな場所となった。
俺や、その周りの人達を幸せにしてくれたハル。
何より、大切なハル。
ありがとう。
俺とハルの子供。
大事に、大切に、慈しんで育てよう。
毎日、ハルのお腹を撫でながら、幸せを噛み締める。
あぁ、幸せだ。。。
あれから、ハルの体調は少し良くなり、庭を散歩出来るくらいにはなった。
ピアノは、毎日弾いている。
俺は、ずっとハルの側に居たかったのに、
「ジーク、僕は大丈夫だから、お仕事頑張ってきて?」
少し膨らんできた、お腹を撫でながら、ハルが言うから、仕方なく仕事に行くが、、
どうしても気になる。
そして、俺はある決意をする。
執務室に入り、ある程度書類を片付けて、陛下の前に行き
「陛下、本日で公爵家当主として、責務を果たしたいと思いますので、騎士団、皇国軍総長。ジークバルト・サーヴァント。辞したいと思います。これからも、陛下の臣下として、支えて行けるよう邁進していきます。」
深く、礼をする。
陛下は、少しだけ考えていたが、
「ふぅー、分かった。認めよう。これまでよくやってくれた。感謝する。これからも臣下として、友として、よろしく頼む。」
「はっ、有り難きお言葉、誠に感謝申し上げます。」
レオとは、またゆっくり話をすれば良い。唯一心許せる友だからな。
ありがとう。俺の我儘を許してくれて。
まぁ、俺が居なくなったからと、政務に支障が出るかと言えば出るかも知れないが、元々、総長と言う役は、レオが作ったもんだ。それまでは、無かったんだから何とかなるだろう。
宰相は大変だろうがな。。。
ははっ!やっぱり怒られた。
だが、ハルが子を宿した時点で、ある程度は覚悟していたようだ。
宰相に
「幸せにな。」
と、声をかけられた時には、不覚にも泣きそうになったが、なんとか耐えて感謝した
騎士団やら、軍の方にも報告や、引き継ぎやら、当面は王城に来なければならないが 肩の荷が降りた気がした。
これからは、ハルの側に居てやれる。
あんな小さな身体で、俺達の子を産んでくれるんだ。
身体への負担は、そうとうのものだろう。
ハルの季節には、結婚式も予定していたがハルの体調次第で決める事にした。
ちょうどいい時期に産月になりそうで、ハルも安心したようで、毎日お腹を撫でながら、早く逢いたいね。元気で産まれて来てね。どっちだと思う?どっちに似てもジークに似てるといいな。とか、可愛い事を言うハルが可愛い。
俺は、ハル似がいい。絶対可愛い!!
今から逢うのが楽しみだ。
77
お気に入りに追加
3,366
あなたにおすすめの小説
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
BLゲームの脇役に転生した筈なのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。
その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!?
脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!?
なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!?
彼の運命や如何に。
脇役くんの総受け作品になっております。
地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’
随時更新中。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる