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     ジークバルト

セバスに怒られた。
そして今、俺は猛烈に反省してます。

ハルが可愛過ぎて、毎日、毎日求めてしまった。
朝起きれなくなる事がわかっていても、愛したくてたまらない。
ハルの体力が無い事もわかっていると言うのに。。。
・・・気持ちいいんだ・・・
もうもう、本当に!!
いや、俺が悪いのはわかってる。
わかってるんだが、、、!!
ハルが可愛いのが、いけない。
いやいやいや、ハルは悪くないんだ。
はぁぁ、ハルごめん。
ちゃんと、自重する。

で、もって仕事がっ!
クソ忙しい!!!
レオの婚儀の為に、各国の要人の警備の采配や、パレードが行われる街道の状況を見たり、なんやかんだ俺に言ってくる。
おいおい、勘弁してくれ!
ハルとゆっくり出来ないのが、勘弁ならんぞ!
遅い時間に帰っても、ちゃんとハルは待ってくれる。
可愛いハルの顔を見るだけで、疲れなど一瞬で吹き飛ぶ。
が、この腕の中にいるハルに、無理な事はさせたくない。
だから、抱きしめる事しか出来ない俺を誰か褒めて欲しいっ!
はぁ、あと、少し頑張るか。。。


そんな日々を過ごしている、ある日の事。 

仕事をしている俺の元に、屋敷から連絡が来た。
[休憩の時に屋敷に、戻って来てね。ハル]

ハルからの手紙に浮かれてしまった。
何か、あったとかそう言う事でもなさそうなので、休憩まで待たずに屋敷に帰ろうと思ったが、気になって気になって、すぐに帰った。
まぁ、後から宰相にこっぴどく怒られた。
が、ハルの話をすると、機嫌良くなったがな。


屋敷に戻ると、トーマスが
「お?ジーク、早かったな!ハル様がまたとんでもないもん作ったぞ!今、厨房にいるから、行ってみたら?」
何だと?ハルは何を作ったんだ?
とりあえず、厨房に向かう途中で、使用人がいない事に気付く。
厨房に近づくと、ざわついている。
しかも、いい匂いがする。

厨房に入り、ハルを探す。
いた!
料理長と話をしている。
周りには、使用人が多くいる。


「ハル」
俺を見て、笑顔で
「早かったね。もう休憩なの?」
「いや、気になって戻って来た。」
「うーん、ごめんね?たいした事じゃあなかったんだけど、ジークに1番に食べさせたかった、だけなんだ。これ、食べてみてくれる?」
ハルは、その食べ物を俺の前に差し出す。

「これは?」
「んーえっとね、パンケーキ!」
「パンケーキ?」
「そう!」
ハルは、嬉しそうに笑顔で俺に、その食べ物の名前を教えてくれた。。。が?
なんだ?これ?
パンを丸くしたような?
二枚重ねてあり、上にはジャムなる物が掛けてある。
お菓子か?
そっとナイフで切ると、ビックリするくらい、柔らかい。
ふわふわしているパンをゆっくり、口の中に入れる。

~~~っ!!
口の中で溶けて無くなってしまった。
ふわふわで少しだけ甘くて、あぁぁ口の中が幸せだ!

ハッ!
これ、ハルが作ったのか?

「これ、ハルが作ったのか?」
「うん!あのね、こちらのパンって硬いよね?僕のいた国には、柔らかいパンもあってね。そんな柔らかいパンが食べたかったんだけど、パンの作り方がよく分からないから、これ。作ったの。どう?美味しかったかな?」
「あぁ、もの凄く美味しい。こんなの、初めて食べた。凄いなハルは。」
そんな事ないよーなんて言うと、セバスがやってきた。

「ハル様。他の者にも、食べさせてもよろしいでしょうか?」

ん?まだ皆食べてなかったのか?
俺が、首を傾げ不思議そうな顔をしていたんだろう、ハルが、
「ふふっ、すぐに皆に食べてもらおうと思ったんだけど、やっぱり、ジークに1番に食べてもらいたかったからね、皆に、少しだけ我慢してもらったんだよ?」

~~っくぅぅ、ハル!嬉しい!
俺は、すぐさまハルを抱きしめて
「ハル、ありがとう。嬉しい!ハルがそう思ってくれた事が本当に嬉しいよ。」
何度もハルの顔にキスをする。


「あっ!ジーク。お仕事抜け出して来たでしょ?」
ヤバい、、、バレている。
「もう!また、宰相さんに怒られるよ!そうだ!ジーク、お詫びに宰相さんに、このパンケーキ持って行ってあげて?ちゃんとごめんなさい、すること!わかった?」
「う、うん。わかった。」
ハルは、料理長と一緒にパンケーキなる物を作り、俺に持たせる。
「お仕事頑張ってね!」
と、ハルに見送られて、執務室に戻る。


執務室の扉を開けた途端に宰相の怒鳴る声

「おい!ジーク!お前、いい加減にしろって、何度言ったらわかるんだ!!その書類の山、終わるまで帰れないぞ!」
「あぁ、わかっている。すまない。お詫びに、ハルからだ。食べてくれ。」
俺は、ハルに渡された物を宰相に渡す。

「ん?ハル殿から?なんだこれ?」
「ハルが作った。パンケーキと、言う物らしい。美味いぞ。」
「はぁ、それでは遠慮なく。」

まぁ、俺と同じ反応だな。
宰相が半分食べた所に、レオが執務室に入って来た。

「おっ?宰相、何食べてる?」
「あ!陛下。申し訳ない。ジークに頂いたもので、、、」
「は?ジークに?」
レオは、宰相から俺に視線を向けて、首を傾げる。
「あぁ、まぁな、ハルが作ったんだ。」
「なんだと!宰相!俺にも食べさせろ!」
宰相から、皿を奪ったレオは、躊躇いなく口に入れた。
「う、美味いぞ!なんだこれ?こんな食べ物見た事ないし、聞いた事もないぞ!」
「まぁ、そうだろうな。ハルのいた国の物だからな。」
「はぁ、そうか。凄いなハルは。これ、ヴィーに言ったら、駄目だよなぁ?絶対ハルの所に行くよな?あぁぁ、なぁ、ジークこれ、婚儀が終わるまで内緒にしといてくれないか?」
「無理!」
「な、なんで!」
「多分もう知ってると思う。」
「ええーっ!あっ!そう、そうだよな。」
「あぁ、そうだ。」
屋敷の中での事は、全部ヴィーに筒抜けだからな。
ガックリ項垂れたレオはほっておく。
宰相は、半分レオに奪われたが、余程気に入ったのだろう。
機嫌が良くなり、ホッとする俺だった。

ハル、ありがとう。
宰相に説教されずに済んだよ。
さすがハルだ。
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