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        ハル

 ジークに貰った指輪が嬉しくて、何度もみては、ニヤけてしまう。

 今朝、疲れが溜まったのか、少しだるくて、微熱が出た。
 ジークが心配して、朝からオロオロしてて、大丈夫だって何度も言って、やっと仕事に行ったんだけど、ふふっ早く帰って来るんだろうな。

 今は、熱も下がりソファにゴロンと横になり、指輪を眺めて、本当にこの世界に来て良かった。皆優しく、親切にしてくれて最愛の人にも会えた。
 そう想うだけで、心が暖かくなり、泣きそうになる。
 足元でくつろいでる、ヴォルフを撫でながら、ありがとうね、僕を見つけてくれてと言うと、クゥゥンと返事してくれた。

 ふふふって笑いながら、セシルが
 「ハル様、気分はよろしい様ですね。旦那様は、心配でしょうけど。」
 「ふふっ、ジークは心配性だよね。」
 「ハル様限定ですけどね。」
 ふふっと、2人で笑い合う。
 
 「あらあら、楽しそうね?ハルちゃん、体調はどう?」
 お母様と、お父様が部屋へ入って来たから、僕はソファに座り直す。
 「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ。熱も下がりました。」
 「そう、良かったわ。今日は、ハルちゃんに、お話があるの、ね、あなた。」
 「あぁ、ハル、明日私達は、領地に帰る事にしたんだ。観覧試合も終わったしな」
 「そうなのよ、寂しいけどね。」

 「帰っちゃうの?」
 震える声で聞く。
 お母様が僕の横に座り、優しく抱きしめる。
 「ハルちゃん、泣かないで。何も、ずっと会えなくなる訳ではないわ。」
 「そうだぞ、ハル。今年の白の季節にはこちらに帰ってくるぞ。」
 「そうなの?」
 涙に濡れた顔を上げて聞く。
 お父様が、僕の頭を撫でながら、頷く。
 「ハルちゃん、白の時期には、ヴィーの結婚式があるでしょう?だから、少し早めに帰って来るわ。それまでに、ジークと領地に遊びに来たらいいわ。」
 あぁ、そうだな。2人で遊びにおいでってお父様が言う。
 「うん!」
 笑顔で頷く。
 「はぁぁ、可愛いわ!ハルちゃんこのまま連れて帰ってはダメかしら?」
 「ダメだろうな、ジークが許さんだろ」
 
 そうだね!すぐに追っかけて来そうだよねー。

 寂しいけど、必ずジークと遊びに行くから、待っててね!
 待ってるな。
 そう、お父様が言って、僕を抱きしめくれた。
 また、涙がポロリと溢れた。


 ジークがいつもより早く、帰って来た。
 帰って来てから、僕をずっと抱き込んでる。僕も、お父様とお母様が領地に帰るから、寂しくて、ジークに抱きつく。
 ジークは、その話は知ってて、何で言ってくれないの?そしたら、心の準備も出来たのに。。。
 いや、別に遠くないからな。馬車で1日ぐらいの距離だしな。
 えっ、もっと遠いのかと、思ってた。
 それなら、ちょっと寂しさが薄れた気がした。
 暖かいジークの腕の中で、うとうとと、そのまま眠りに着いた。

 朝、ジークの腕の中で目覚める。
 「ハル、おはよう。今日は大丈夫?」
 額に熱を測るように、唇をつける。
 「ん、ジークおはよう。大丈夫。」
 笑顔で答える。
 ジークも笑顔で、良かったって軽くキスして、2人で起きた。
 そして、ジークを見送る。
 お父様とお母様も一緒に。
 やっぱり、別れは寂しくて、涙が出てしまう。
 ジークに抱きしめられて、直ぐに会えるから、泣かないで。
 だから、笑顔でお別れする。
 馬車が見えなくなるまで、手を振る。
 やっぱり寂しいな。
 あっ!僕の仕事の事、相談すればよかったな。
 ジークも、仕事に行ったから、セバスさんに、相談してみよう!


 きっと、ジークは反対するから、僕が相談した事は、内緒ね!って約束して、セバスさんに聞いてみる。
 セバスさんは、ちゃんと話を聞いてくれた。
 「そうですね、、、ハル様のお気持ちはわかりますが、難しいですね。ですが、一つだけ、可能性がなくもないですね。」
 「えっ本当に?何?何?」
 「ハル様は、ピアノが素晴らしいですよね。こちらの世界にも、楽器を使用して生計をしている人もいらっしゃいます。もしかすればピアノで報酬を得る事が出来るかも知れませんね。」
  「そう、そうだよね。僕のお母さんもそうしてたんだった。」
 でも、それって誰に相談したらいいのかな?
 セバスさんが、ヴィヴィアン様に相談してみたらいかがですか?
 そう言ってくれたので、今度行ったら相談してみよう。

 それから、ジークと王城に行って、ヴィーちゃんに、あれこれと話をして、試しにある事をすると、決めたのだ。
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