43 / 85
43
しおりを挟むハル
ジークに貰った指輪が嬉しくて、何度もみては、ニヤけてしまう。
今朝、疲れが溜まったのか、少しだるくて、微熱が出た。
ジークが心配して、朝からオロオロしてて、大丈夫だって何度も言って、やっと仕事に行ったんだけど、ふふっ早く帰って来るんだろうな。
今は、熱も下がりソファにゴロンと横になり、指輪を眺めて、本当にこの世界に来て良かった。皆優しく、親切にしてくれて最愛の人にも会えた。
そう想うだけで、心が暖かくなり、泣きそうになる。
足元でくつろいでる、ヴォルフを撫でながら、ありがとうね、僕を見つけてくれてと言うと、クゥゥンと返事してくれた。
ふふふって笑いながら、セシルが
「ハル様、気分はよろしい様ですね。旦那様は、心配でしょうけど。」
「ふふっ、ジークは心配性だよね。」
「ハル様限定ですけどね。」
ふふっと、2人で笑い合う。
「あらあら、楽しそうね?ハルちゃん、体調はどう?」
お母様と、お父様が部屋へ入って来たから、僕はソファに座り直す。
「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ。熱も下がりました。」
「そう、良かったわ。今日は、ハルちゃんに、お話があるの、ね、あなた。」
「あぁ、ハル、明日私達は、領地に帰る事にしたんだ。観覧試合も終わったしな」
「そうなのよ、寂しいけどね。」
「帰っちゃうの?」
震える声で聞く。
お母様が僕の横に座り、優しく抱きしめる。
「ハルちゃん、泣かないで。何も、ずっと会えなくなる訳ではないわ。」
「そうだぞ、ハル。今年の白の季節にはこちらに帰ってくるぞ。」
「そうなの?」
涙に濡れた顔を上げて聞く。
お父様が、僕の頭を撫でながら、頷く。
「ハルちゃん、白の時期には、ヴィーの結婚式があるでしょう?だから、少し早めに帰って来るわ。それまでに、ジークと領地に遊びに来たらいいわ。」
あぁ、そうだな。2人で遊びにおいでってお父様が言う。
「うん!」
笑顔で頷く。
「はぁぁ、可愛いわ!ハルちゃんこのまま連れて帰ってはダメかしら?」
「ダメだろうな、ジークが許さんだろ」
そうだね!すぐに追っかけて来そうだよねー。
寂しいけど、必ずジークと遊びに行くから、待っててね!
待ってるな。
そう、お父様が言って、僕を抱きしめくれた。
また、涙がポロリと溢れた。
ジークがいつもより早く、帰って来た。
帰って来てから、僕をずっと抱き込んでる。僕も、お父様とお母様が領地に帰るから、寂しくて、ジークに抱きつく。
ジークは、その話は知ってて、何で言ってくれないの?そしたら、心の準備も出来たのに。。。
いや、別に遠くないからな。馬車で1日ぐらいの距離だしな。
えっ、もっと遠いのかと、思ってた。
それなら、ちょっと寂しさが薄れた気がした。
暖かいジークの腕の中で、うとうとと、そのまま眠りに着いた。
朝、ジークの腕の中で目覚める。
「ハル、おはよう。今日は大丈夫?」
額に熱を測るように、唇をつける。
「ん、ジークおはよう。大丈夫。」
笑顔で答える。
ジークも笑顔で、良かったって軽くキスして、2人で起きた。
そして、ジークを見送る。
お父様とお母様も一緒に。
やっぱり、別れは寂しくて、涙が出てしまう。
ジークに抱きしめられて、直ぐに会えるから、泣かないで。
だから、笑顔でお別れする。
馬車が見えなくなるまで、手を振る。
やっぱり寂しいな。
あっ!僕の仕事の事、相談すればよかったな。
ジークも、仕事に行ったから、セバスさんに、相談してみよう!
きっと、ジークは反対するから、僕が相談した事は、内緒ね!って約束して、セバスさんに聞いてみる。
セバスさんは、ちゃんと話を聞いてくれた。
「そうですね、、、ハル様のお気持ちはわかりますが、難しいですね。ですが、一つだけ、可能性がなくもないですね。」
「えっ本当に?何?何?」
「ハル様は、ピアノが素晴らしいですよね。こちらの世界にも、楽器を使用して生計をしている人もいらっしゃいます。もしかすればピアノで報酬を得る事が出来るかも知れませんね。」
「そう、そうだよね。僕のお母さんもそうしてたんだった。」
でも、それって誰に相談したらいいのかな?
セバスさんが、ヴィヴィアン様に相談してみたらいかがですか?
そう言ってくれたので、今度行ったら相談してみよう。
それから、ジークと王城に行って、ヴィーちゃんに、あれこれと話をして、試しにある事をすると、決めたのだ。
93
お気に入りに追加
3,371
あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる