54 / 85
54
しおりを挟むジークバルト
朝からハルのワクワク感がダダ漏れで、行く前からそんなんで、大丈夫なのかと心配になる。
出発する時間に、ハルが可愛らしさ全開でやってきた。
セシル!気合い入れすぎだ!
ハルが可愛い過ぎるだろうがぁぁぁ!
もう、行きたくない行きたくない!!
が、グッと我慢する。
ここでそんな我儘は言えない。
楽しみにしてるハルに悲しい顔はさせたくない。
なにより、両親が、、、
いやいやいや、んんっ、うん。大丈夫。
笑顔で、ハルを馬車に乗せる。
本当に、どうしてこんなに可愛いかな?
馬車の中でも、外をみては、目をキラキラさせる。
着いたら着いたで、ぴょんぴょん跳ねてる。
はしゃぎ過ぎて、疲れないように言う。
落ち着いて。ハル。
そして、落ち着きを取り戻したハルは、端から店を見て回った。
ニコニコと笑顔で、気さくに店の者や、客として来ている者に話しかけたり、聞いたりと、楽しそうだ。
皆のお土産は、何がいいかなぁ~と、口に出して言うから、店の者に、これはどうですか?こちらはどうですか?と、あちこちから声が掛かり、あたふたするハルを見て、俺は、楽しくて仕方なかった。
可愛いハル。
どうして皆さん優しいの?
ハルが優しくて、可愛いからだよ。と、内心思ってるけど、両親が領内で言って回ったんだよ。俺の番が見つかったって。
きっと両親の事だから、ハルの可愛さを言って廻ったのだろう。
店の者や街行く人達が、微笑ましく見てるし、綺麗な人、可愛い、などの声も聞こえた。
案外、黒髪黒目については、驚いてないようで、安心した。
俺は、ハルが満足できたのを確認して、ある場所へハルを連れて行く。
領内にある教会だ。
ハルは、綺麗!と、感動しながら、中に入って行く。
神父に挨拶されて、ハルも挨拶を返す。
神父に、良い方と巡り逢えて良かったですな。と言われて、俺は、少し泣きそうになった。
本当に。
ハルと巡り逢えて良かった。
ハルと共に、神に祈る。
いや、神とハルの両親に。
ありがとうございます。
神様と、ハルの両親に感謝を捧げます。
祈りが終わり、俺はハルをこの教会の反対側に連れて行く。
ハルは、どこ行くの?
さあ、どこでしょう!
教会の裏の扉を開ける。
すると、そこには、20人ほどの子供達がいた。
ハルは、大きく目を開け、すぐに笑顔になる。
ジーク、ここは?
ここはね、孤児院だよ。
両親がいない子や、親が病気で見れない子、色々と複雑な事情がある子、そんな子を預かり育てていく場所だよ。
そうハルに説明すると、知ってるよ。でもね、ここにいる子供達は、凄く表情が明るい子達だね。と、だから一緒に遊んで来ていい?と言うと、すぐに子供達に話しかけにいく。
その様子を見てると、神父が来て、
「ジーク、良かったな。」
と、声を掛ける。
この神父は、俺が生まれた時から、お世話になっているから、2人の時は、砕けた口調になる。
まぁ、子供の頃には、よく叱られたがな
「はい、本当に。これ以上の幸せはないです。」
「ははっ、そうだな。いい子だ。ただ」
「ん?ただ?」
「可愛い過ぎるだろ!」
「はっ!当たり前だ。ハルだからな!」
「いや、意味わからん。」
「ハルは、綺麗で、可愛くて、優しい子なんだ。」
「おぉおぉ、ベタ惚れだのう。あのジークがのう。良かった良かった。」
「あぁ、ありがとう。あっ、そうだ、ここにピアノあったよな?」
「ん?あぁ、あるぞ。それがどうかしたか?」
「いや、ハルに弾かせてやろうかと。」
「ほぅ、ピアノを弾くのか。そりゃ、子供達に聴かせてやらんとな。」
俺は、ハルを、神父は子供達に声を掛けて、室内に入る。
「ハル、子供達にハルのピアノ聴かせてやりたいんだが、弾いてくれるか?」
「うん!弾きたい!でも、ピアノあるの?」
「あぁ、ある。ハル、おいで。」
俺は、ハルをピアノが置いてある場所へ案内する。
ピアノを見たハルは、早速ピアノの前に行き、椅子に座る。
そこに、さっきまで遊んでいた子供達がハルの周りに集まる。
「ハルちゃん!ピアノ弾けるの?」
女の子がハルに聞く。
「うん!聴いてくれる?」
「うん!」
子供達は、ピアノの周りに座って、ハルが弾き始めるのを、笑顔で待ってる。
ハルは俺を見て、ニコリと笑い、神父には、軽く頭を下げ、子供達に向かって、笑顔で、行くね!
と、ピアノを弾き始めた。
それは、優しい優しい曲だった。
何かに、暖かく包まれるような感覚がして、知らず涙が溢れていた。
子供達を見ると、皆ボー然としていた。
中には涙が出てる子もいた。
だが、悲しい涙ではない。
感動の涙だ。
ふと、横にいる神父を見る。
お前もか!
ジジイが泣いても、美しくないぞ!
そう言えば、いつもは、倍返って来そうな言葉がなく、ただ、「凄いな」と。
ハルを見る。
少し困ったような顔で、子供達を見ていた。
1人の子が、ハルに抱きつく。
俺は、思わず走り出しそうになったが、耐えた。
ハルは、その子の頭を撫でながら、どうしたの?
子供は、ハルから離れて、手を叩く。
すると、全員が拍手する。
ハルは、途端に笑顔になって、ありがとうね。と、その子を抱きしめる。
それから、ハルは、何曲か弾いていた。
名残り惜しいが、帰る時間になって、子供達にまた、来てね!と言われて、嬉しそうに、またくるね!と、お別れをした。
ハルに楽しかったか?と、帰りの馬車の中でハルを抱きしめながら聞く。
「うん!すっごく楽しかった!ありがとうジーク。もうもう話したい事が沢山あるのに、、、疲れちゃった。ごめん、、ね」
スースーと寝息が聞こえる。
ハル、疲れたね。
ゆっくりおやすみ。
俺のハル。愛してるよ。
最愛を抱きしめて、幸せを噛み締める。
114
お気に入りに追加
3,373
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる