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しおりを挟むハル
この前、この領地の街に行ってお店を回って、僕はある事に気づいた。
お菓子がない。
果物、小麦粉、卵はあるのに。
何故?
だから、お母様に厨房を使ってもいいか聞いたんだ。
孤児院の子供達に、甘いお菓子を食べさせてあげたかったんだ。
孤児院の子供達と、遊んでいる時に話を聞いたんだ。
ここには、お菓子のお店ってないの?って
お菓子って?
えっ、甘いお菓子だけど、えっ?おやつに何食べるの?
おやつって?
3時とかに食べない?
んー?干した芋とか、食べる事あるけどぉ?甘くて美味しいよ?
そう。
やっぱり、お菓子とかないんだね。
その時、僕は昔よくお母さんと一緒に作っていた、クッキーが頭に浮かんだ。
ハル?お母さんは、料理は、ダメダメだけど、お菓子作りは得意なのよ。
そう言って、僕にお菓子を色々作って食べさせてくれた。
僕も、お母さんと一緒にお菓子を作って友達にあげたりしてたなぁ。
お母さんと一緒に作って食べるお菓子は僕を幸せにしてくれた。
お父さんも、お母さんと僕が一緒に作ったお菓子を、嬉しそうに食べて、幸せだなぁとよくいってたっけ。
だから、子供達にお菓子を作って食べさせてあげたいと、思ったんだ。
その話をすると、ジークが何か怒ってる駄目なのかな?
少し涙目になる。
「おい!ジーク!お前は!ハルが泣きそうになってるだろうが!!」
「あっ!ハル!違う!違う違う!」
僕をぎゅーと抱きしめる。
「ハル、ごめん。」
「どしたの?」
僕はジークの腕の中から顔を出す。
「うーあーちょっと、、、嫉妬した。」
「?嫉妬?何に?」
「あ、いやぁ、ハルが作った物を食べさせてやった者に。。。」
「ははっ!ジークってば!友達だよ。」
「そうなのは、わかってる。だが、ハルが作った物は、俺が先にたべたかった。」
「ふふっ、だったら、僕が作ったお菓子ジークが1番に食べて?この世界では、ジークが1番最初だよ?ね!」
「あぁ!ハルありがとう。」
そして、ジークは、笑って僕を抱きしめたんだよ。
ふふっ、ジークってば可愛いよね。
次の日、僕は厨房にお邪魔して、料理長さんに挨拶して、場所を貸してもらった。
うん、材料はある。
小麦粉、卵、砂糖。
砂糖って凄く高いんだって!
だから、少しだけ貰う。
蜂蜜でもあればいいんだけど、同じく高級品だそうです。
まっ、いっか。
その代わりに、干した果物や、ナッツ類とか入れても美味しいし。
だから、本当に、簡単に出来るクッキーにしよう。
計りもあるので、きちんと計ってボールに入れて混ぜて、生地を半分にする。
半分はシンプルなクッキー。
残りの生地は、干した果物とナッツを入れた物。
ちゃんとオーブンもあるよ。
オーブンも温めて貰う。
生地を伸ばして、えーと、型がない。
だから、ちょっと小さなコップを使って
ポンポンと、押し付けていく。
ジークや、料理長さんが、ポカンとした顔で見てて、可笑しくて笑ってしまう。
「本当はね、星の形や、動物とか、色々な型があるんだけどね、ここには無いから、シンプルにまる。ね!」
それを天板に並べ、オーブンに入れる、けど、危ないから料理長さんにお願いする
焦げないように見ててね。
あと、半分の生地に、干した果物とナッツを入れて混ぜる。
こっちは、スプーンですくって、形を整えながら並べる。
いい匂いがして、そろそろかな?
うん、いいね!
確認して、オーブンから出す。
熱いからね。ジーク。
まだ、もう少し待ってね。
て、次の天板をオーブンに入れる。
さぁ、後は、焼けるのを待つだけだね。
使った物を片付けようとすると、料理長さん他、「私達がしますから。」でも、僕は「僕もします。」と言って、一緒に片付けた。
さぁさぁ!焼けたよ!
どうかな?
まだ少し熱いのを1つ摘む。
サクッと音がして、ホロホロとして、美味しい!
はい、ジークどうぞ!
嬉しそうな顔で、クッキーを口に入れる
ジークの目が大きくなる。
「美味しい!」
それから、お父様お母様、料理長さんやら、屋敷中の人達が、ワラワラとやって来た。
えっ?皆の分ないよ?
ど、どうしよう。。。
「ハル、心配しないで。ほら、見て。」
ジークの指差す方を見ると、もう、料理長さん達が、オーブンに天板に並べた物を入れてる。
あぁ、作る所、穴が開くほど見ていたもんね。
もう、作るって、流石です。
僕はホッとして、ジークに
「明日、このクッキー、孤児院の子供達の所に持って行っていい?」
「あぁ、いいぞ。」
子供達、喜んでくれるといいなぁ。
僕は子供達の喜び姿を想像して、ワクワクした気持ちだったんだけど、この事が、大変な騒動になるなんて、その時の僕は、思ってもいなかったんだ。
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